アイトロール フランドル 違い|作用や効能の比較

アイトロールとフランドルは同じ硝酸薬でも成分や特徴が異なります。一硝酸イソソルビドと硝酸イソソルビドの違いを知っていますか?

アイトロール フランドル 違い

💊 アイトロールとフランドルの主な違い
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有効成分の違い

アイトロールは一硝酸イソソルビド(ISMN)、フランドルは硝酸イソソルビド(ISDN)を含有。ISMNはISDNの活性代謝物です。

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剤形と持続性

アイトロールは素錠で有効成分自体に持続性があり、フランドルは徐放錠として製剤化されています。

バイオアベイラビリティ

アイトロールは約100%、フランドルは約7%のバイオアベイラビリティを示し、個人差が異なります。

アイトロールとフランドルは、いずれも狭心症治療に用いられる長時間作用型の硝酸薬ですが、有効成分の構造や体内動態に明確な違いがあります。アイトロール錠の有効成分は一硝酸イソソルビド(ISMN)で、構造中に硝酸基が1つ付いているのに対し、フランドル錠の有効成分は硝酸イソソルビド(ISDN)で、硝酸基が2つ付いています。ISMNはISDNの活性代謝物の1つであり、ISDNが肝臓で代謝されることで生成される物質です。
参考)公益社団法人 福岡県薬剤師会 |質疑応答

両剤の剤形にも違いがあります。アイトロール錠は素錠で、有効成分自体に持続性があるため、製剤学的な工夫なしに1日2回の投与で効果を発揮できます。一方、フランドル錠は徐放錠として設計されており、溶出時間の異なる顆粒をバランスよく組み合わせて錠剤化することで、持続的な効果を実現しています。アイトロール錠は粉砕が可能ですが、フランドル錠は徐放性を維持するためかまずに服用する必要があります。
参考)https://www.phamnote.com/2017/04/blog-post_9.html

アイトロールの初回通過効果と個人差

 

アイトロール(一硝酸イソソルビド)の最大の特徴は、肝臓での初回通過効果を受けにくいことです。一硝酸イソソルビドは、他の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤に比べて脱ニトロ化を受けにくいため、肝臓での代謝の影響が少なく、バイオアベイラビリティは約100%に達します。この特性により、血漿中濃度の個人差が小さく、変動係数がフランドルと比べてすべての項目で小さくなることが確認されています。
参考)【Q】アイトロール (一硝酸イソソルビド) とフランドル (…

初回通過効果を受けにくいことにより、一硝酸イソソルビドは消失半減期が長くなり、製剤の工夫をしなくても1日2回の投与で7時間以上の持続的な効果が得られます。また、食事内容の影響を受けにくいという利点もあります。血中濃度のばらつきが少ないため、患者間での治療効果の予測がしやすく、用量調整が容易です。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062343.pdf

アイトロール錠の二重盲検比較試験では、フランドル錠20mg 1日2回投与を対照として、アイトロール錠20mg 1日2回投与の有効性が検討されました。その結果、両剤は同等の効果を示しましたが、改善率を見るとアイトロールが55%、フランドルが35%と、アイトロールのほうがやや高い傾向が認められています。​

フランドルの代謝特性と作用強度

フランドル(硝酸イソソルビド)は、構造中に2つの硝酸基を持つため、体内で脱ニトロ化による代謝を受けやすい特徴があります。ニトログリセリンなどと比較すると初回通過効果を受けにくい薬剤ですが、一硝酸イソソルビドと比べると肝臓での代謝の影響を強く受け、バイオアベイラビリティは約7%にとどまります。このため、肝臓での代謝具合によって血中濃度が大きく左右され、個人差が出やすい傾向があります。
参考)医療用医薬品 : フランドル (フランドル錠20mg)

硝酸イソソルビドの生理活性は、一硝酸イソソルビドと比較して約2.5倍強いことが知られています。つまり、硝酸イソソルビド:一硝酸イソソルビド=2.5:1の比率で、フランドルのほうが2倍近く強い薬理作用を持ちます。しかし、半減期は一硝酸イソソルビドより短いものの、作用持続時間は8時間となっており、一硝酸イソソルビドの7時間以上と大きな差はありません。​
フランドル錠は、溶出時間の異なる顆粒を組み合わせた徐放製剤として設計されており、経口投与後に安定した血中濃度を維持することができます。また、フランドルにはテープ製剤もあり、経皮吸収型として肝臓での初回通過効果を受けずに、24〜48時間にわたって安定した血漿中濃度を維持できる特徴があります。
参考)http://www.tsuruhara-seiyaku.co.jp/medical/member/if_pdf/i_o19a.pdf

