テトラカインは力価の強い局所麻酔薬であり、副作用も強力であるため注意が必要です。重大な副作用として最も警戒すべきはショック症状で、血圧降下、顔面蒼白、脈拍の異常、呼吸抑制などが出現します。これらの初期症状が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な救急処置が必要となります。pmda+2
中枢神経障害も重篤な副作用の一つで、振戦や痙攣などの中毒症状が発現することがあります。このような症状が現れた際には、直ちに投与を中止し、ジアゼパムまたは超短時間作用型バルビツール酸製剤(チオペンタールナトリウム等)の投与などの適切な処置が求められます。局所麻酔薬中毒では、眠気、興奮、眩暈、嘔気・嘔吐、振戦、痙攣などの症状を呈し、適切な処置を施さなければ循環破綻ならびに呼吸停止に至る可能性があります。anesth+1
PMDA医薬品医療機器情報提供ホームページ:テトラカイン塩酸塩の添付文書情報
その他の副作用として、眠気、不安、興奮、霧視、眩暈、悪心・嘔吐などの中枢神経症状、蕁麻疹や浮腫などの過敏症状が報告されています。メトヘモグロビン血症を引き起こす可能性も指摘されており、特にプリロカインなどのアミド型局所麻酔薬で多いとされていますが、エステル型でも報告があります。oralstudio+2
脊髄くも膜下麻酔における最も深刻な合併症の一つが馬尾症候群です。馬尾症候群は下肢の運動・知覚障害、会陰部の知覚障害、直腸膀胱障害、発汗調節障害などを呈します。テトラカインによる馬尾症候群の発症率は1万~5万分の1と報告されていますが、薬剤の神経毒性による重大な後遺症を残す可能性があります。kochi-u+2
2001年のViannaらの報告では、テトラカイン製剤の濃度が規定の20mgではなく24mg(20%増)であった製造ミスにより、9症例中6例に馬尾症候群が発症し、20年間後遺症が不変のままであったとされています。この報告から、脊髄くも膜下麻酔では薬剤の濃度や量と神経障害には密接な関連性があり、許容量を超えると誰にでも重大な神経障害を起こす可能性があることが示されました。テトラカインによる馬尾症候群の症例報告は近年も散見されており、その神経毒性には十分な注意が必要です。nanbyo-study+2
日本麻酔科学会:局所麻酔薬使用ガイドライン(PDF)
テトラカインはエステル型局所麻酔薬に分類され、その代謝経路はアミド型とは大きく異なります。エステル型局所麻酔薬は主に血漿中のコリンエステラーゼ(血清エステラーゼ)により加水分解され、パラアミノ安息香酸とアルキルエタノールアミンに代謝されます。対照的にアミド型局所麻酔薬は肝ミクロソームで分解されます。chugaiigaku+3
テトラカインの代謝産物であるパラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチルは、カルボキシエステラーゼによる代謝を受けることが研究されています。テトラカインは血漿エステラーゼにより分解されにくい性質を持ち、プロカインと比較して作用発現時間は遅く、作用時間は長い特徴があります。www-yaku.meijo-u+2
| 薬理学的特性 | テトラカイン | プロカイン |
|---|---|---|
| 相対力価 | 16(プロカインの約10倍) | 1 |
| タンパク結合率 | 76-85% | 6% |
| 作用時間 | 長い | 短い |
| pKa | 8.5-8.6 | 9.1 |
| 脂溶性(分配係数) | 80-221 | 1.7 |
テトラカインの脂溶性の高さ(分配係数80-221)は、その強力な麻酔効力と長い作用持続時間に関連しています。脂溶性が高いほど力価が高く、タンパク結合が強いほど持続時間が長くなるという原則が当てはまります。kochi-u+1
