副腎皮質ホルモン合成阻害薬の種類と一覧解説

副腎皮質ホルモン合成阻害薬には主にトリロスタンやミトタンがあり、原発性アルドステロン症やクッシング症候群の治療に用いられます。それぞれの特徴や適応を詳しく知りたくありませんか?

副腎皮質ホルモン合成阻害薬の種類と一覧

副腎皮質ホルモン合成阻害薬の概要
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トリロスタン(デソパン)

3β-hydroxysteroid脱水素酵素を特異的に阻害し、アルドステロンとコルチゾールの合成を抑制

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ミトタン

副腎皮質細胞毒作用とステロイド合成阻害作用を併せ持つ薬剤

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主な適応疾患

原発性アルドステロン症、クッシング症候群、副腎腺腫など

副腎皮質ホルモン合成阻害薬は、副腎皮質で産生されるホルモンの合成を阻害することで、ホルモン過剰による疾患を治療する薬剤です。現在臨床で使用される主要な薬剤にはトリロスタンとミトタンがあり、それぞれ異なる作用機序と適応を持っています。

 

副腎皮質ホルモン合成阻害薬トリロスタンの作用機序

トリロスタン(商品名:デソパン)は、副腎皮質ステロイドホルモン生合成過程における3β-hydroxysteroid脱水素酵素を特異的かつ競合的に阻害する薬剤です。この酵素阻害により、アルドステロンとコルチゾールの両方の合成が抑制されます。

 

トリロスタンの特徴的な点は以下の通りです。

  • 可逆的阻害:酵素阻害作用は可逆的であり、薬物濃度の低下とともに酵素活性が回復します
  • 特異性:3β-hydroxysteroid脱水素酵素に対して高い特異性を示します
  • 二重の効果アルドステロンとコルチゾールの両方の合成を阻害できます

この薬剤は1986年から日本で使用されており、トリロスタン60mgを含有する微黄白色の素錠として製剤化されています。分子式はC20H27NO3で、分子量は329.43です。

 

副腎皮質ホルモン合成阻害薬の適応疾患と効果

トリロスタンの主な適応疾患は以下の通りです。
原発性アルドステロン症(特発性アルドステロン症)
原発性アルドステロン症は、副腎皮質からのアルドステロン過剰分泌により高血圧と低カリウム血症を呈する疾患です。トリロスタンはアルドステロン合成を直接阻害することで、これらの症状を改善します。

 

クッシング症候群
クッシング症候群は、コルチゾールの過剰分泌により満月様顔貌、中心性肥満、高血糖などを呈する疾患です。トリロスタンはコルチゾール合成を阻害することで、これらの症状の軽減に寄与します。

 

臨床試験における有効率は以下の通りです。

  • 副腎腺腫:38%(6/16例)
  • クッシング病:35%(17/49例)
  • その他の疾患:30%(3/10例)
  • 全体:35%(26/75例)

動物実験では、ラットにおける低ナトリウム食およびACTH誘発の血中アルドステロンとコルチコステロンの上昇を有意に抑制し、モルモットでのACTH誘発血中コルチゾール上昇も有意に抑制することが確認されています。

 

副腎皮質ホルモン合成阻害薬の副作用と安全性

トリロスタンの副作用発生率は15.5%(46/296例)と報告されており、主な副作用は以下の通りです。
消化器症状(7.4%)

  • 悪心・嘔吐
  • 食欲不振
  • 胃・腹部不快感
  • 胸やけ

肝機能異常(4.1%)

  • AST(GOT)・ALT(GPT)の上昇
  • ALP・γ-GTPの上昇

過敏症状(3.7%)

  • 発疹・紅斑
  • 潮紅
  • そう痒感

これらの副作用は比較的軽微であり、多くの場合は投与継続が可能です。ただし、異常が認められた場合には投与中止や適切な処置が必要です。

 

禁忌事項
妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与禁忌です。また、高齢者に対しては減量するなど注意が必要で、一般に生理機能が低下していることを考慮する必要があります。

 

副腎皮質ホルモン合成阻害薬ミトタンとの併用注意

ミトタンは副腎皮質細胞毒作用とステロイド合成阻害作用を併せ持つ薬剤で、トリロスタンとの併用には注意が必要です。

 

併用時の注意点:

  • 副腎皮質機能抑制作用の増強が見られることがある
  • ミトタンの細胞毒性により、相乗的な副腎機能抑制が起こる可能性
  • 併用する場合は慎重な経過観察が必要

ミトタンは主に副腎癌の治療に使用される薬剤ですが、その作用機序がトリロスタンと一部重複するため、併用時には副腎皮質機能の過度な抑制に注意が必要です。

 

この薬物間相互作用は、両薬剤が副腎皮質ホルモン合成に影響を与えるメカニズムが異なるものの、最終的な効果が重複することによるものです。

 

副腎皮質ホルモン合成阻害薬の臨床における位置づけと将来展望

副腎皮質ホルモン合成阻害薬は、副腎皮質ホルモン過剰症の治療において重要な役割を果たしています。従来の外科的治療と比較して、低侵襲性と可逆性という利点を持ちます。

 

臨床での位置づけ:

  • 手術適応外の症例における第一選択薬
  • 手術前の術前管理での使用
  • 手術後の補助療法としての活用
  • 高齢者や合併症のある患者での安全な選択肢

治療戦略における考慮点:
副腎皮質ホルモン合成阻害薬の選択にあたっては、患者の病態、年齢、合併症、治療目標を総合的に評価する必要があります。特に、ホルモン産生腫瘍の局在診断が困難な場合や、両側性病変が疑われる場合には、薬物療法が重要な選択肢となります。

 

今後の展望:
現在の副腎皮質ホルモン合成阻害薬は主にトリロスタンとミトタンに限られていますが、より選択的で副作用の少ない新規薬剤の開発が期待されています。また、個別化医療の観点から、遺伝子多型や薬物代謝酵素の個人差を考慮した投与量調整法の確立も重要な課題です。

 

さらに、副腎皮質ホルモン受容体拮抗薬との併用療法や、新しい標的分子を狙った治療法の開発も進んでおり、より効果的で安全な治療選択肢の拡大が期待されています。

 

トリロスタンの詳細な添付文書情報(JAPIC)