レビーの症状と診断の重要性

レビー小体型認知症は幻視やパーキンソン症状など多彩な症状を特徴とする疾患です。認知機能の変動や睡眠障害など、早期発見に重要な症状を理解していますか?

レビーの症状と診断

レビー小体型認知症の主要症状
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幻視と認知機能の変動

明瞭な幻視と注意力・覚醒レベルが変動する特徴的な認知機能障害が出現します

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パーキンソン症状

筋肉の硬直、動作緩慢、歩行障害などの運動機能低下が認められます

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レム睡眠行動障害

睡眠中に大声で叫んだり暴れたりする異常行動が見られます

レビー小体型認知症は、脳内に異常なタンパク質であるレビー小体が蓄積することで発症する神経変性疾患であり、アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症の一つです。この疾患は多彩な症状を呈するため、医療従事者は早期診断と適切な対応を行うために、その特徴的な症状を正確に理解しておく必要があります。utano.hosp+4
レビー小体型認知症の症状は、認知症の中でも特に多様性があり、症状の日内変動や週単位での変化が特徴的です。患者自身には病識が保たれている場合も多く、幻視などの症状に本人が苦しんでいることを理解することが重要です。発症年齢は主に60~80歳代で、男性にやや多い傾向があります。tyojyu+5

レビーの症状における認知機能障害の特徴

 

 

レビー小体型認知症における認知機能障害は、アルツハイマー型認知症とは異なる特徴を示します。最も顕著な特徴は、注意力や覚醒レベルが数分から数時間、あるいは数週間から数ヶ月の単位で変動することです。調子が良い時と悪い時の差が激しく、同じ日でも朝は問題なく会話できていたのに夕方から調子が悪くなるといった日内変動がみられます。saiseikai+3
初期から低下する認知機能としては、視空間認知と遂行機能が挙げられます。視空間認知は目から入った情報を脳で把握する能力であり、この機能が低下すると日常的な活動に支障をきたします。遂行機能とは順序を立てて実行する能力を指し、金銭管理や計画的な行動が困難になります。tanzawahp+1
アルツハイマー型認知症と比較すると、レビー小体型認知症では記憶障害は比較的軽度である場合が多く、初期段階では記憶がある程度保たれていることも特徴です。しかし、病気の進行とともに記憶障害も出現し、徐々に社会的・日常的な活動に支障をきたすようになります。mcsg+2

レビーの症状における幻視と精神症状

幻視はレビー小体型認知症の最も特徴的な症状の一つであり、診断基準における中核的特徴とされています。患者は実際には存在しないものをはっきりと見ることができ、その内容は非常に具体的で生々しいことが特徴です。ninchisho+3
幻視の内容として最も多いのは、小さな子供や亡くなった家族、小動物、虫などの動きを伴うものです。これらは暗い場所や隙間から現れるように見えることが多く、患者に恐怖や不安を与えることがあります。幻視は特に夕方から夜間にかけて出現しやすく、照明が不十分な環境で増悪する傾向があります。theotol.soudan-e65+2
幻視に加えて、錯視も頻繁に観察されます。錯視とは実際に存在するものを別のものと見間違える現象で、例えば天井のシミが虫に見えたり、廊下や道路が波打って見えたりします。壁に掛けた洋服が人の姿に見えることもあり、これが幻視や妄想につながることもあります。mcsg+2
精神症状としては、幻視に関連した妄想や抑うつ症状が認められます。初期症状として抑うつ状態が出現することも多く、うつ病と誤診されるケースもあります。患者は幻視の体験によって強い不安や恐怖を感じるため、適切な対応と治療が必要です。carenet+4

レビーの症状におけるパーキンソン症状と運動障害

パーキンソン症状はレビー小体型認知症の診断基準における中核的特徴の一つであり、約70~80%の患者に認められます。主な症状として、筋肉の硬直(固縮)、動作緩慢(寡動)、手足の震え(振戦)、姿勢反射障害が挙げられます。nmp+3
具体的には、歩幅が小さくなり、歩行速度が遅くなる、何もないところで転倒しやすくなる、猫背の姿勢になる、といった症状が観察されます。着替えがうまくできなくなる、箸やペンを持つ動作が困難になるなど、日常生活動作にも支障をきたします。kaigo.benesse-style-care+3
パーキンソン症状の特徴として、レビー小体が運動機能をつかさどる脳幹に蓄積しやすく、神経伝達物質であるドパミンが減少することが原因です。症状は左右対称に現れることが多く、これはパーキンソン病が通常片側から始まることと対照的です。yomiuri+3
転倒のリスクが高いことは、医療従事者が特に注意すべき点です。パーキンソン症状による姿勢の不安定さに加えて、認知機能の変動や幻視による注意力低下が重なることで、転倒・転落のリスクがさらに高まります。honobono-clinic+2

