血液製剤一覧と種類および使用基準

血液製剤には赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤、血漿分画製剤などがあり、それぞれ異なる適応で使用されます。各製剤の特徴と使用基準を理解していますか?

血液製剤と種類

血液製剤の主な分類
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輸血用血液製剤

赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤、全血製剤の4種類に分類され、成分輸血が主流

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血漿分画製剤

アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤などに分類される

特定生物由来製品

全ての血液製剤は特定生物由来製品として厳格な管理が必要

血液製剤は人の血液またはその成分から製造される医薬品で、大きく輸血用血液製剤と血漿分画製剤の2つに分類されます。輸血用血液製剤には赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤、全血製剤があり、血漿分画製剤にはアルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤などが含まれます。現在では必要な成分のみを輸血する成分輸血が主流となっており、全血製剤の使用はほとんどありません。medicaleducation+3
血液製剤の使用目的は血液成分の欠乏または機能不全により臨床上問題となる症状に対して、その成分を補充して症状の軽減を図る補充療法です。各製剤は特定生物由来製品として位置付けられ、厳格な管理と適正使用が求められています。jcl+3

血液製剤の赤血球製剤の種類

 

 

赤血球製剤は血液から血漿、白血球、血小板の大部分を除去したもので、慢性貧血や外科手術時の輸血に使用されます。最も一般的に使用されるのは「照射赤血球液-LR」で、出血および赤血球の不足や機能低下による酸素欠乏の際に投与されます。貯蔵温度は2~6℃で、使用期限は採血後21日間と定められています。jrc+3
赤血球製剤には複数の種類があり、患者の病態に応じて使い分けられます。「照射合成血液-LR」はABO血液型不適合による新生児溶血性疾患に使用され、O型赤血球にAB型血漿を添加した特殊な製剤です。「洗浄赤血球液-LR」は血漿タンパクによる副作用を回避する必要がある場合に適応となります。jcl+3
赤血球製剤の使用基準については科学的根拠に基づいたガイドラインが作成されており、病態別のトリガー値が設定されています。周術期貧血ではHb値7~8g/dLをトリガー値とすることが推奨され、エリスロポエチン製剤や鉄剤治療を優先することが原則です。jstage.jst+3

血液製剤の血小板製剤の使用基準

血小板製剤は血小板数の減少または機能異常により重篤な出血または出血の予測される病態に対して使用されます。血小板輸血の適応は血小板数、出血症状の程度、合併症の有無によって判断されますが、安易に一律に輸血すべきではありません。onomichi-hospital+2
血小板輸血の目安として、血小板数5万/μL以上では一般的に不要、2~5万/μLでは止血困難な場合に必要、1~2万/μLでは重篤な出血時に必要、1万/μL未満では必要とされています。慢性に経過している血小板減少症で他に出血傾向を来す合併症がなく血小板数が安定している場合、5千~1万/μLでも重篤な出血を来すことはまれで、極力避けることが望ましいとされています。knowledge.nurse-senka+2
周術期においては手術の種類により推奨される血小板数が異なります。複雑な心臓大血管手術や長時間の人工心肺使用例では5万/μL以上、腰椎穿刺では5万/μL以上、頭蓋内手術など局所での止血が困難な特殊領域では10万/μL以上の維持が推奨されています。がん・造血器悪性腫瘍の化学療法や造血幹細胞移植における予防的血小板輸血のトリガー値は1万/μLとすることが推奨されています。jrc+2

血液製剤の新鮮凍結血漿の適応

新鮮凍結血漿(FFP)の使用目的は凝固因子欠乏による出血傾向の是正と、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)や溶血性尿毒症症候群(HUS)における血漿因子の補充です。FFPの投与は他に安全で効果的な血漿分画製剤やリコンビナント製剤がない場合にのみ適応となります。mhlw+2
FFPの使用にあたっては投与前にプロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を測定し、DIC等の大量出血ではフィブリノゲン値も測定する必要があります。PTは国際標準比率(INR)2.0以上、APTT延長時に凝固因子補充の適応となります。出血症状がなく観血的処置もない場合には通常FFPの予防的補充はしませんが、TTPとDICは例外です。jrc+2
新鮮凍結血漿の投与量は凝固因子の補充による治療的投与を主目的として算定されます。循環血漿量は理論的には8~12mL/kg(40mL/kgの20~30%)とされています。観血的処置時を除いて予防的投与の意味はないため、適切な使用基準の遵守が求められています。jstage.jst+3

