ゲムシタビンの薬剤費は患者さんの体表面積に基づいて算出されます。体表面積は身長と体重から計算され、投与量が個別に決定される仕組みです。2024年9月時点の薬価は、200mg製剤が1瓶あたり920円、1g製剤が4,195円となっています。
参考)ゲムシタビン塩酸塩(GEM)(ジェムザール) href="https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/gemcitabine-hydrochloride/" target="_blank">https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/gemcitabine-hydrochloride/amp;#8211;…
標準的な体格の患者さん(体表面積1.6㎡)の場合、1週間の投与で約6,955円の薬剤費が発生し、1ヶ月(3回投与・1週間休薬)では20,865円に達します。ただし、これらは薬剤費のみであり、実際の治療費には診察費、検査費用、入院費なども含まれることに留意が必要です。
参考)https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/pharmacy/pamph/2017/breast-medical/GEM_breast-medical_201711.pdf
体表面積による具体的な費用の違いを見ると、体表面積1.2㎡(身長145cm・体重35kg)では1回あたり16,937円、体表面積1.5㎡(身長160cm・体重50kg)では20,596円、体表面積1.8㎡(身長170cm・体重70kg)では25,022円となります。これらの金額は保険適用前の10割負担の金額であり、3割負担の場合はこの約3分の1が患者負担となります。
ゲムシタビンは多くのがん種で保険適用が認められている抗がん剤です。膵臓がん、胆道がん、非小細胞肺がん、乳がん、卵巣がんなどが主な適応疾患となっています。これらのがん種に対して、単独療法または併用療法として使用されます。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=58654
投与スケジュールは疾患や治療プロトコルによって異なりますが、一般的には4週間を1コースとして、週1回の投与を3週連続し、4週目は休薬する方法が採用されています。胆道がんや尿路上皮がんの一部では、3週間を1コースとして2週連続投与・1週休薬というスケジュールも用いられます。
参考)https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/pharmacy/010/pamph/bile_duct_cancer/010/bile_duct_cancer_010.pdf
膵臓がんに対してナブパクリタキセル(アブラキサン)と併用する場合、ゲムシタビン1000mg/㎡とアブラキサン125mg/㎡を1日目、8日目、15日目に投与し、22~28日目は休薬する4週間サイクルが標準的です。この併用療法は未治療の転移性膵臓がん患者に対して、ゲムシタビン単剤と比較して全生存期間を約2ヶ月延長することが示されています。
参考)https://pancan1.org/index.php?option=com_contentamp;view=articleamp;id=457%3A%E3%82%A2%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%AD%E3%82%B5%E3%83%B3%EF%BC%88abraxane%C2%AE%EF%BC%89%E3%81%AF%E3%80%81%E8%BB%A2%E7%A7%BB%E6%80%A7%E8%86%B5%E8%87%93%E3%81%8C%E3%82%93%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%AE%E5%85%A8%E7%94%9F%E5%AD%98%E6%9C%9F%E9%96%93%E3%82%92%E6%94%B9%E5%96%84%E3%81%99%E3%82%8Bamp;catid=89amp;Itemid=740
ゲムシタビンを他の抗がん剤と併用する場合、治療費は大きく増加します。ゲムシタビンとナブパクリタキセルの併用療法では、体表面積1.5㎡の患者さんで1回あたり約138,020円(10割負担)、3割負担で約41,406円の薬剤費が発生します。1コースで3回投与されるため、4週間あたりの薬剤費は約30万円以上に達することになります。
参考)https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/info/seminar/2018/0424/20180407_supportive.pdf
