汎血球減少は、血液中の赤血球・白血球・血小板の3種類すべてが同時に減少する血液疾患です。各血球の減少により、それぞれ特有の症状が複合的に現れることが特徴です。medicalnote+1
赤血球の減少は貧血を引き起こし、全身の酸素運搬能力が低下することで様々な症状が現れます。疲労感や倦怠感は最も一般的な症状で、体内組織への酸素供給が不十分になることが原因です。労作時の息切れや動悸、めまい、立ちくらみ、頭重感などの症状も特徴的です。皮膚や粘膜が蒼白化し、冠動脈疾患がある場合には狭心痛を伴うこともあります。一般的な貧血症状は疲労と労作時呼吸困難感ですが、急性失血の場合には蒼白、頻脈、血圧低下などを伴うことがあります。maruoka+3
白血球、特に好中球の減少は免疫系の機能低下を招き、感染症に対する抵抗力が著しく低下します。そのため、発熱が持続的または断続的に現れることが多く、悪寒や震えを伴うこともあります。咽頭痛や口内炎は、口腔内粘膜の防御機能低下による炎症で、普段なら軽微で済むはずの感染が重症化しやすい状態になります。白血球減少により感染症が起こりやすく、発熱、口内炎、倦怠感が生じることが特徴です。重症の場合、肺炎や敗血症など命にかかわる感染症に進展する可能性もあります。shinyuri-hospital+4
血小板の減少は出血傾向の増加をもたらし、軽微な外傷でも止血が困難になることがあります。紫斑は皮膚や粘膜に現れる出血斑で、点状出血は針先大の小さな皮下出血として観察されます。鼻出血が自然発生的に起こることや、歯磨き時などに歯肉出血が生じることも特徴的です。内出血(あざ)や月経過多なども起こしやすくなり、ぶつけやすさや易出血性が目立つようになります。medicalnote+2
汎血球減少では、体重減少、食欲不振、発汗の増加、易感染性(感染しやすい状態)などの全身症状が観察されることがあります。これらの症状は体内の血球バランスが崩れることによる全身への影響を反映しており、患者の生活の質を大きく低下させる可能性があります。maruoka
医療従事者として注目すべき点は、汎血球減少の症状は原因疾患によって出現パターンが異なることです。例えば、再生不良性貧血では徐々に症状が進行するのに対し、急性白血病では急激に症状が悪化します。また、脾機能亢進による汎血球減少では脾腫を伴うことが多く、発熱やリンパ節腫大を伴う場合はウイルス感染症やリンパ増殖性疾患、血球貪食性リンパ組織球症を疑う必要があります。患者の症状パターンを詳細に観察することで、原因疾患の推定が可能になり、早期診断につながる重要な情報となります。himeji.jrc
汎血球減少は骨髄でうまく血球が作れなくなる、あるいは血球の消費・破壊が進むことによって起こります。血球の産生低下につながる病気として、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、急性白血病、悪性リンパ腫の骨髄浸潤、がんの骨転移、ビタミン欠乏症などが挙げられます。血球の消費・破壊亢進につながる病気として、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、肝硬変、特発性門脈圧亢進症、血球貪食症候群などがあります。mhlw+1
骨髄機能の低下は汎血球減少の主要な原因で、骨髄は体内で血液細胞を生成する重要な組織であり、機能が低下するとすべての血球の産生が減少します。機能低下は加齢や栄養不良、がん治療で用いられる化学療法や放射線療法の影響によって起こります。一部の薬剤は血球産生を抑制する副作用を持つことがあり、抗生物質(クロラムフェニコール)、抗てんかん薬(カルバマゼピン)、抗甲状腺薬(プロピルチオウラシル)などが代表的です。maruoka
自己免疫疾患は体の免疫系が正常な細胞を誤って攻撃してしまう病態で、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、重症筋無力症などが汎血球減少の原因となります。特定の感染症が直接的または間接的に血球産生に影響を与えることもあり、HIVは免疫系の中心的な役割を果たすT細胞を攻撃し、B型肝炎は免疫反応による血球破壊を引き起こします。maruoka
銅欠乏症が汎血球減少症、徐脈、神経症状を呈することがあるため、鑑別診断として重要です(日本臨床血液学会誌)
