造血幹細胞移植の費用と高額療養費制度

造血幹細胞移植には移植前後で数百万円の医療費がかかりますが、高額療養費制度により自己負担は軽減されます。移植の種類や合併症によって費用は異なり、骨髄バンクを利用する場合は別途コーディネート費用が必要となりますが、どのような支援制度が活用できるのでしょうか?

造血幹細胞移植の費用

造血幹細胞移植にかかる主な費用
💰
移植時の医療費

移植を受けた月は400万~600万円、その後数ヵ月間は月200万~400万円程度の医療費が発生

📋
保険適用範囲

造血幹細胞移植は健康保険の適用対象で、自己負担は2~3割(年齢・所得による)

🏥
入院期間

移植前後の入院は平均36~39日間で、その間の医療費に加え食事代や差額ベッド代が必要

造血幹細胞移植の医療費内訳

 

 

造血幹細胞移植は健康保険の適用対象となる治療ですが、その費用は患者の状態や移植の種類によって大きく変動します。移植を受けた月の医療費は10割負担で400万~600万円に達し、移植前後の1ヶ月間は平均400万~500万円の保険請求となります。その後の数ヵ月間も、合併症の状況により月に200万~400万円程度の医療費がかかることがあります。meiji-seika-pharma+1
移植前後の100日間における中央値では、入院日数は36日、医療費は約10万2,574ドル(2004年の米国データ)と報告されており、日本国内でも同様に高額な医療費が発生します。移植後1年間の早期費用は、移植後100日以内の費用が全体の84%を占めるとされています。pmc.ncbi.nlm.nih
造血幹細胞移植の診療報酬点数は、同種骨髄移植で66,450点(664,500円)、自家骨髄移植で25,850点(258,500円)と定められています。ただし、これは移植術そのものの点数であり、実際には入院費、検査費、薬剤費などが加算されます。clinicalsup+1

造血幹細胞移植の種類別費用比較

造血幹細胞移植には自家移植と同種移植があり、費用面で大きな差があります。自家移植は患者自身の造血幹細胞を使用するため、移植術の診療報酬は25,850点(骨髄移植)または30,850点(末梢血幹細胞移植)です。一方、同種移植では他者から造血幹細胞の提供を受けるため、移植術の診療報酬は66,450点と自家移植の約2.5倍に設定されています。clinicalsup
インドのデータでは、自家移植の費用中央値が12,500ドル(範囲:10,331~39,367ドル)、同種移植が17,914ドル(範囲:10,832~44,701ドル)と報告されており、同種移植の方が高額になる傾向が世界的に共通しています。pmc.ncbi.nlm.nih+1
米国における民間保険データの分析では、自家移植受給者1,678名と同種移植受給者の費用が調査され、移植の種類や前処置の強度によって費用が大きく異なることが明らかになっています。特に骨髄破壊的前処置を用いる移植は、より集中的な入院管理が必要となるため、高額になる傾向があります。pmc.ncbi.nlm.nih+1

造血幹細胞移植の合併症と追加費用

造血幹細胞移植後には様々な合併症が発生する可能性があり、これらの治療に追加の医療費が必要となります。移植前処置に関連する副作用として、吐き気・嘔吐、口内炎、感染症、貧血などが起こり、肝臓、腎臓、肺、心臓、中枢神経などに障害が生じることがあります。ganjoho
同種移植では特有の合併症として移植片対宿主病(GVHD)が発生し、重症化すると治療が難しく、命に関わることもあります。急性GVHDは移植後100日以内に、慢性GVHDは移植後3ヵ月以降に発症することがあり、それぞれ治療のための医療費が追加で発生します。ganjoho
移植後3カ月以上経過してから起こる晩期合併症も重要な問題です。心臓の合併症(心不全、不整脈)、内分泌機能の異常(甲状腺機能低下、糖尿病)、骨粗しょう症、慢性腎機能障害、白内障、二次がんなど多岐にわたる晩期障害が報告されています。これらの管理のため、多くの医療機関では長期フォローアップ外来を設けており、継続的な医療費が必要となります。meiji-seika-pharma+1
多発性骨髄腫患者の造血幹細胞移植に関する研究では、治療を受けた患者の1年目の門診・入院費用が最も高く、その後減少する一方、治療を受けなかった患者では逆に医療費が年々上昇することが報告されています。hyread