血液製剤の血漿分画製剤の種類と用途

血漿分画製剤は血漿中のタンパク質を成分ごとに分離精製したもので、アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤、アンチトロンビンⅢ製剤、フィブリン糊製剤などに分類されます。これらの製剤はほかに代替品のない重篤な疾患に使用される場合が多く、適正な保管管理と適正使用に関する情報提供が重要です。pharm+2
アルブミン製剤はアルブミンが減少した場合や血漿量が少なくなった場合に使用され、むくみ、胸水、腹水などの改善効果や血圧を安定させる効果があります。免疫グロブリン製剤は感染症を改善する効果が認められるほか、免疫を調整し川崎病、特発性血小板減少性紫斑病、ギランバレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎を改善する効果があります。mhlw+2
血液凝固因子製剤は血友病などの凝固因子欠乏症に対して使用されます。日本における血友病治療ガイドラインでは、凝固因子製剤の適正使用と出血予防の重要性が示されています。血漿分画製剤の原料である血液の大部分は献血により供給されるため、国内自給と安定供給、適正使用について法的施策が講じられています。pmc.ncbi.nlm.nih+3

血液製剤の副作用とアレルギー反応

血液製剤の副作用には溶血性副作用と非溶血性副作用があり、アレルギー反応は輸血副作用の中で最も頻度が高い副作用です。発生頻度は赤血球製剤では0.5~1%、血小板製剤では約3~4%と報告されています。重篤なアナフィラキシーが起こることはまれですが、アレルギー反応への適切な対応が必要です。jrc+3
アレルギー反応の多くは血液製剤中の抗原と患者の肥満細胞上のIgEによる抗原抗体反応によって起こるⅠ型アレルギー反応です。アレルゲンとしてIgAやハプトグロビンなどの血漿タンパクが知られており、これらのタンパク欠損に起因するアナフィラキシー反応の症例報告が多数なされています。軽度のアレルギー反応では発熱、蕁麻疹、掻痒感などの症状が出現し、抗ヒスタミン薬や副腎皮質ステロイドの投与で軽快します。knowledge.nurse-senka+4
アナフィラキシーショックの重症例では呼吸困難、血圧や意識レベルの低下が生じ、場合によっては死に至ることがあります。アナフィラキシーの場合にはアドレナリンの筋注(成人の場合0.3mg)を速やかに投与する必要があります。アレルギー性副作用歴がない患者に対しては輸血前に抗ヒスタミン剤を投与することは推奨されませんが、頻回のアレルギー性副作用歴がある患者では予防投与が検討されます。gungoyu+4
血液製剤によるアナフィラキシーは過小報告されている可能性があることが研究で示されており、適切な副作用報告と対応体制の整備が重要です。非溶血性輸血副作用には他に輸血関連急性肺障害(TRALI)、輸血関連循環負荷(TACO)、発熱反応、輸血後紫斑病、移植片対宿主病(GVHD)などが含まれます。jstage.jst+3

血液製剤の安全対策と管理

血液製剤は特定生物由来製品として厳格な安全対策が求められており、外来性感染因子に関連する安全性の確保が特に重要です。「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(血液新法)により、国内自給と安定供給、適正使用について施策が講じられています。mhlw+2
血液製剤の使用にあたっては、治療効果とリスクを十分に理解し、使用前に患者への詳細な説明と同意が必要です。感染症やアレルギー反応のリスクが含まれるため、使用後も定期的な検査とフォローアップが求められます。輸血用血液製剤には血液凝固の抑制や血液成分の機能を維持するために保存液が含まれており、各製剤の保存条件と使用期限を遵守する必要があります。yuketsu.jstmct+4
血液製剤の需要は増加傾向にあり、供給量確保に向けた献血の推進が重要な課題となっています。医療従事者は血液製剤の適正使用ガイドラインを遵守し、不必要な使用を避けることで限られた血液資源を有効活用することが求められています。各医療機関では輸血チーム医療の推進により、安全で適正な輸血療法の実施体制を整備することが推奨されています。mhlw+4
日本血液製剤機構や日本赤十字社などの製造・供給機関では、ウイルス不活化処理血漿を原料に用いた新しい製剤の開発や、凍結保存が不要で緊急輸血に使用可能な乾燥血漿の研究が進められています。これらの技術革新により、災害時や緊急時における血液製剤の供給体制の強化が期待されています。mol.medicalonline+1

 

 




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