汎血球減少の診断では、まず病歴聴取を行い、患者の症状、既往歴、家族歴、薬剤使用歴、職業歴などを詳細に聞き取ります。血液検査は最も基本的な検査で、完全血球計算(CBC)を実施し、赤血球、白血球、血小板の数を正確に測定して各血球成分の減少の程度を把握します。末梢血塗抹標本(血液を薄くスライドガラスに引き延ばしたもの)の顕微鏡検査も行い、血球の形態異常や未熟細胞の有無を確認します。maruoka
血液検査で確認する項目は、赤血球数(貧血の程度、正常値は男性450-550万/μL、女性380-480万/μL)、白血球数(減少の程度と分画、正常値4,000-9,000/μL)、血小板数(減少の程度、正常値15-35万/μL)です。末梢血塗抹標本では形態異常や芽球(未熟な血球)の有無を確認することで、単に血球の数を数えるだけでなく、質や異常の有無を見極めることが可能です。maruoka
芽球や幼弱な細胞の増加は急性白血病や骨髄異形成症候群を、異常な細胞は悪性リンパ腫を、異型リンパ球はウイルス感染症を疑う重要な所見となります。ビタミンB12や葉酸が低値の場合は巨赤芽球性貧血の可能性があります。rhumamoto
血液検査で汎血球減少が確認された場合、次のステップとして骨髄検査を行うことが多いです。骨髄穿刺(骨髄液を吸引する検査)や骨髄生検(骨髄の一部を採取する検査)を通じて骨髄の細胞を直接採取し、顕微鏡で観察します。骨髄検査では、腸骨から採取した骨髄組織を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無や造血の状態などを確認します。medicalnote+1
骨髄検査で得られる情報は、骨髄中の造血細胞(血液を作る細胞)の量と質、異常細胞(腫瘍細胞など)の有無、造血を妨げる要因(線維化など)の存在です。骨髄が低形成であれば再生不良性貧血、そうでなければ骨髄異形成症候群、発作性夜間血色素尿症、巨赤芽球性貧血などを考えます。骨髄穿刺がdry tap(骨髄液が採取できない状態)であった場合は、骨髄生検が必須です。igaku-shoin+2
汎血球減少の鑑別診断では、非骨髄疾患と骨髄疾患を区別することが重要です。非骨髄疾患には、脾腫(肝硬変・門脈圧亢進症・リンパ腫・サルコイドーシス)、感染症、全身性エリテマトーデス、播種性血管内凝固(DIC)が含まれます。骨髄疾患には、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群が含まれます。igakukotohajime
診断の精度を高めるため、必要に応じて追加の検査を行います。ビタミンB12や葉酸の血中濃度測定、自己抗体検査、ウイルス検査などが実施されます。画像検査(CT、MRI)を行い、リンパ節腫大や他の臓器異常の有無を確認することもあります。画像検査は、汎血球減少の原因になる可能性のある全身疾患や腫瘍性疾患を見つけるのに必要です。maruoka
問診で自覚症状や基礎疾患、内服薬をチェックすることも重要で、発熱や喉の痛みはウイルス感染症を、発熱・関節痛・皮疹・口内炎などは全身性エリテマトーデスや混合性結合組織病を、目や口の乾きはシェーグレン症候群を疑う所見となります。B型・C型肝炎の既往やアルコール多量摂取は肝硬変を、がんの治療中であれば抗がん剤や放射線療法の影響を考慮します。rhumamoto
再生不良性貧血は汎血球減少を呈する代表的な指定難病で、診断基準と治療法が確立されています(難病情報センター)
病歴聴取に続いて、全身の身体診察を行います。特に注目するのが、貧血のサイン(皮膚や粘膜の蒼白)、出血傾向(点状出血、紫斑)、感染症の徴候(発熱、リンパ節腫脹)です。肝臓や脾臓の腫大の有無も調べ、皮膚・粘膜では蒼白や出血斑を、リンパ節では腫脹や圧痛を、腹部では肝脾腫大を確認します。maruoka
脾機能亢進症では、最大で赤血球の3割、白血球の6割、血小板の9割が脾臓に捕捉されることがあります。発熱、リンパ節腫大、肝脾腫はウイルス感染症、リンパ増殖性疾患、血球貪食性リンパ組織球症を示唆する所見です。himeji.jrc