レビーの症状におけるレム睡眠行動障害と自律神経症状

レム睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder: RBD)は、レビー小体型認知症の診断基準における中核的特徴として2017年の改訂で明確に位置づけられました。この症状は認知機能障害が出現する数年前から現れることが多く、早期診断の重要な手がかりとなります。pmc.ncbi.nlm.nih+3
レム睡眠行動障害では、睡眠中に怖い夢を見て大声で叫んだり、手足を激しく動かしたり、歩き回ったりする異常行動が観察されます。ひどい場合には家族に暴力を振るうこともあり、患者本人や同居家族の安全が脅かされることもあります。これらはすべて寝ている間の行動であり、覚醒後には行動の記憶がないことが多いです。anshinkaigo.asahi-life+2
研究によると、レム睡眠行動障害は女性よりも男性に多く認められる傾向があります。初期症状として睡眠行動障害が出現した患者の割合は約20.9%であり、記憶障害(53.9%)、精神症状(34.7%)に次いで三番目に多い初期症状です。carenet
自律神経症状も重要な特徴であり、多くの患者に認められます。最も頻繁に見られるのは便秘で、病気の初期段階から出現することが多いです。起立性低血圧による立ちくらみやめまいも一般的で、転倒のリスクを高める要因となります。comado+3
その他の自律神経症状として、発汗過多、嗅覚の低下、頻尿、失禁、性的機能障害などが報告されています。これらの症状は患者の生活の質を大きく低下させるため、適切な評価と対応が必要です。theotol.soudan-e65+3

レビーの症状における診断基準と鑑別診断

レビー小体型認知症の診断には、2017年に改訂された国際的な臨床診断基準が用いられます。診断には、社会的あるいは職業的機能、通常の日常活動に支障をきたす程度の進行性認知機能低下が必須条件です。semanticscholar+2
中核的特徴として、以下の4つが挙げられます。①認知機能の変動(注意力や覚醒レベルの著明な変動)、②反復する幻視、③レム睡眠行動障害、④パーキンソン症状です。このうち2つ以上の症状が認められる場合、probable DLB(ほぼ確実なレビー小体型認知症)と診断されます。nichiiko+3
症状が1つの場合でも、指標的バイオマーカーが陽性所見であればprobable DLBと診断されます。指標的バイオマーカーには、MIBG心筋シンチグラフィでの心臓への取り込み低下、脳血流SPECTやPETでの後頭葉の血流・代謝低下、睡眠ポリグラフ検査でのレム睡眠行動障害の確認などがあります。med.kyorin-rmd+3
鑑別診断において重要なのは、アルツハイマー型認知症とパーキンソン病との区別です。アルツハイマー型認知症では記憶障害が早期から目立ち、幻視は比較的まれですが、レビー小体型認知症では幻視が初期から認められ、記憶障害は比較的軽度です。asaka-c+2
パーキンソン病との違いは、症状の出現順序にあります。パーキンソン病では運動症状が先に出現し、認知症が生じるのは発症から約10~15年後であるのに対し、レビー小体型認知症では認知機能障害が先行するか、運動症状と同時期に出現します。臨床では、認知症がパーキンソン症状に1年以上先行した場合はDLB、パーキンソン症状が認知症に1年以上先行した場合はPDD(パーキンソン病認知症)とする操作的基準が用いられることもあります。msdmanuals+3

レビーの症状に対する診断検査と画像診断

レビー小体型認知症の診断では、問診、神経学的診察、認知機能検査、画像検査を組み合わせた総合的な評価が行われます。問診では、患者本人だけでなく家族から日常生活の変化について詳しく聞き取ることが重要です。sumitomo-pharma+2
初診時には、めまい、便秘、嗅覚の異常、寝言や寝相、抑うつ状態などの有無を確認するスクリーニング質問紙が用いられます。調子の良い時と悪い時の差、普段できていることができなくなる頻度、ぼーっとしている時間帯などを具体的に聞き取ります。mcsg+1
認知機能検査としては、MMSE(Mini-Mental State Examination)、MoCA-J(Montreal Cognitive Assessment日本版)、COGNISTAT、パレイドリアテストなどが使用されます。パレイドリアテストは、曖昧な画像を見せて何が見えるかを尋ねる検査で、レビー小体型認知症患者では実際には存在しないものが見える傾向があり、診断に有用です。sumitomo-pharma+1
画像診断では、MIBG心筋シンチグラフィが特に重要な検査です。この検査は心臓を支配する自律神経の機能を調べるもので、レビー小体型認知症やパーキンソン病では心臓での取り込みが低下します。心縦隔比(H/M比)が一定のカットオフ値を下回る場合、レビー小体病の存在が強く疑われます。ncgg+2
脳血流SPECT検査では、後頭葉での血流低下が特徴的な所見として認められます。これはレビー小体型認知症に特徴的な所見であり、アルツハイマー型認知症との鑑別に有用です。頭部MRIでは海馬の萎縮がアルツハイマー型認知症ほど目立たないことも鑑別点となります。nmp+2
最近の研究では、α-シヌクレインシード増幅アッセイ(α-synuclein seed amplification assay)という新しい検査法が開発され、レビー小体病の診断精度が向上しています。この検査は、脳脊髄液中の微量なα-シヌクレインを検出することで、レビー小体病理の存在を高い精度で診断できる可能性があります。alz-journals.onlinelibrary.wiley