テトラカインには重篤な副作用のリスクがあるため、使用に際して厳密な禁忌事項が定められています。重篤な出血やショック状態の患者には投与を避けるべきで、過度の血圧低下が起こる危険性があります。注射部位またはその周辺に炎症がある患者では、化膿性髄膜炎症状を起こすリスクがあり禁忌です。vet.cygni+2
敗血症の患者では敗血症性の髄膜炎を起こす可能性があるため投与してはいけません。本剤の成分またはアミド型局所麻酔薬に対して過敏症の既往歴がある患者も禁忌とされています。中枢神経系疾患(髄膜炎、灰白脊髄炎、脊髄ろう等)の患者では、脊椎麻酔により症状が悪化する恐れがあります。脊椎に結核、脊椎炎、転移性腫瘍などの活動性疾患がある患者も同様に禁忌です。carenet+2
慎重投与が必要な患者として、脊柱管狭窄または外傷性の脊柱変形のある患者では神経障害が現れる可能性があります。高齢者、妊産婦、若年者では麻酔範囲が広がりやすいという報告があり、投与量の減量を考慮するとともに全身状態の観察を十分に行う必要があります。m3+1
テトラカインの最大安全使用量は脊髄くも膜下麻酔で20mgとされており、これを超えて投与しないことが重要です。一般的に低位脊髄くも膜下麻酔では10mg程度、高位脊髄くも膜下麻酔では12~16mg程度が使用されます。アドレナリンを添加した場合の最大安全使用量は150mgまで増量可能ですが、脊髄くも膜下麻酔では慎重な用量設定が求められます。anesth+4
テトラカインは粉末結晶20mgを溶解して脊髄くも膜下麻酔に使用するのが一般的です。溶媒の量や比重を変えることで種々の濃度や比重の溶液を調製でき、0.1~1.0%の濃度で使用されます。4mL以上の溶液(5~10%ブドウ糖溶液、生理食塩水、脳脊髄液、蒸留水、局所麻酔薬)に溶かして通常0.5%以下の濃度で使用します。anesth+1
異常エステラーゼの患者や血清エステラーゼの減少している患者では、テトラカインの代謝が遅延するため注意して投与する必要があります。貧血、低栄養、肝機能・腎機能障害のある患者では、使用する局所麻酔薬の濃度、使用量には十分配慮し、過量投与を避けるべきです。anesth+1
日本麻酔科学会:局所麻酔薬の最新使用ガイドライン(PDF)
抗凝固薬使用中の患者に対しては、針刺入部の圧迫止血に十分配慮する必要があります。投与部位によっては血腫による神経障害などのリスクを伴う場合があり、そのような患者に対して局所麻酔薬を使用する際には抗凝固薬の使用を中断し、作用が消失してから使用することが推奨されます。anesth+1
高齢者ではテトラカインの使用に特別な注意が必要です。一般に高齢者では生理機能が低下しており、副作用が発現しやすい傾向があります。高齢者では麻酔範囲が広がりやすく、仰臥位性低血圧を起こしやすいため、患者の状態を観察しながら慎重に投与することが求められます。投与量の減量を考慮するとともに、患者の全身状態の観察を十分に行う必要があります。anesth+2
妊婦または妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すべきです。妊娠中の投与に関する安全性は確立していないためです。妊娠後期の患者には、投与量の減量を考慮するとともに、十分に患者の全身状態の観察を行うなど慎重に投与することが重要です。m3+1
妊娠末期は仰臥位性低血圧を起こしやすく、麻酔範囲が広がりやすい特徴があります。麻酔中は特に母体の血圧、心拍数、呼吸状態を継続的にモニタリングし、胎児の状態にも注意を払う必要があります。若年者でも一般に麻酔範囲が広がりやすいので、投与量の減量を考慮するとともに、患者の全身状態の観察を十分に行うことが推奨されます。m3+1