汎血球減少症の治療は、原因疾患の特定と薬物療法の組み合わせにより、3ヶ月から1年程度の期間で症状の改善を目指します。原因疾患が特定されたら、それぞれの病気に対する治療を行います。再生不良性貧血(骨髄の造血機能が低下する病気)では免疫抑制剤や造血促進剤が、白血病(血液細胞のがん)では抗がん剤や分子標的薬が、骨髄異形成症候群(血液細胞の成熟障害を伴う病気)では脱メチル化剤や造血促進剤が処方されます。medicalnote+1
薬剤が原因の場合には、疑わしい薬剤を中止して血液細胞が回復するか慎重に観察します。抗菌薬やNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)、向精神薬などが原因薬剤として知られています。再生不良性貧血の副作用報告がある医薬品については、投薬中は4週間に1回、定期的に白血球分画を含めた血液検査を実施することが望ましいとされています。pmda+1
薬物療法と並行して、患者の全身状態を維持するための支持療法も欠かせません。支持療法の内容は、輸血療法(赤血球輸血、血小板輸血)、感染症予防(抗生物質の予防投与)、栄養サポート、出血リスク管理です。支持療法は単に症状をやわらげるだけでなく、治療の効果を最大限に引き出す役割も担っています。maruoka
輸血療法は重度の貧血や血小板減少に対して必要となる場合があり、1回あたり20,000円〜50,000円程度の費用がかかります。感染症対策の抗生物質は月額で10,000円〜50,000円です。好中球の数が著しく低下している場合、重症感染症を引き起こす危険性が高まり、治療中は感染予防策が欠かせません。maruoka
血液がんと再生不良性貧血では造血幹細胞移植が必要なケースもあります。重症例や特定の原因疾患では造血幹細胞移植が選択されることがあり、この治療法は根治的な効果が期待できる一方で、重篤な合併症のリスクも高い治療法です。移植直後には生着不全や感染症のリスクがあり、移植した細胞が機能しなかったり免疫力低下による感染が起こる可能性があります。medicalnote+1
中長期的には移植片対宿主病(GVHD)や二次性悪性腫瘍のリスクがあり、GVHDはドナーの細胞が患者の体を攻撃する病態で、患者の体に大きな負担をかける合併症です。長期的な観点では、特定の治療法により二次性悪性腫瘍(治療後に新たに発生するがん)のリスクが上昇する可能性があり、アルキル化剤や放射線療法の使用歴がある患者では骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病の発症リスクが高まるとされています。maruoka
汎血球減少症の治療期間は、原因疾患や治療への反応性によって異なります。急性期(1〜3ヶ月)では原因特定と初期治療を行い、維持期(3ヶ月〜1年)では薬物療法の継続と経過観察を実施します。長期フォローアップ(1年以上)では定期検査と再発予防を継続します。治療を継続することで、多くの患者が3〜6ヶ月程度で血球数の回復傾向を示し始めますが、完全な回復には時間がかかることも多いです。maruoka
免疫抑制剤の月額費用は30,000円〜100,000円、造血促進剤は50,000円〜200,000円、抗がん剤は100,000円〜500,000円程度です。診断時の血液一般検査は1,000円〜3,000円、骨髄穿刺・生検は20,000円〜50,000円、遺伝子検査は50,000円〜200,000円が目安となります。maruoka
汎血球減少症の治療では、薬物療法、輸血療法、造血幹細胞移植のそれぞれに特有の副作用やリスクがあります。免疫抑制剤の使用は感染症にかかるリスクを高める傾向があり、予防的抗生物質の使用や消化器症状への対症療法が必要です。造血促進剤では血栓症や高血圧のリスクがあり、定期的な血圧測定や抗凝固療法の検討が行われます。maruoka
輸血療法のリスクとして、輸血関連急性肺障害(TRALI)、輸血後鉄過剰症、アレルギー反応、感染症伝播(HIVやB型・C型肝炎)があります。頻回の輸血を要する患者では鉄過剰症に注意が必要で、血小板減少に伴う出血リスクは治療中も継続的な注意が必要です。侵襲的な処置や手術を行う際には、血小板輸血などの対策を行います。maruoka
再生不良性貧血の診断と検査について、製薬企業による医療従事者向け詳細情報が参照できます(協和キリン)

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