レビーの症状に対する治療薬と薬物療法

レビー小体型認知症の治療において、現在のところ病気を根本的に治す薬はなく、症状を改善・緩和する対症療法が中心となります。認知機能障害に対しては、コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬が主に使用されます。mcsg+1
ドネペジル(アリセプト)は、レビー小体型認知症に対して保険適応を持つ唯一のコリンエステラーゼ阻害薬であり、認知機能の改善だけでなく幻視の軽減にも効果があります。注意力や覚醒レベルの改善、認知機能の変動性の軽減、アパシーの改善などに効果を示すことがあります。臨床研究では、幻覚、アパシー、妄想に対して一定の効果が確認されています。utu-yobo+2
その他のコリンエステラーゼ阻害薬として、リバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ)とガランタミン(レミニール)があります。リバスチグミンは貼付薬であり、嚥下障害がある高度の患者に適しています。NMDA受容体拮抗薬のメマンチン(メマリー)も、認知機能障害の改善に用いられます。mcsg+1
パーキンソン症状に対しては、レボドパ(L-DOPA)製剤が使用されます。レボドパは運動機能を改善する効果が期待できますが、幻視や妄想を悪化させるリスクがあるため、慎重な使用が必要です。投与量は少量から開始し、効果と副作用のバランスを見ながら調整します。ncgg+2
レム睡眠行動障害に対しては、クロナゼパム(リボトリール、ランドセン)が第一選択薬として使用されます。クロナゼパムは睡眠中の異常な運動を抑える効果が期待できますが、転倒リスクの増加や認知機能への影響に注意が必要です。utu-yobo+1
抑うつ症状に対しては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬が使用されます。トラゾドンは抗不安効果があり、フルボキサミンやパロキセチンは抑うつ症状の解消に効果があります。ただし、ベンゾジアゼピン系抗不安薬は転倒リスクを高める可能性があるため、使用には注意が必要です。mcsg+1
幻視や妄想が強い場合には、非定型抗精神病薬が慎重に使用されることがあります。しかし、レビー小体型認知症患者は抗精神病薬に対する感受性が亢進しており、少量でも重篤な副作用が生じる可能性があるため、特に注意が必要です。使用する場合は、オランザピン(ジプレキサ)、リスペリドン(リスパダール)、アリピプラゾール(エビリファイ)などが選択されますが、最小限の用量から開始します。memory-clinic+3
症状の進行度合いによって使用する薬剤が異なります。軽度では便秘に消化管運動改善薬、レム睡眠行動障害にクロナゼパム、幻視にドネペジルが処方されます。中等度ではパーキンソン症状の増悪に対してレボドパ、認知機能の改善にドネペジルが併用されます。高度では嚥下障害を考慮してリバスチグミン貼付薬への変更が検討されます。mcsg
日本神経学会による認知症疾患診療ガイドラインのレビー小体型認知症の章では、診断基準と治療の標準的なアプローチが詳細に解説されています

