インダパミドはサイアザイド類似利尿薬に分類される降圧利尿薬で、通常成人1日1回2mgを朝食後に経口投与します。トリクロルメチアジドとは化学構造が異なりますが、類似した作用機序を有しています。日本人を対象とした比較試験では、インダパミド2mg分1とトリクロルメチアジド4mg分1を比較した結果、インダパミドの方が優れた降圧効果を示しました。chinen-heart+3
インダパミドの特徴的な作用として、利尿作用は緩やかですが持続時間が長く、血管収縮を抑える効果が強いことが挙げられます。この血管拡張作用により、体内の塩分排出を促進するだけでなく、血管の収縮を抑えるという2つの側面から血圧を下げる効果があります。海外の大規模試験であるHYVET試験では、80歳以上の高齢者にインダパミド徐放剤を投与することで、脳卒中が30%減少、脳卒中による死亡が39%減少、全ての死亡が21%減少、心不全が64%減少するという顕著な効果が示されています。ubie+2
インダパミドはヒドロクロロチアジドと比較しても、同等の降圧効果を発揮しながら代謝パラメータへの有害な作用が認められず、血清カリウム値、ナトリウム値、クレアチニン値、血糖値、コレステロール値、尿酸値に有意な差がないことが確認されています。適応症は本態性高血圧症に限定されており、高血圧治療における第一選択薬の一つとして位置づけられています。ebm-library+2
トリクロルメチアジドはヒドロクロロチアジドと同じくサイアザイド系利尿薬に分類され、腎臓の遠位尿細管でのNa⁺/Cl⁻再吸収を阻害し、K⁺の排泄を増加させる作用を持ちます。通常成人には1日2~8mgを1~2回に分割して経口投与しますが、高血圧症に用いる場合には少量から投与を開始して徐々に増量することが推奨されています。wikipedia+3
トリクロルメチアジドの大きな特徴は、その幅広い適応症にあります。高血圧症(本態性、腎性等)だけでなく、悪性高血圧、心性浮腫(鬱血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症にも適応があり、インダパミドよりも多様な病態に対応できる薬剤です。uchikara-clinic+1
降圧作用のメカニズムは完全には解明されていませんが、脱塩・利尿作用により循環血液量を減少させる、あるいは交感神経刺激に対する末梢血管の反応性を低下させることで血圧を下げると考えられています。サイアザイド系利尿薬はループ利尿薬と比較して利尿作用は穏やかですが、効果持続時間が長く、1日1回の投与で翌朝まで安定した降圧効果が得られるという利点があります。sugamo-sengoku-hifu+1
体の余分な水分を塩分とともに尿に排出することで、むくみが取れて血圧も下がり、同時に心臓の負担も軽くなります。フルイトランという商品名で塩野義製薬から販売されており、古くから使われている効果的な薬剤として認識されています。interq+1
両薬剤の降圧効果を直接比較した重要な研究として、村上らによる日本人を対象とした二重盲検法による試験があります。この試験では、インダパミド2mg分1とトリクロルメチアジド4mg分1を比較した結果、インダパミドの方が優れた降圧効果を示しました。サイアザイド類似利尿薬であるインダパミドは、サイアザイド系利尿薬よりも降圧効果が高いという結論が得られています。ubie+2
海外のメタアナリシスでは、インダパミドはクロルタリドンと同様に、一般的な処方量でヒドロクロロチアジドより降圧効果が高いことが示されており、代謝パラメータへの有害な作用は認められませんでした。この研究では、血清カリウム値、ナトリウム値、クレアチニン値、血糖値、コレステロール値、尿酸値に有意な両群間差は認められず、インダパミドの代謝面での安全性が確認されています。ebm-library
サイアザイド系利尿薬の用量と降圧効果の関係を調べたメタアナリシスでは、半量でも十分な降圧効果が得られる一方で、用量が増えるほど副作用の発現頻度が上昇することが示されています。このため、高血圧治療では少量から投与を開始して徐々に増量することが推奨されており、インダパミドでは通常2mg分1、トリクロルメチアジドでは0.5~2mgが適正用量とされています。mhlw+1
高血圧治療におけるサイアザイド利尿薬の重要性とエビデンス
サイアザイド類似利尿薬の降圧効果とエビデンスについて詳しく解説されています。
両薬剤とも利尿薬に共通する副作用として、電解質異常が重要な注意点となります。インダパミドの主な副作用として、めまい、吐き気、脱力・倦怠感、頭痛、発疹などが報告されています。重大な副作用としては、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形滲出性紅斑、低ナトリウム血症、低カリウム血症、急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出が挙げられます。qlife+2
特に注目すべき副作用として、電解質異常があります。インダパミドによる重度の電解質異常(低ナトリウム血症、低カリウム血症、低リン血症、低カルシウム血症)が、投与開始後10日以内に発現し、痙攣、横紋筋融解症、急性腎障害を合併した症例が報告されています。最も一般的な電解質異常は低カリウム血症ですが、近年では低ナトリウム血症の報告も増加しています。pmc.ncbi.nlm.nih+1
