光免疫療法は、がん細胞に特異的に結合する抗体と光感受性物質を組み合わせた新しい治療法として注目されています。治療費は1回あたり約600~700万円と高額ですが、保険適用の有無によって患者の実質負担額は大きく異なります。特殊な薬剤であるセツキシマブ サロタロカンナトリウム(アキャルックス)の薬剤費だけで約400万円かかるため、治療全体の費用が高額になる要因となっています。doctor-sato+2
光免疫療法は2020年9月に厚生労働省により承認され、2021年1月から保険適用が開始されました。現時点で保険の対象となるのは「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん」のみであり、口腔がん、咽頭がん、喉頭がんなどが含まれます。頭頸部がんのみが保険適用となった理由は、米国や日本での臨床試験において頭頸部がんに対する有効性が確認されたためです。国立がん研究センターの報告によると、国内では治療を受けた3例のうち2例が、海外では30例のうち13例が腫瘍の縮小に成功したと診断されています。j-immunother+2
保険適用を受けるためには、放射線療法や化学療法などの標準治療を既に受けており、それらが効果不十分であった場合に限られます。また、頸動脈などの大血管に浸潤がある場合や、手術可能な状態の場合は適応外となります。さらに、治療は認定された医療機関でのみ実施可能であり、2025年5月時点で全国47都道府県の約180か所で提供されています。kyoto.hosp+3
保険適用の光免疫療法では、高額療養費制度を利用することで患者の自己負担額を大幅に軽減できます。1回の治療にかかる医療費は約600万円程度ですが、高額療養費制度を使うことで患者の負担額は月額10万円程度と見込まれています。70歳未満の方の場合、収入額によって異なりますが、高額療養費制度を利用したときの自己負担金の目安は3万5千円~30万円程度になります。hosp.juntendo+3
具体的な負担額は所得区分によって以下のように異なります。最も自己負担額が少ない区分(住民税非課税世帯)では約3万5千円、標準的な所得の方で約8万円~10万円、高所得者でも約25万円~30万円が上限となります。この制度により、本来であれば数百万円の治療費が数万円~数十万円の負担で受けられるようになっています。sbisonpo+2
頭頸部がん以外のがん種や、保険適用の条件を満たさない症例に対しては、自由診療として光免疫療法を提供している医療機関があります。自由診療では全額自己負担となるため、費用は大幅に高額になります。gan-medical-chiryou+3
自由診療の光免疫療法では、使用する薬剤や治療プロトコルが施設によって異なります。ICGリポソームやタラポルフィンリポソームなど、保険適用薬とは異なる光感受性物質が使用される場合があります。費用は1回あたり22万円~66万円、1クール(5~6回)で137万円~440万円と施設によって大きな幅があります。例えば、ある医療機関ではICGリポソームを使用した光免疫療法が1回27万5千円、5回で137万5千円で提供されています。別の施設ではタラポルフィンリポソームを用いた治療が1回44万円、4回で132万円となっています。chuoclinic+5
自由診療は健康保険が適用されないため、これらの費用が全額自己負担となりますが、医療費控除の対象にはなります。tokyo.aer-clinic+1
光免疫療法は、治療効果が不十分な場合、4週間以上の間隔を空けて最大4回まで受けることが可能です。複数回の治療で治療成績が向上する場合があり、回数を重ねることで腫瘍の縮小効果が得られることが報告されています。micro-ctc.cellcloud+1
治療の流れとしては、まず光感受性物質を結合させた薬剤を2時間以上かけて点滴投与し、20~28時間後にレーザー光を照射します。照射後は約1週間、皮膚・眼に強い光や直射日光が当たらないよう注意が必要で、術後4週間は光曝露対策が必要になります。入院期間は通常1週間程度で、術後7日目くらいで光過敏試験を行い、問題ないことが確認されれば退院となります。jstage.jst+3
現在、東京医科大学、愛知県がんセンター、神戸大学、広島大学、九州医療センターの5施設において5回以上治療における安全性確認試験が開始されており、将来的には5回以上の照射が可能になる可能性があります。これにより、1回で完全奏効を目指すのではなく、徐々に治療効果を積み上げるアプローチが可能になると期待されています。jstage.jst
保険適用の光免疫療法(頭頸部アルミノックス治療)を受けられる医療機関は、適正使用による安全性確保を目的とした施設要件を満たす認定施設に限られます。全国で180か所以上の医療機関が認定されており、大学病院やがんセンターなど主要な医療施設で提供されています。ubie+2
治療を希望する際は、病院に事前に連絡をして治療が受けられることを確認することが推奨されています。楽天メディカル社のウェブサイトでは「頭頸部アルミノックス治療が受けられる医療機関」の一覧が公開されており、情報は随時更新されています。主治医から認定施設への紹介状を得ることで、スムーズに専門外来を受診できます。kyoto.hosp+1
自由診療の光免疫療法は、認定施設以外のクリニックや医院などでも提供されていますが、使用する薬剤や治療プロトコル、費用が施設によって大きく異なるため、事前に十分な情報収集と医師との相談が重要です。tokyo-iimc+3
国立がん研究センター「がん光免疫療法全般に関する Q&A」
保険適用や治療の詳細について、国立がん研究センターが公開している光免疫療法に関する包括的な情報資料です。適応基準や治療成績などの詳細が記載されています。
日本レーザー医学会誌「光免疫治療の適応と実際」
医療従事者向けに、光免疫療法の適応判断、治療方法、有害事象などについて詳細に解説した学術論文です。実臨床における判断基準の参考になります。