慢性便秘ガイドラインの診断と治療

慢性便秘症の診断と治療について、最新のガイドライン2023に基づいて解説します。Rome IV診断基準、分類、薬物療法、生活指導まで網羅した内容で、あなたの便秘診療に役立つ情報は何でしょうか?

慢性便秘ガイドラインの診断と治療

この記事で理解できる3つのポイント
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最新ガイドラインの診断基準

2023年版ガイドラインに基づくRome IV診断基準と分類を詳しく解説

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エビデンスに基づく薬物療法

浸透圧性下剤、刺激性下剤など各薬剤の適切な使い分けと注意点

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病態評価と鑑別診断

一次性・二次性便秘の鑑別と大腸通過時間による病態分類

慢性便秘ガイドライン2023における定義と診断基準

 

 

慢性便秘症は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態が慢性的に続く病態」と定義されます。2023年7月に日本消化管学会から発行された最新の便通異常症診療ガイドラインでは、2017年版から約6年ぶりの改訂が行われ、診療フローチャートの新規掲載や治療薬のエビデンスが更新されました。minds.jcqhc+1
診断には国際的に広く用いられるRome IV診断基準が採用されており、以下の6項目のうち2項目以上を満たす場合に慢性便秘症と診断されます。これらの症状は最低3か月以上継続し、6か月以上前から症状が始まっていることが条件となります。aichi.med+3
診断基準の6項目には以下が含まれます:asakusa-naika+1

  • 排便の4分の1超で強くいきむ必要がある(怒責)
  • 排便の4分の1超で兎糞状便または硬便(Bristol便形状スケールタイプ1か2)
  • 排便の4分の1超で残便感を感じる
  • 排便の4分の1超で直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある
  • 排便の4分の1超で用手的排便促進(摘便、骨盤底圧迫など)を要する
  • 自発的な排便回数が週3回未満

この診断基準では、排便回数だけでなく排便困難感や残便感といった質的な症状も重視されており、患者のQOLを考慮した包括的評価が可能となっています。jstage.jst+1

慢性便秘症の分類とガイドラインにおける病態評価

慢性便秘症の分類は、原因と病態の両面から体系的に整理されています。2023年版ガイドラインでは、まず一次性便秘症二次性便秘症に大別され、さらに詳細な病態分類が行われています。jstage.jst+2
一次性便秘症には以下が含まれます:knowledge.nurse-senka+2

  • 機能性便秘症:大腸の形態的変化を伴わない便秘で、最も頻度が高い
  • 便秘型過敏性腸症候群(IBS-C):腹痛を伴う機能性便秘
  • 非狭窄性器質性便秘症:慢性偽性腸閉塞症、巨大結腸、直腸瘤、直腸重積など

二次性便秘症は原因が明確な便秘であり、以下に分類されます:jpn-ga+2

  • 薬剤性便秘症:抗コリン薬、三環系抗うつ薬、オピオイドなどが原因
  • 症候性便秘症:糖尿病、甲状腺機能低下症、パーキンソン病などが原因
  • 狭窄性器質性便秘症:大腸がん、クローン病などによる腸管狭窄が原因

病態による分類では、大腸通過時間検査を用いて以下の3つに分けられます:jstage.jst+2

  • 大腸通過正常型:大腸の糞便移送能は正常だが、食事摂取量減少や食物繊維不足により便秘となる
  • 大腸通過遅延型:大腸の糞便移送能が低下し、近位大腸に多量の糞便が貯留する
  • 便排出障害型:直腸・肛門機能の障害により排便困難を生じる

この病態分類は治療方針の決定に重要であり、ガイドラインでは病態に応じた治療アプローチが推奨されています。特に大腸通過遅延型では浸透圧性下剤や上皮機能変容薬が、便排出障害型ではバイオフィードバック療法が有効とされています。hosp.hyo-med+2

慢性便秘ガイドラインにおける薬物療法の選択

慢性便秘症の薬物療法は、2023年版ガイドラインにおいて大きく進歩しています。治療の第一選択薬として浸透圧性下剤が推奨されており、効果不十分な場合に上皮機能変容薬や刺激性下剤を追加する段階的アプローチが基本となります。carenet+2
浸透圧性下剤には以下の特徴があります:honenaika+2

  • 酸化マグネシウム、ラクツロース、ポリエチレングリコール(PEG)製剤が代表的
  • 腸管内に水分を引き込み便を軟化させることで排便を促進
  • 長期投与でも耐性や依存性が生じにくく安全性が高い
  • 効果発現まで24〜72時間と緩やか
  • 酸化マグネシウムは腎機能低下例で高マグネシウム血症のリスクあり