造血幹細胞移植の骨髄バンクコーディネート費用

骨髄バンクを介して非血縁者からの移植を受ける場合、医療費とは別にコーディネート費用が発生します。日本骨髄バンクを利用する際の主な患者負担金は以下の通りです。jrc+1

  • 患者HLA確認検査料:負担なし(患者登録後直ちに実施、NGS-SBT法11座)
  • 一般血液検査(ドナースクリーニング検査)料:5,000円(ドナー候補者1名ごと)
  • ドナー確認検査手数料:3,000円(ドナー候補者1名ごと)
  • 最終同意等調整料:41,000円(登録中に1回限り)
  • ドナー団体傷害保険料:25,000円
  • 採取・フォローアップ調整料:49,000円
  • オプション検査料:44,000円(患者・主治医の希望により実施)

平均的なモデルケースとして、ドナー候補者4人の確認検査を実施し移植を行った場合、患者負担金は約189,000円となります。骨髄液やさい帯血の運搬費用は健康保険の療養費払いの対象となりますが、特に遠方(海外を含む)から搬送される場合、10万円を超えることもあります。jstct+1
さい帯血バンクを利用する場合、さい帯血の搬送費用は保険外となり患者に請求されます。血縁ドナーの健康診断や骨髄採取・末梢血幹細胞採取のための入院費用は、患者の移植費用の中に保険診療として組み込まれるため、ドナーの費用負担はありません。jrc+2
全米骨髄バンク(NMDP)を利用する場合は、より高額なコーディネート費用が必要となります。例えばGift of Lifeの場合、コーディネート開始料金として880ドル、骨髄採取料金は70,985ドル、末梢血幹細胞採取料金は68,430ドルとなっており、為替レートによって日本円での請求額が変動します。jmdp

造血幹細胞移植における高額療養費制度の活用

造血幹細胞移植では高額療養費制度が適用され、患者の自己負担額に上限が設けられています。この制度により、1ヵ月間の医療費の自己負担額が一定金額(自己負担限度額)を超えた場合、超過分の支払いが不要になります。自己負担限度額は年齢や所得によって決定され、多くの患者では実質的な負担が大幅に軽減されます。meiji-seika-pharma+1
70歳未満の方と70歳以上の非課税世帯等の場合、事前に保険証の発行機関から「限度額適用認定証」の交付を受けることで、病院窓口での支払額が自己負担限度額で済みます。また、マイナ保険証(健康保険証として利用登録をしたマイナンバーカード)または「資格確認書」を提示することで、事前手続きなく自己負担限度額以上の支払いが不要になります。meiji-seika-pharma
高額療養費制度の対象となるのは公的医療保険が適用される医療費のみで、食事代や差額ベッド代などは対象外です。骨髄バンクへ支払ったコーディネート費用については、保険適用内外の治療費・薬剤費、通院費、入院時の部屋代や食事代とともに、医療費控除の対象として申請できる場合があります。meiji-seika-pharma
限度額適用認定証が提示できなかった場合や複数の医療機関を受診した場合で、一部負担金が自己負担限度額を超えた場合は、健康保険に申請することで超過分が「高額療養費」として払い戻されます。無菌室に入室した場合は、入室日から90日を限度として1日につき3,000点または2,000点が保険診療に適用されます。ncc+1
一部の健康保険組合や共済組合では、高額療養費制度に加えて独自の医療費助成制度を設けている場合があり、さらなる負担軽減が期待できます。各医療機関には相談対応窓口が設置されており、具体的な自己負担額や利用可能な支援制度について相談することが推奨されます。gan-kisho.novartis+1
厚生労働省の高額療養費制度に関する詳細情報
造血幹細胞移植における医療費の自己負担を軽減するための制度について、厚生労働省が公式に案内しています。

 

日本骨髄バンクの経済面での支援制度情報
骨髄バンクを利用する患者向けに、高額療養費制度や各種助成制度の活用方法が説明されています。

 

 




【中古】 造血幹細胞移植のための感染対策ガイド 米国疾病管理センター(CDC)による科学的対策 / 矢野 邦夫 / 日本医学館 [ペーパーバック]【ネコポス発送】