アイトロール フランドル 効能適応の違い

アイトロールとフランドルの効能・効果にも違いがあります。アイトロール錠の適応症は「狭心症」のみですが、フランドル錠の適応症は「狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)、その他の虚血性心疾患」と、より広範囲の虚血性心疾患に対して使用できます。この違いは、両剤の承認時の臨床試験の範囲や開発経緯によるものです。​
用法・用量については、両剤とも成人に対して1回20mgを1日2回投与することが基本です。アイトロール錠は、年齢や症状により適宜増減でき、効果不十分な場合には1回40mg 1日2回まで増量可能です。特に、労作狭心症または労作兼安静狭心症で発作回数および運動耐容能の面で重症と判断された場合には、1回40mg 1日2回を投与できます。フランドル錠も年齢・症状により適宜増減可能ですが、かまずに服用する必要があります。​
両剤とも狭心症の発作寛解を目的とした急性期治療には不適であり、この目的のためには速効性の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤(舌下錠など)を使用する必要があります。アイトロールもフランドルも、あくまで狭心症発作の予防や長期管理に用いられる薬剤です。
参考)アイトロール錠20mgの基本情報(作用・副作用・飲み合わせ・…

アイトロール フランドル 副作用と注意点

アイトロールとフランドルは、同じ硝酸薬のクラスに属するため、副作用のプロファイルは類似しています。主な副作用として、頭痛(アイトロールでは13.4%)、めまい・ふらつき、動悸、血圧低下、熱感などの循環器系の症状が報告されています。その他、不眠、全身倦怠感胃もたれ、腹部膨満感、鼓腸、口内乾燥、嘔気などの症状が現れることがあります。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00003650.pdf

重大な副作用として、肝機能障害や黄疸が報告されており、AST、ALT、γ-GTPの上昇などを伴う肝機能障害があらわれることがあります。定期的な肝機能検査を行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置が必要です。まれに汎血球減少症やスティーヴンス・ジョンソン症候群などの重篤な副作用も報告されています。
参考)https://www.info.pmda.go.jp/fsearchnew/fukusayouMainServlet?scrid=SCR_LISTamp;evt=SHOREIamp;type=1amp;pID=2171023+++++amp;name=%EF%BF%BD%EF%BF%BD%3Famp;fuku=amp;root=1amp;srtnendo=2amp;page_max=100amp;page_no=0

両剤とも、ホスホジエステラーゼ5阻害薬(シルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィル)やグアニル酸シクラーゼ刺激薬(リオシグアト)との併用は禁忌です。これらの薬剤は、いずれもcGMPの産生促進または分解抑制を介して作用するため、併用により著しい血圧低下を引き起こす可能性があります。また、アルコール摂取により血管拡張作用が増強されるため、血圧低下等が増強されるおそれがあります。​

硝酸薬耐性と使い分けの実際

硝酸薬全般に共通する課題として、硝酸薬耐性(nitrate tolerance)の問題があります。硝酸薬を持続的に投与すると、数日間で薬剤の効果が減弱する耐性が生じることが知られています。実験的には、摘出血管を1時間ニトログリセリン溶液に浸すことで完全耐性を作ることができ、臨床でも意外と速く生じていると考えられます。ニトログリセリンのパッチ製剤では、24時間以内に耐性ができるという報告が多くあります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo1969/23/3/23_281/_pdf

硝酸薬耐性を予防する方法として、8〜12時間の無硝酸期間(休薬時間)を設けることが推奨されています。24時間から48時間休薬すると耐性は減弱することが知られており、間欠投与を行えば耐性が生じた場合でも硝酸薬の効果が復活するとされています。発作の起きやすい時間に合わせて、耐性を防ぎつつ発作予防に努めることが重要です。アイトロールもフランドルも1日2回投与のため、投与時間を工夫することで、ある程度の無硝酸期間を確保できます。
参考)抗狭心症薬 (medicina 55巻4号)

アイトロールとフランドルの使い分けについては、症状のコントロール状況や剤型の好みによって選択するのが一般的です。アイトロールは血漿中濃度の個人差が小さく、食事内容の影響を受けにくいため、より安定した血中濃度を必要とする患者に適しています。また、素錠で粉砕可能なため、嚥下困難がある患者にも使用しやすい利点があります。一方、フランドルは適応症が広く、心筋梗塞(急性期を除く)やその他の虚血性心疾患にも使用できるため、狭心症以外の虚血性心疾患を合併している患者に適しています。​
臨床試験においてアイトロール錠20mgとフランドル錠20mgの換算比は1:1と考えられており、同等の効果が示されています。ただし、硝酸イソソルビドのほうが生理活性が約2.5倍強いため、理論的にはフランドル錠のほうが強力な作用を持つと考えられますが、初回通過効果や個人差の影響により、臨床的には両剤は同等の効果を示すと評価されています。​
公益財団法人日本薬剤師会「硝酸薬のアイトロール錠とフランドル錠の違いは?」
両剤の薬理学的特性や臨床的な違いについて詳しく解説されています。医療従事者向けの専門的な情報が参照できます。

 

閉塞性動脈硬化症情報サイト「アイトロールとフランドルの違い」
臨床試験データに基づく両剤の比較情報が記載されており、換算比や特徴の違いについて理解を深めることができます。

 

トーアエイヨー医療関係者向けサイト「アイトロール錠 よくあるご質問」
アイトロール錠の特徴やフランドル錠との違いについて、メーカーによる公式な情報が提供されています。