手足症候群の症状と発現時期や対処法

抗がん剤治療に伴う手足症候群の症状として、発赤やしびれ、痛みなど様々な皮膚変化が現れます。早期発見と適切なケアにより、重症化を防ぐことができますが、どのような点に注意すべきでしょうか?

手足症候群の症状

手足症候群の主な症状
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初期症状

しびれ、ピリピリ・チクチクするような感覚異常、手のひらや足の裏に部分的な赤みが出現

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中等度症状

赤くはれぼったい、やけどのような痛み、皮膚が硬くなりひび割れが発生、日常生活に支障

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重度症状

激しい痛み、水ぶくれや皮膚のめくれ、身の回りのことができない状態に進行

手足症候群の初期症状

 

 

手足症候群の初期段階では、手のひらや足の裏にしびれやチクチク、ピリピリとした感覚異常が出現します。この時期には痛みはなく、日常生活に支障はありませんが、手のひらや足の裏に部分的な赤みが認められることがあります。また、爪の変形や色素沈着も初期症状として現れることがあり、早期発見の手がかりとなります。これらの症状は通常、身体の左右両側に対称的に現れるのが特徴です。mhlw+2

手足症候群の中等度から重度の症状

症状が進行すると、赤みと腫脹が顕著になり、やけどのような痛みを伴うようになります。中等度では皮膚が硬くなり、ひび割れが生じて外出など日常生活に支障をきたします。手掌や足底の角化肥厚、皮膚硬結部分に好発し、特に圧力がかかる部位に症状が現れやすくなります。重度になると激しい痛みとともに水ぶくれや皮膚のめくれが生じ、物をつかむことができない、痛みのために歩くことができないなど、身の回りのことができない状態に至ります。荷重負荷がかかると痛みは増し、皮膚に亀裂が生じると、じんじんするような強い痛みが起こります。takeda+3

手足症候群の重症度評価

手足症候群の重症度はGrade 1から3に分類され、治療方針の決定に重要な指標となります。以下の表は各Gradeの特徴をまとめたものです。clinic-hiiragi

Grade 症状の特徴 日常生活への影響
Grade 1 疼痛を伴わないわずかな皮膚の変化(紅斑、浮腫、角質増殖症) 治療を要さず、日常生活に支障なし
Grade 2 疼痛を伴う皮膚の変化(角層剥離、水疱、出血、浮腫、角質増殖症) 年齢相応の身の回り以外の日常生活動作の制限
Grade 3 疼痛を伴う高度の皮膚変化(角層剥離、水疱、出血、浮腫、角質増殖症) 身の回りの日常生活動作の制限、入院を要する可能性

この評価基準はCTCAE(有害事象共通用語規準)に基づいており、Grade 2以上では抗がん剤の減量や休薬が検討されます。適切な重症度評価により、症状の重篤化を防ぎ、患者のQOLを維持することが可能になります。gi-cancer+2

手足症候群の発現時期と原因薬剤

手足症候群の発現時期は原因となる抗がん剤の種類によって異なります。フッ化ピリミジン系製剤であるカペシタビンでは、発現は穏やかであり、数週から数ヵ月後に発現することが多いとされています。一方、マルチキナーゼ阻害薬であるソラフェニブやレゴラフェニブでは、治療開始後早期に発現する傾向があります。手足症候群を起こしやすい主な薬剤には、カペシタビン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ソラフェニブ、スニチニブ、カボザンチニブなどがあります。特にカペシタビンでは1回投与量が多いほど、手足症候群の発現頻度が高く、重症化しやすいという報告があります。また、女性・高齢者、貧血や腎機能障害のある患者にGrade 2以上の手足症候群が多いことが知られています。navi.towa-oncology+3

手足症候群の発現メカニズムと病態生理

手足症候群の詳細な発現機序は完全には解明されていませんが、いくつかの仮説が提唱されています。フッ化ピリミジン系製剤では、皮膚基底細胞の増殖阻害、エクリン汗腺からの薬剤分泌、フルオロウラシルの分解産物の関与などが示唆されています。ドキソルビシン誘発性の手足症候群では、薬剤が汗に混ざって皮膚表面に拡散し、角質層に浸透して濃縮されるプロセスが提案されています。手掌や足底は汗腺の密度が高く、他部位の皮膚の約10倍の濃度の薬剤が蓄積されることが、これらの部位に症状が集中する理由と考えられています。キナーゼ阻害薬であるソラフェニブとレゴラフェニブでは、PDGFR、c-KITの阻害による表皮やエクリン汗腺の障害が推定されていますが、具体的なメカニズムの解明には至っていません。wikipedia+2

手足症候群の予防と日常ケア

手足症候群の予防において最も重要なのは、治療開始前からのスキンケアです。予防の基本は「清潔」「保湿」「保護」の3つであり、これらを徹底することで症状の発現や重症化を防ぐことができます。保湿は1日2回、朝晩のケアを基本とし、症状が出始めたら回数を増やします。保湿剤は低刺激、弱酸性の製品を選び、セラミドなどの保湿成分を含むものが推奨されます。入浴や手洗い後は15分以内に保湿剤を塗布することが効果的です。手足への物理的刺激を避けることも重要で、締め付けの強い靴下を着用しない、足にあった柔らかい靴を履く、エアロビクスや長時間歩行、ジョギングなどを控えるなどの対策が必要です。また、包丁の使用やぞうきん絞りを控える、炊事や水仕事の際にはゴム手袋を用いるなど、日常生活での工夫も推奨されます。就寝前に保湿剤の量を若干多めにし、手袋や靴下を使用するとより効果的です。knowledge.nurse-senka+4

手足症候群の治療と対処法

手足症候群の治療において確実な処置は原因薬剤の休薬であり、休薬により速やかに改善します。カペシタビンによる手足症候群の完全回復までの期間は、休薬により数日から数週間とされています。局所療法として、対症療法による疼痛や腫脹の抑制、感染の合併予防が重要です。保湿を目的とした尿素軟膏、ヘパリン類似物質含有軟膏、ビタミンA含有軟膏、白色ワセリンなどの外用薬が使用されます。腫脹が強い場合は四肢の挙上と手足の冷却(cooling)が有効です。びらん・潰瘍化した場合は、病変部を洗浄し(水道水で可)、白色ワセリンやアズレン含有軟膏などで保護します。二次感染を伴った場合には、抗生物質(内服、外用)の投与も考慮されます。紅斑(炎症)にはステロイド軟膏、角質増殖・乾燥には角化症治療剤や皮膚保湿剤、亀裂には適切な局所治療が行われます。最近の研究では、外用ジクロフェナクがカペシタビンによる手足症候群を有意に抑制することが示されています。mhlw+3
<参考リンク>
厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルには、手足症候群の詳細な対応方法と日常生活指導が記載されています。

 

厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群
国立がん研究センター東病院の手足症候群に関する情報ページでは、症状の詳細と予防策が解説されています。

 

国立がん研究センター東病院 手足症候群
第一三共ヘルスケアの「はだカレッジ」では、医療従事者向けに手足症候群の実践的な対処法が提供されています。

 

はだカレッジ 手足症候群の具体的な対処方法

 

 




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