テトラカインは2000年にブピバカインが脊髄くも膜下麻酔に認可されるまで、日本においては脊髄くも膜下麻酔の主力薬剤でした。しかしながら、力価の強さと副作用の強さから用途は限られており、主に脊髄くも膜下麻酔に使用されてきました。2023年5月に日本での製造販売中止が発表され、2024年3月に流通在庫切れとなる見込みとなりました。wikipedia
この製造販売中止により、日本における脊髄くも膜下麻酔の適応薬剤はブピバカイン一択となる状況になっています。ブピバカインはアミド型局所麻酔薬であり、テトラカインとは異なる代謝経路を持ちます。臨床試験では、ブピバカインによる脊髄くも膜下麻酔はテトラカイン塩酸塩と比べて平均動脈圧が有意に低下したという報告もあります。wikipedia+2
欧米では脊髄くも膜下麻酔における局所麻酔薬の選択肢が多様化しています。プリロカインや2-クロロプロカインが外来手術における脊髄くも膜下麻酔の第一選択薬として推奨されており、運動・感覚ブロックの予測可能な消退時間と低い有害事象発生率が評価されています。リドカインは一時期広く使用されていましたが、一過性神経症状(TNS)の発生率が高いことから使用が制限されています。pmc.ncbi.nlm.nih
🔍 知っておくべき重要なポイント:
テトラカイン使用時には、常に救急処置の準備を整えておくことが必須です。まれにショックあるいは中毒症状を起こすことがあるため、局所麻酔薬の使用に際しては、直ちに救急処置がとれる体制が望ましいとされています。ショック症状が出現した場合、初期症状として血圧低下、顔面蒼白、脈拍の異常、呼吸抑制などがみられます。pins.japic+2
局所麻酔薬中毒の症状として、眠気、興奮、眩暈、嘔気・嘔吐、振戦、痙攣などが現れます。これらの中毒症状に対しては、適切な処置を施さなければ循環破綻ならびに呼吸停止に至る可能性があるため、迅速な対応が求められます。中枢神経障害として振戦、痙攣等の中毒症状があらわれた場合には、直ちに投与を中止し、ジアゼパムまたは超短時間作用型バルビツール酸製剤(チオペンタールナトリウム等)の投与等の適切な処置を行います。anesth+1
血圧管理も重要な要素です。脊髄くも膜下麻酔では交感神経ブロックにより血圧低下が起こりやすく、特に妊娠末期の患者や高齢者では仰臥位性低血圧のリスクが高まります。昇圧薬や輸液の準備を含めた循環管理の準備が必要です。anesth+2
メトヘモグロビン血症は稀ですが重要な副作用です。メトヘモグロビン濃度は投与後1時間ぐらいから上昇をはじめ、2-3時間で最高値に達します。メトヘモグロビン量が総ヘモグロビン量の30%を超えると低酸素症状が出現するため、チアノーゼや呼吸状態の観察が重要です。oralstudio+1
📊 副作用発生時の対応プロトコル:
| 副作用の種類 | 初期症状 | 対応 |
|---|---|---|
| ショック | 血圧低下、顔面蒼白、脈拍異常、呼吸抑制 | 直ちに投与中止、昇圧薬投与、酸素投与、輸液 |
| 中枢神経障害 | 振戦、痙攣、眠気、興奮、眩暈 | 投与中止、ジアゼパムまたはチオペンタール投与 |
| 馬尾症候群 | 下肢の運動・知覚障害、会陰部知覚障害、膀胱直腸障害 | 神経学的評価、専門医へのコンサルテーション |
| メトヘモグロビン血症 | チアノーゼ、低酸素症状(濃度30%超で出現) | メチレンブルー投与、酸素療法 |
過去に局所麻酔薬を使用した際に、ショックや中毒症状など何らかの異常反応の既往がある場合には、その原因について十分調査する必要があります。貧血、低栄養、肝機能・腎機能障害のある患者では、使用する局所麻酔薬の濃度、使用量には十分配慮し、過量投与を避けることが重要です。anesth+1

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