ゲムシタビンとシスプラチンの併用は胆道がんの標準治療として確立されており、費用対効果の分析も行われています。日本で実施されたコスト・エフェクティブネス分析では、ゲムシタビン単独療法の費用効用比が431,766円/QALMであったのに対し、S-1療法は137,192円/QALMと経済性の高さが示されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5660135/
国立がん研究センター中央病院では、術前のゲムシタビン静脈内投与およびナブパクリタキセル静脈内投与の併用療法を先進医療として実施しており、切除可能な膵臓がん(70歳以上80歳未満)を対象に580,932円の費用が設定されています。先進医療に該当する部分は全額自己負担となりますが、通常の治療と共通する部分は保険診療として扱われます。
参考)保険対象外の費用について
がん化学療法では医療費が高額になるため、高額療養費制度の活用が重要です。この制度は、医療機関や保険調剤薬局の窓口で支払った1ヵ月(暦月:1日から末日まで)分の医療費が一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超えた金額が給付される仕組みです。
参考)医療関係者の皆さま|高田製薬株式会社
70歳未満の方の自己負担限度額は所得区分によって異なり、年収約370~770万円の区分では約80,100円、多数該当(過去12ヶ月以内に3回以上高額療養費の支給を受けた場合)では44,400円となります。年収約770~1,160万円の区分では約167,400円、年収約1,160万円以上では約252,600円が月額の自己負担限度額となります。
70歳以上の方は外来と入院で異なる限度額が設定されており、一般所得者の場合は外来14,000円、入院57,600円(多数該当44,400円)となっています。高額療養費の申請は事後申請も可能ですが、事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、医療機関の窓口での支払いが自己負担限度額までとなり、申請手続きが不要になります。
参考)https://www.incytebiosciences.jp/sites/default/files/file/2025/patient_guidebook_202404.pdf
ゲムシタビン治療を受ける場合、1コースあたりの薬剤費が10万円を超えることも珍しくないため、この制度を活用することで実質的な負担を大幅に軽減できます。患者さんには治療開始前に加入している健康保険組合等に制度の詳細を確認するよう案内することが推奨されます。
参考)ゲムシタビン(ジェムザール)の費用(値段)と治療期間
ゲムシタビン治療における主な副作用は骨髄抑制であり、白血球減少72.6%、好中球減少69.2%、血小板減少41.4%、ヘモグロビン減少66.5%の発現頻度が報告されています。これらの副作用は投与開始から平均約2~3週間後に最低値を示し、約1週間で回復します。
参考)ジェムザール(ゲムシタビン)による骨髄抑制の発現頻度、発現時…
骨髄抑制が発現した場合、好中球を上げる薬剤であるフィルグラスチムやノイトロジンの投与が必要となることがあり、これらの支持療法にも費用が発生します。重度の骨髄抑制により治療を休薬したり投与量を減量したりする場合、治療期間が延長し、トータルの医療費に影響を及ぼす可能性があります。
参考)https://www.tobu.saiseikai.or.jp/docs/pdf/regimen/biliarytractcancer/002.pdf
ゲムシタビンの重大な副作用として間質性肺炎(発現頻度1.0%)があり、咳、息苦しさ、発熱などの症状が現れた場合は迅速な対応が必要です。その他の副作用として食欲不振や発疹などが報告されており、これらの症状に対する対症療法も治療費の一部を構成します。
参考)ゲムシタビン塩酸塩(ジェムザールⓇ)では、どのような副作用が…
副作用管理のための支持療法や検査費用も治療費全体に加算されるため、患者さんへの費用説明では薬剤費だけでなく、これらの関連費用についても情報提供することが重要です。ただし、高額療養費制度の対象には、これらの支持療法や検査費用も含まれるため、制度を適切に活用することで負担軽減が可能です。
参考)https://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/gairaichemo/manual-pdf/03_47.pdf
国立がん研究センターなどの医療機関では、相談支援センターで治療費に関する相談を受け付けており、患者さんに適切な制度利用を案内しています。
参考)https://www.tobu.saiseikai.or.jp/yakuzai2020/breastcancer/breastcancerbooklet/P%E3%80%90BRE015%E3%80%91GEM.pdf
国立がん研究センターのゲムシタビン療法の手引き(費用の詳細情報)
国立がん研究センターの患者支援情報(高額療養費制度の具体的な自己負担限度額)
呼吸器治療におけるゲムシタビン塩酸塩の薬価と処方期間による総額