上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチド)や胆汁酸トランスポーター阻害薬(エロビキシバット)は、ガイドライン2023で推奨度の高い治療薬として位置づけられています。これらの薬剤は腸管分泌を促進し、便の水分含量を増加させることで排便を改善します。pmc.ncbi.nlm.nih+1
刺激性下剤(センノシド、ピコスルファートナトリウム)については、ガイドラインで慎重な使用が求められています:nankodo+2

  • 大腸の蠕動運動を直接刺激して強力な排便作用を示す
  • 長期連用により耐性が生じ効果が減弱する可能性
  • 腹痛や下痢などの副作用が出やすい
  • 常用ではなく頓用として使用することが推奨される

オピオイド誘発性便秘症に対しては、末梢性オピオイド受容体拮抗薬が有効とされ、ガイドライン2023で新たに治療アルゴリズムが示されました。minds.jcqhc
Evidence-Based Clinical Guidelines for Chronic Constipation 2023 - PMC
最新の国際的エビデンスに基づく慢性便秘症の治療ガイドラインの参考情報として有用です。

 

慢性便秘症の生活指導とガイドラインの推奨

薬物療法と並んで、生活習慣の改善は慢性便秘症治療の基本となります。2023年版ガイドラインでは、食事・生活指導の重要性が強調されており、軽症から中等症の便秘では生活指導のみで改善する症例も多いことが示されています。hhk+1
食事指導では以下が推奨されています:eapharma+1

  • 食物繊維の摂取増加:特に水溶性食物繊維が有効とのエビデンスが豊富
  • オオバコ(サイリウム)やキウイフルーツの有用性が報告されている
  • 食物繊維摂取が少ない患者では、摂取量を増やすことが治療として有用
  • ただし食物繊維の過剰摂取は腹部膨満感を悪化させる可能性もある

2025年10月にはイギリス栄養士協会から「慢性便秘の成人向けの食事管理ガイドライン」が発表され、キウイフルーツの有効性がさらに注目されています。gigazine
生活習慣の改善として以下が重要です:jpm1960+1

  • 規則正しい生活リズム:自律神経を整え腸の動きを規則化
  • 便意を我慢しない:便意を感じたらすぐトイレに行く習慣をつける
  • 適度な運動:有酸素運動や腹筋・骨盤底筋群の強化が効果的
  • ストレス管理:過度なストレスは自律神経を乱し便秘を悪化させる

ガイドラインでは、これらの非薬物療法を治療の第一段階として位置づけており、患者教育の重要性が強調されています。治療継続のためには、治療段階を患者と共有し、好んで薬剤を服用したくない患者の気持ちに配慮しながら生活指導を丁寧に行うことが推奨されています。eapharma

慢性便秘ガイドラインにおける鑑別診断と検査法

慢性便秘症の診療では、まず二次性便秘を除外することが重要であり、ガイドライン2023では警告症状・徴候(red flags)の評価が強調されています。警告症状には体重減少、血便、貧血、大腸がんの家族歴などが含まれ、これらを認める場合は大腸内視鏡検査が必要です。do-yukai+2
基本的な診断プロセスは以下の通りです:asakusa-naika+2

  • 問診:排便習慣、便性状、随伴症状、内服薬、既往歴の聴取
  • 身体診察:腹部診察、直腸診による糞便貯留の確認
  • 通常検査:血液検査(甲状腺機能など)、腹部X線検査、大腸内視鏡検査

専門的機能検査としては以下が用いられます:jstage.jst+2

  • 大腸通過時間検査:放射線不透過マーカー法により大腸通過正常型・遅延型を鑑別
  • 排便造影検査:便排出障害の評価に有用
  • 直腸肛門内圧検査:肛門括約筋機能や直腸感覚閾値の評価
  • 体外式超音波検査:直腸内糞便貯留の客観的評価に有用

大腸通過時間検査では、マーカー投与後3日以内に最初のマーカーが便中に排出され、5日目までに80%以上が排泄されることが正常とされます。この検査により大腸通過遅延型を診断し、適切な治療方針の決定が可能となります。jstage.jst+2
ガイドライン2023では、これらの検査を必要に応じて選択的に実施し、病態に応じた個別化医療を行うことが推奨されています。特に保存的治療に抵抗性の難治例では、詳細な機能評価を行い、外科的治療の適応を慎重に判断することが重要です。hosp.hyo-med+1
便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症 | Minds
日本消化管学会作成の公式ガイドライン全文がMindsで公開されており、詳細な診断・治療アルゴリズムを確認できます。

 

 




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