ネオドパストンとメネシットは、どちらもレボドパとカルビドパの配合剤で、基本的な有効成分は同一です。配合錠L100(または配合錠100)の場合、レボドパ100mg、カルビドパ無水物として10mg(配合比10:1)を含有しています。配合錠L250(または配合錠250)では、レボドパ250mg、カルビドパ無水物として25mgが配合されており、同じく10:1の比率が維持されています。
参考)https://gifu-min.jp/midori/document/576/par1.pdf
有効成分の配合比は両製剤で完全に一致しているため、理論上は同等の薬理作用が期待されます。カルビドパはドパ脱炭酸酵素阻害薬(DCI)として、レボドパが末梢で代謝されるのを抑制し、脳内に移行するレボドパ量を増加させる役割を担っています。
参考)レボドパ・カルビドパの同効薬比較 - くすりすと
両製剤ともパーキンソン病およびパーキンソン症候群の治療に使用され、効能・効果は同一です。添加物については、メネシット配合錠には部分アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、青色2号が含まれています。
参考)https://organonpro.com/ja-jp/wp-content/uploads/sites/10/2024/02/if_menesit_tab.pdf
ネオドパストンとメネシットの薬価には明確な差があり、医療経済的な観点から重要な選択ポイントとなります。配合錠L100(または配合錠100)の場合、ネオドパストンは14.7円/錠、メネシットは10.5円/錠となっており、ネオドパストンの方が約40%高い薬価設定です。配合錠L250(または配合錠250)では、ネオドパストンが40.3円/錠、メネシットが29.2円/錠で、やはりネオドパストンの方が高価です。
参考)ジェネリック検索・サーチ
両製剤とも先発品として位置づけられており、後発品(ジェネリック医薬品)も複数存在します。後発品としては、ドパコール配合錠L100(8.1円/錠)、カルコーパ配合錠L100(11.3円/錠)、レプリントン配合錠L100(8.1円/錠)などがあり、先発品より経済的な選択肢となっています。
薬価の違いは製薬企業の価格戦略や製造コスト、開発経緯によるものと考えられますが、有効成分の配合比は同一であるため、薬効に直接的な差はありません。長期継続的な治療が必要なパーキンソン病では、薬価の差が患者負担に累積的に影響するため、医療従事者は患者の経済状況も考慮した処方選択が求められます。
参考)https://www.nihs.go.jp/drug/ecqaged/bluebook/r/o_Levodopa-Carbidopa_Tab_01.pdf
レボドパ・カルビドパ配合製剤とレボドパ・ベンセラジド配合製剤(マドパー)との比較において、血中濃度に関する興味深い知見が報告されています。健康成人男性における薬物動態試験では、同じレボドパ量を投与した場合、ベンセラジド製剤(マドパー)ではレボドパのAUC(血中濃度時間曲線下面積)がカルビドパ製剤(メネシット)の約2倍になることが示されています。
参考)パーキンソン病の薬一覧、パーキンソン病について
この差異は、カルビドパとベンセラジドという2種類のドパ脱炭酸酵素阻害薬(DCI)の薬理学的特性の違いに起因します。カルビドパを含むメネシットやネオドパストンでは、レボドパの血中濃度がベンセラジド製剤より低くなる傾向があり、同用量での切り替え時にマドパーからメネシット系製剤への変更では血中濃度が下がる可能性が指摘されています。
参考)【寿命を延ばすために】パーキンソン病の薬一覧│手術・最新治療…
この特性を臨床で活かす場面として、マドパーで効きすぎる患者(ジスキネジアなどの不随意運動が出現する患者)に対して、メネシット系製剤への変更が有効な選択肢となります。逆に、メネシットで効果不十分な場合は、より血中濃度が上がりやすいマドパーへの変更や、COMT阻害薬を含むスタレボへの切り替えが検討されます。
参考)https://www.mhlw.go.jp/topics/2012/03/dl/kigyoukenkai-258.pdf
臨床現場でネオドパストンとメネシットを選択する際の基準は、主に薬価、患者の治療歴、副作用プロファイルに基づいて判断されます。両製剤は成分配合比が同一であるため、理論的には同等の治療効果が期待できますが、実臨床では個別の患者特性に応じた使い分けが行われています。
薬価面では、メネシットの方が経済的であり、長期治療が必要なパーキンソン病患者にとって医療費負担軽減のメリットがあります。一方、ネオドパストンは歴史的に日本で使用されてきた実績があり、特定の施設や医師によって処方習慣として継続されているケースもあります。
添加物の違いにより、まれに患者によっては一方の製剤で副作用や過敏反応が生じる場合があり、そのような際には製剤変更が有効な対策となります。また、マドパー(レボドパ・ベンセラジド配合剤)からの切り替え時には、血中濃度の違いを考慮した用量調整が必要となる場合があります。
参考)公益社団法人 福岡県薬剤師会 |質疑応答
治療初期の患者では、薬価が低く処方しやすいメネシットが第一選択となることが多く、治療経過中に効果不十分やwearing off(薬効消失現象)が出現した場合には、COMT阻害薬を含むスタレボへの変更や、服薬回数の増加などの対応が検討されます。
参考)パーキンソン病のwearing-off(ウェアリング・オフ)…
ネオドパストンとメネシットは、パーキンソン病治療におけるレボドパ製剤の中でもカルビドパ配合タイプに分類されます。レボドパ製剤には大きく分けて、レボドパ単剤、レボドパ・カルビドパ配合剤(ネオドパストン、メネシット、ドパコール、カルコーパなど)、レボドパ・ベンセラジド配合剤(マドパー、イーシードパール)、そしてCOMT阻害薬も含むスタレボがあります。
参考)http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se11/se1169101.html
レボドパは脳内でドパミンに変換され、パーキンソン病の運動症状を改善する最も強力な薬剤ですが、末梢でDDC(ドパ脱炭酸酵素)やCOMT(カテコール-O-メチル基転移酵素)により代謝されてしまうため、単剤では脳内に到達する量がわずかです。そのため、末梢でのDDC阻害薬であるカルビドパやベンセラジドを配合することで、レボドパの必要量を約1/5に節減でき、悪心・嘔吐などの末梢性副作用も軽減できます。
高齢のパーキンソン病患者では、レボドパ製剤が第一選択薬として推奨されています。一方、若年発症例では、長期使用による運動合併症(wearing off、ジスキネジア)のリスクが高いため、ドパミンアゴニストを先行させ、レボドパ製剤の導入を遅らせる戦略も取られます。
参考)パーキンソン病治療薬の種類 
レボドパ製剤の課題であるwearing off現象に対しては、服薬回数の増加、COMT阻害薬の併用(スタレボへの変更)、MAO-B阻害薬の追加、レボドパ賦活薬(ゾニサミド)の併用などの対策があります。さらに近年では、レボドパの血中濃度変動を避けるため、デュオドーパ配合経腸用液やヴィアレブ配合持続皮下注といった持続投与システムも開発されており、進行期パーキンソン病の治療選択肢が広がっています。
参考)https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_09.pdf
レボドパ製剤の血中濃度比較データについて詳細が記載されています(日本薬剤師会)
パーキンソン病治療薬の使い分けと特徴について、わかりやすく解説されています(佐藤脳神経外科)
レボドパ製剤の作用機序と服薬指導のポイントが詳しく説明されています(ファーマシスタ)