レビーの症状に対する非薬物療法と看護・介護の工夫

非薬物療法は、レビー小体型認知症の治療において薬物療法と同様に重要な役割を果たします。脳を活性化させる方法として、回想法、認知機能訓練、運動療法、音楽療法などが実施されます。これらの方法は快い刺激を与えることで脳の活性化を促し、患者の生活の質を向上させます。cog-selfcheck+1
住環境の整備は、幻視や誤認の症状を軽減し、転倒を予防するために特に重要です。部屋を明るくする、誤認の原因になりそうな衣類を片付ける、床に物を置かない、コード類をまとめる、段差を解消するなどの工夫が推奨されます。壁に洋服を掛けない、壁紙は無地にするといった配慮も、幻視や錯視の予防に有効です。kikuchi.hosp+2
幻視への対応では、患者の訴えを否定しないことが最も重要です。「ドアの陰に人がいる」と言われたら「見てきますね」と落ち着いた声がけをし、実際に確認する姿勢を示すことで患者は安心します。幻視がどんなものか十分に話を聞き、どんな時にどんな場面でどんなものが見えるのかを把握することも重要です。近寄ったり触ると消えることが多いので、一緒に見てみることも良い方法です。mcsg+1
パーキンソン症状による転倒・転落リスクへの対応も重要な看護ポイントです。床に物を置かない、照明を十分に確保する、手すりを設置する、滑り止めマットを使用するなどの環境整備が必要です。また、患者の動線を考慮した家具の配置や、転倒時の衝撃を和らげるためのクッション材の使用も検討されます。knowledge.nurse-senka+2
コミュニケーションの工夫も重要です。患者の話を静かに聞くこと、分かりやすい言葉を使って話すこと、非言語的なコミュニケーション(ボディランゲージ、視覚的な手がかり)を活用することが効果的です。認知機能の変動があるため、調子の良い時間帯を見極めて重要な話をすることも大切です。cog-selfcheck+1
便秘や脱水は幻視を悪化させることがあるため、身体的な不調にも配慮が必要です。適切な水分摂取、食物繊維の多い食事、軽い運動などを日常生活に取り入れることが推奨されます。mcsg
介護者の負担軽減も重要な課題です。レビー小体型認知症の介護負担は高く、介護者自身の健康管理が必要です。介護保険サービスの活用、レスパイトケアの利用、専門家や専門機関への相談など、適切なサポートを求めることが推奨されます。介護者自身が定期的な休憩を取り、趣味やリラクゼーション活動に時間を費やすことも大切です。mdpi+2
看護roo!のレビー小体型認知症の看護ガイドでは、具体的な看護ケアのポイントと注意点が実践的に解説されています

医療従事者が知るべきレビーの症状の早期発見と予後

レビー小体型認知症の早期発見は、適切な治療と介入を開始するために極めて重要です。前駆症状として、認知機能障害が出現する数年前からレム睡眠行動障害、便秘、嗅覚の低下、抑うつ症状、起立性低血圧などが現れることが多いことが知られています。pmc.ncbi.nlm.nih+1
研究によると、レビー小体型認知症患者の初期症状の出現順位は以下の通りです。記憶障害が最も多く53.9%、次いで精神症状が34.7%、睡眠行動障害が20.9%、パーキンソン症状が15.1%、自律神経症状が10.1%となっています。性別による違いも報告されており、睡眠行動障害は女性よりも男性で多く認められます。carenet
診断までの時間が長期化する傾向にあることも問題です。特に神経症状(しびれや痛み)を初期症状として訴えた患者では、診断までの期間が平均38.88ヶ月から40.35ヶ月と長くなることが報告されています。このため、神経症状を訴える患者に対しては、レビー小体型認知症の可能性を念頭に置いた診察が必要です。pmc.ncbi.nlm.nih+1
医療従事者は、パーキンソン病で経過を診ていた患者に認知症状が出現してくる場合があることも認識しておく必要があります。パーキンソン病患者の約40%が病気の進行とともに認知症を発症し、これは「認知症を伴うパーキンソン病(PDD)」と呼ばれます。通常、パーキンソン病の診断から約10~15年後に認知症が発生します。nmp+2
過剰診断と過少診断の問題も指摘されています。臨床症状だけでは診断が困難な症例も存在し、SPECT所見などの画像検査と臨床症状が一致しない場合もあります。このため、複数の検査結果を総合的に判断することが重要です。semanticscholar+3
予後に関しては、レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症と比較して、認知機能の低下や介護負担の増加が急速に進行する傾向があります。しかし、適切な治療と介護により、症状の進行を遅らせ、生活の質を維持することが可能です。semanticscholar+3
医療従事者は、レビー小体型認知症の多様な症状を理解し、早期診断のための適切な評価を行うとともに、患者と家族に対する包括的なケアを提供することが求められます。患者、介護者、医師の三者間でのコミュニケーションを密にし、治療のニーズを共有することが、より良い治療成果につながります。pmc.ncbi.nlm.nih+1
CareNetのレビー小体型認知症の初期症状に関する記事では、早期診断のポイントと性別による症状の違いが詳しく解説されています

 

 




レビー小体型認知症がよくわかる本 イラスト版[本/雑誌] (健康ライブラリー) (単行本・ムック) / 小阪憲司/監修