トリクロルメチアジドも同様の副作用プロファイルを持ち、電解質異常、脱水に十分注意する必要があります。連用する場合は定期的に電解質検査を行うことが推奨されています。特に高齢者では、サイアザイド系利尿薬による低ナトリウム血症のリスクが高く、高齢、女性、低体重、減塩食摂取が薬剤性低ナトリウム血症のリスク因子として知られています。pins.japic+1
利尿薬の降圧・代謝効果-HCTZ vs indapamide
インダパミドとヒドロクロロチアジドの直接比較データが参照できます。
禁忌事項として、両薬剤とも無尿の患者、急性腎不全の患者、体液中のナトリウム・カリウムが明らかに減少している患者には投与しないことが定められています。インダパミドによる一過性近視と毛様体浮腫、脈絡膜上滲出を伴う症例も報告されており、急性の視力低下や眼痛が出現した場合には速やかに投与を中止する必要があります。pmc.ncbi.nlm.nih+3
高血圧治療における利尿薬の選択では、サイアザイド類似利尿薬であるインダパミドが優先的に選択される傾向にあります。その理由として、降圧効果の高さと心血管病を減らすエビデンスの豊富さが挙げられます。HYVET試験をはじめとする大規模臨床試験で、死亡率や心血管イベントの減少が実証されているため、特に高齢者の高血圧治療において有用性が高いとされています。chinen-heart+1
一方、トリクロルメチアジドは高血圧症以外の適応症を持つため、心性浮腫、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症などの治療にも使用できるという利点があります。単純な高血圧治療ではインダパミドが選択されることが多いですが、浮腫を伴う病態や複数の適応症がある場合には、トリクロルメチアジドが選択肢となります。jstage.jst+2
用量設定においては、サイアザイド系利尿薬は少量で十分な効果を得られる場合が多く、添付文書上の用量よりも少ない量での使用が推奨されることがあります。インダパミドでは通常2mg分1、トリクロルメチアジドでは0.5~2mgが適正用量とされており、少量から投与を開始して徐々に増量することが基本原則です。kegg+2
高齢者への投与では、両薬剤とも注意が必要ですが、サイアザイド系利尿薬は夜間頻尿を増悪させる可能性が低いという利点があります。「利尿薬」という名称から患者が頻尿を懸念して内服を拒否することがありますが、実際にはループ利尿薬ほど尿量増加は顕著ではなく、降圧効果の方が主体的な作用となります。carenet
<表:インダパミドとトリクロルメチアジドの比較>
| 比較項目 | インダパミド | トリクロルメチアジド |
|---|---|---|
| 分類 | サイアザイド類似利尿薬chinen-heart | サイアザイド系利尿薬wikipedia |
| 通常用量 | 2mg 1日1回kegg | 2~8mg 1日1~2回分割pins.japic |
| 適正用量 | 0.5~2mgmhlw | 0.5~2mgmhlw |
| 主な適応症 | 本態性高血圧症kegg | 高血圧症、心性浮腫、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症wikipedia |
| 降圧効果 | トリクロルメチアジド4mg分1より高いchinen-heart+1 | インダパミド2mg分1より低いchinen-heart+1 |
| 心血管イベント減少のエビデンス | 豊富(HYVET試験など)chinen-heart | サイアザイド系として限定的chinen-heart |
| 主な副作用 | 低ナトリウム血症、低カリウム血症、めまい、吐き気qlife | 電解質異常、脱水、めまい、ふらつきpins.japic |
| 禁忌 | 無尿、急性腎不全、電解質異常pins.japic | 無尿、急性腎不全、電解質異常pins.japic |
腎機能低下患者への使用においては、サイアザイド系利尿薬はGFR 30mL/min/1.73m²以下の高度腎不全への単独投与では効果が期待できませんが、ループ利尿薬と併用した場合には十分な利尿効果が得られます。ただし、併用により電解質異常、低血圧、腎機能障害等の副作用が起こるおそれがあるため注意が必要です。fpa
浮腫の治療においては、急性期で浮腫が強い場合にはループ利尿薬を選択し、浮腫が軽快して定常状態に近づけばサイアザイド系利尿薬を選択するのが理に適っています。心不全治療ではループ利尿薬が第一選択薬となりますが、抗アルドステロン薬は高カリウム血症がない限り基礎薬として併用し、高血圧では臓器保護の観点からRA系抑制薬が第一選択薬として汎用されているため、高カリウム血症を防止する意味でサイアザイド系利尿薬が併用されることが多くなっています。jstage.jst
【医師向け】降圧薬の種類と使い分けのポイント―腎臓内科医解説
降圧薬全般の使い分けについて腎臓内科専門医による詳細な解説があります。