尿蛋白プラスマイナス(±)は、陽性になるほどではないが尿の中に蛋白質がわずかに含まれている状態を示します。正常な状態では尿中に蛋白質は排出されないため、マイナス(-)が正常値となりますが、±は「弱陽性」として分類されます。stmc+2
妊娠中は腎臓への血液循環量が多くなり、腎臓の処理能力に負担がかかるため、一時的に尿蛋白がプラスマイナスになることはよくあります。特に妊娠後期に多くなる傾向があります。妊婦の腎臓は自分の血液だけでなく、赤ちゃんの血液もろ過しているため、ろ過する血液の量が多いと腎臓には大きな負担がかかり、機能が低下することで尿には蛋白が混じりやすくなります。stemcell+1
尿蛋白の判定基準は濃度によって以下のように分類されます。stmc
| 濃度(尿1dlあたり) | 判定 |
|---|---|
| 15mg/dl以下 | - |
| 15mg/dl以上〜30mg/dl未満 | ± |
| 30mg/dl以上〜100mg/dl未満 | +(プラス1) |
| 100mg/dl以上 | ++(プラス2) |
日本腎臓学会では、+(プラス1)以上を陽性としています。妊婦健診では、2回以上連続して+判定が出た場合に陽性となり、1度でも2+の判定が出た場合は陽性と判定されます。妊娠高血圧症候群の診断においては、24時間尿で300mg/日以上の蛋白尿が検出された場合、または随時尿でprotein/creatinine比が0.3mg/mg・Cre以上である場合を蛋白尿と診断します。kango-roo+2
尿検査は妊婦健診において毎回確認が行われる重要な検査項目です。matono-womens
妊娠中の尿蛋白の原因として、以下のものが考えられます。mamanoko+1
妊娠中期以降は、赤ちゃんが尿を排泄するようになるため、蛋白尿が出る可能性が高まります。赤ちゃんが排泄した尿は、胎盤から母体の血中に取り込まれ、母体の腎臓を通して体外に排泄される特徴があります。母体だけではなく赤ちゃんの老廃物も処理するようになると、尿蛋白が確認されやすくなります。stmc
また、風邪を引いているときや疲れがたまっているとき、運動後や立ちっぱなしの後などでは妊婦でなくてもプラスになってしまう可能性が高くなります。妊娠中は免疫力が低下して、膀胱炎などにかかりやすく、尿蛋白が陽性になることもあります。mamanoko+1
尿蛋白が継続して出現する場合、妊娠高血圧症候群の可能性に注意が必要です。妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)を発症した場合、または高血圧に蛋白尿を伴う場合に診断されます。jsog+2
高血圧と蛋白尿の両方が確認された場合は「妊娠高血圧腎症」と診断されます。診断基準としては、尿蛋白300mg/日以上、もしくは尿蛋白/クレアチニン比が0.3mg/mg CRE以上の場合、尿蛋白尿陽性となります。また、尿蛋白がでなくても、肝臓検査・腎臓の検査で異常がでたり、神経障害や血液凝固障害、胎盤機能不全がある場合にも、妊娠高血圧腎症という診断になります。doctorbook
妊娠高血圧症候群は母体・胎児に重大な影響を及ぼし得るため、早期発見が重要です。高血圧妊婦に試験紙法で蛋白尿≥1+が検出された場合、または正常血圧妊婦に試験紙法で蛋白尿1+が連続2回あるいは≥2+が検出された場合は、随時尿中の蛋白とクレアチニンを定量し蛋白/クレアチニン比を求める必要があります。honda-naika+1
1回だけプラスマイナス(±)が出た場合はそれほど心配しなくてもよい場合がほとんどですが、毎回プラスマイナスになる場合は腎機能が低下している可能性があり、場合によっては精密検査が必要になることもあります。尿検査のたびに尿蛋白プラスマイナスになってしまう場合は腎機能に何らかのトラブルが発生していることを考慮にいれて精密検査をすることもあります。tomonite+1
尿蛋白が陽性となった際、ストレスや過労などの一過性の場合は、まずは元となる原因の改善に努めるのが大切です。妊娠中は一時的に「±」や「+」が出ることも多く、その場合は時間を置いて再検査します。複数回陽性が続く場合には注意が必要です。totsuka-childbirth+2
日常生活での対策として以下が推奨されます。
塩分の多い食事は高血圧の原因になりやすいため控えめにすることが重要ですが、極端にとらないと血液循環に支障をきたすので注意が必要です。benesse
妊娠中の尿蛋白検査は、母体と胎児の健康状態を把握するための重要な検査です。1回だけの尿蛋白陽性は、病気とは限りません。一般的に、妊娠中は腎臓への血液量が多くなるため、非妊時に比べると、尿蛋白や尿糖が陽性となりやすい状態といわれています。しかし、複数回の検査で陽性が続いたり、もともと病気があったり、血圧その他の検査でも異常値がみられる場合は精密検査をする必要があります。kateinoigaku+1
妊娠高血圧症候群のリスク因子には、過去の妊娠高血圧症候群(再発率約15~20%)、家族歴、慢性高血圧、糖尿病、腎疾患、双胎以上の多胎妊娠などがあります。これらのリスク因子を持つ妊婦さんは、特に注意深い経過観察が必要です。nakagawa-iin
結果の説明をよく聞き、食生活などの指示がある場合はその内容に従うことが重要です。妊娠高血圧症候群を完全に予防する方法はありませんが、定期的な妊婦健診で母体と胎児の健康状態をチェックすること、体重管理などによってリスクを減らすことができます。phyathai+1
医療従事者向けの参考情報として、日本産科婦人科学会の「産婦人科診療ガイドライン産科編2023」では、妊婦健診での蛋白尿スクリーニングは試験紙法による尿蛋白半定量で行い、2回以上1+以上を認めた場合と2+以上を認めた場合をスクリーニング陽性とし、24時間尿中蛋白定量300mg以上あるいは尿中蛋白クレアチニン比(P/Cr)0.3以上をもって蛋白尿と診断するとされています。CKDでは尿中P/Cr0.15以上を軽度蛋白尿、0.5以上を高度蛋白尿とする基準があります。jaog
日本産科婦人科学会:妊娠中の腎機能と蛋白尿の評価に関する詳細な診断基準
妊娠高血圧症候群の診断基準と管理方法について(看護roo!)