慢性便秘症は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態が慢性的に続く病態」と定義されます。2023年7月に日本消化管学会から発行された最新の便通異常症診療ガイドラインでは、2017年版から約6年ぶりの改訂が行われ、診療フローチャートの新規掲載や治療薬のエビデンスが更新されました。minds.jcqhc+1
診断には国際的に広く用いられるRome IV診断基準が採用されており、以下の6項目のうち2項目以上を満たす場合に慢性便秘症と診断されます。これらの症状は最低3か月以上継続し、6か月以上前から症状が始まっていることが条件となります。aichi.med+3
診断基準の6項目には以下が含まれます:asakusa-naika+1
この診断基準では、排便回数だけでなく排便困難感や残便感といった質的な症状も重視されており、患者のQOLを考慮した包括的評価が可能となっています。jstage.jst+1
慢性便秘症の分類は、原因と病態の両面から体系的に整理されています。2023年版ガイドラインでは、まず一次性便秘症と二次性便秘症に大別され、さらに詳細な病態分類が行われています。jstage.jst+2
一次性便秘症には以下が含まれます:knowledge.nurse-senka+2
二次性便秘症は原因が明確な便秘であり、以下に分類されます:jpn-ga+2
病態による分類では、大腸通過時間検査を用いて以下の3つに分けられます:jstage.jst+2
この病態分類は治療方針の決定に重要であり、ガイドラインでは病態に応じた治療アプローチが推奨されています。特に大腸通過遅延型では浸透圧性下剤や上皮機能変容薬が、便排出障害型ではバイオフィードバック療法が有効とされています。hosp.hyo-med+2
慢性便秘症の薬物療法は、2023年版ガイドラインにおいて大きく進歩しています。治療の第一選択薬として浸透圧性下剤が推奨されており、効果不十分な場合に上皮機能変容薬や刺激性下剤を追加する段階的アプローチが基本となります。carenet+2
浸透圧性下剤には以下の特徴があります:honenaika+2
上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチド)や胆汁酸トランスポーター阻害薬(エロビキシバット)は、ガイドライン2023で推奨度の高い治療薬として位置づけられています。これらの薬剤は腸管分泌を促進し、便の水分含量を増加させることで排便を改善します。pmc.ncbi.nlm.nih+1
刺激性下剤(センノシド、ピコスルファートナトリウム)については、ガイドラインで慎重な使用が求められています:nankodo+2
オピオイド誘発性便秘症に対しては、末梢性オピオイド受容体拮抗薬が有効とされ、ガイドライン2023で新たに治療アルゴリズムが示されました。minds.jcqhc
Evidence-Based Clinical Guidelines for Chronic Constipation 2023 - PMC
最新の国際的エビデンスに基づく慢性便秘症の治療ガイドラインの参考情報として有用です。
薬物療法と並んで、生活習慣の改善は慢性便秘症治療の基本となります。2023年版ガイドラインでは、食事・生活指導の重要性が強調されており、軽症から中等症の便秘では生活指導のみで改善する症例も多いことが示されています。hhk+1
食事指導では以下が推奨されています:eapharma+1
2025年10月にはイギリス栄養士協会から「慢性便秘の成人向けの食事管理ガイドライン」が発表され、キウイフルーツの有効性がさらに注目されています。gigazine
生活習慣の改善として以下が重要です:jpm1960+1
ガイドラインでは、これらの非薬物療法を治療の第一段階として位置づけており、患者教育の重要性が強調されています。治療継続のためには、治療段階を患者と共有し、好んで薬剤を服用したくない患者の気持ちに配慮しながら生活指導を丁寧に行うことが推奨されています。eapharma
慢性便秘症の診療では、まず二次性便秘を除外することが重要であり、ガイドライン2023では警告症状・徴候(red flags)の評価が強調されています。警告症状には体重減少、血便、貧血、大腸がんの家族歴などが含まれ、これらを認める場合は大腸内視鏡検査が必要です。do-yukai+2
基本的な診断プロセスは以下の通りです:asakusa-naika+2
専門的機能検査としては以下が用いられます:jstage.jst+2
大腸通過時間検査では、マーカー投与後3日以内に最初のマーカーが便中に排出され、5日目までに80%以上が排泄されることが正常とされます。この検査により大腸通過遅延型を診断し、適切な治療方針の決定が可能となります。jstage.jst+2
ガイドライン2023では、これらの検査を必要に応じて選択的に実施し、病態に応じた個別化医療を行うことが推奨されています。特に保存的治療に抵抗性の難治例では、詳細な機能評価を行い、外科的治療の適応を慎重に判断することが重要です。hosp.hyo-med+1
便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症 | Minds
日本消化管学会作成の公式ガイドライン全文がMindsで公開されており、詳細な診断・治療アルゴリズムを確認できます。