フォサマックとボナロンは、いずれもアレンドロン酸ナトリウム水和物(アレンドロン酸として35mg)を有効成分とするビスホスホネート系骨粗鬆症治療薬です。両製剤は同一成分であり、作用機序も全く同じです。
参考)302 Found
生物学的同等性試験において、健康成人男子30例を対象にクロスオーバー法で検証した結果、両製剤は生物学的に同等であることが確認されています。骨組織に蓄積して破骨細胞による骨吸収を抑制し、骨量減少を抑制する効果は、両剤で同等です。
参考)https://www.ozakihp.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/10/%E9%AA%A8%E7%B2%97%E9%AC%86%E7%97%87%E6%B2%BB%E7%99%82%E8%96%AC%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.pdf
アレンドロン酸は、ファルネシルピロリン酸(FPP)合成酵素活性を阻害し、破骨細胞のアポトーシスを誘導することで骨吸収を抑制します。これにより、椎体骨折、非椎体骨折、大腿骨近位部骨折に対する抑制効果が認められており、エビデンスレベルはいずれもAランクです。
参考)骨粗鬆症の治療薬の使い分けについて - GIM x Infe…
フォサマックとボナロンの最も大きな違いは、製造販売元にあります。フォサマックは、オルガノン株式会社(旧MSD株式会社、万有製薬)が製造販売を行っています。一方、ボナロンは帝人ファーマ株式会社が製造販売元となっています。
参考)https://www.nihs.go.jp/drug/ecqaged/bluebook/a/o_Alendronate_Tab_01.pdf
両製剤は2001年8月に5mg製剤が、2006年9月に35mg製剤が同時に承認・発売されました。本邦においてアレンドロン酸の骨粗鬆症に対する有効性および安全性が確認され、ピーク時(6年目)には両社合わせて393億円の売上高が予想されていました。
参考)https://medical.teijin-pharma.co.jp/content/dam/teijin-medical-web/sites/documents/news/2020/20200716/fcn28e000000i193.pdf
なお、両剤ともに複数のジェネリック医薬品が存在しており、アレンドロン酸錠として様々な製薬会社から発売されています。ジェネリック医薬品の薬価は先発品よりも低く設定されているため、医療経済的な観点からも選択肢の一つとなります。
参考)https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=1503amp;prodname=%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AD%E3%83%B3%E9%85%B8%E9%8C%A035mg%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%80%8D
2025年4月1日以降の薬価において、フォサマック錠35mgは202.1円/錠、ボナロン錠35mgは218.9円/錠となっており、約17円の価格差があります。両剤ともに週1回投与製剤であるため、年間の薬剤費では約884円の差となります。
参考)商品一覧 : アレンドロン酸
5mg製剤では、フォサマック錠5は薬価収載されておらず、ボナロン錠5mgは37.7円/錠となっています。ただし、5mg製剤は毎日投与が必要なため、患者のアドヒアランスの観点から、現在は週1回投与の35mg製剤が主流となっています。
参考)商品一覧 : ビスホスホネート薬
ジェネリック医薬品のアレンドロン酸錠35mgは、製造会社によって異なりますが、概ね99.2円~229.2円/錠の範囲で設定されています。特にアレンドロン酸錠35mg「トーワ」や「F」などは99.2円と、先発品の約半分の薬価となっており、医療経済的なメリットが大きいです。
参考)ジェネリック検索・サーチ
国内第Ⅲ相臨床試験において、アレンドロン酸35mg週1回投与製剤と5mg毎日投与製剤を比較した結果、両投与法の副作用発現率は同程度であり、有効性も同等であることが確認されています。退行期骨粗鬆症患者207例における48週間の二重盲検試験では、骨密度の増加効果が認められました。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2006/P200600034/63015300_21800AMZ10364_B102_1.pdf
アレンドロン酸による骨密度増加は初期の1~2年の増加率が大きく、その後は緩やかに増加もしくはプラトーになります。最も長期間の骨密度増加効果が示されているのはアレンドロネートであり、おおよそ5-10%の骨密度増加効果が期待できます。
参考)ビスホスホネート製剤
椎体骨折抑制効果については、プラセボに対してOR 0.61(0.42–0.90)と有意な効果が報告されています。大腿骨近位部骨折および非椎体骨折の抑制効果も証明されており、骨粗鬆症治療の第一選択薬としての地位を確立しています。
参考)FAQ 骨粗鬆症治療薬ビスホスホネートの適切な使い方(竹内靖…
フォサマックとボナロンの服用方法は全く同じです。起床時の空腹時に、コップ1杯の水(約180mL)で服用する必要があります。服用後30分間は横にならず、水以外の飲食や他の薬剤の服用は避けなければなりません。
参考)http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se39/se3999018.html
この厳格な服用方法は、経口剤の吸収率が非常に低いことと、食道刺激による副作用を防ぐために必要です。ミネラルウォーターに含まれるカルシウムやマグネシウムなどの2価イオンは、アレンドロン酸の吸収を阻害するため、必ず水道水で服用します。
参考)アレンドロン酸錠35mg「DK」の効能・副作用|ケアネット医…
週1回投与製剤を飲み忘れた場合は、翌日起床時に服用し、次回からは元の曜日に戻します。同じ日に2錠服用してはいけません。毎日投与製剤の場合は、当日分は飛ばして翌日から服用を再開します。
参考)https://www.pharm-hyogo-p.jp/renewal/kanjakyousitu/sk68.pdf
投与期間については、3~5年間の治療継続後に骨折リスクを評価し、リスクが低下していれば休薬を検討することが提唱されています。長期投与は顎骨壊死や非定型大腿骨骨折のリスクを高める可能性があるため、5年を基準に継続か休薬を検討することが推奨されています。
参考)公益社団法人 福岡県薬剤師会 |質疑応答
主な副作用として、消化器系の症状が最も頻繁に報告されています。臨床試験では、胃不快感2.9%、胃痛2.9%、軟便2.0%の発現率が確認されています。その他、吐き気、便秘、下痢、胃炎、食欲不振、貧血、頭痛なども報告されています。
参考)アレンドロン酸ナトリウム水和物(アレンドロン酸) href="https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/alendronate-sodium-hydrate/" target="_blank">https://kobe-kishida-clinic.com/metabolism/metabolism-medicine/alendronate-sodium-hydrate/amp;#821…
重篤な副作用としては、顎骨壊死・顎骨骨髄炎が注意喚起されています。服用期間が3年以上の場合、歯科治療時には休薬を検討する必要があります。休薬期間は骨のリモデリングを考慮すると3ヶ月程度が望ましいとされています。
参考)骨粗鬆症|関節リウマチ
禁忌事項としては、食道狭窄等の食道通過遅延障害のある患者、服用時に立位または坐位を30分以上保てない患者、低カルシウム血症、ビスホスホネート系薬剤過敏症の既往歴がある患者が該当します。
服用早期には、ビスホスホネート製剤の急性期反応(APR:acute phase reaction)として、発熱を伴う全身の関節痛、筋肉痛、全身倦怠感といったインフルエンザ様症状が現れることがあります。これらの症状は初回服用後に出現し、数日から1週間程度で治まりますが、患者への事前説明が重要です。
投与回数がアドヒアランスに与える影響は大きく、過去の報告では1年後の順守率は毎日投与で38.6%、週1回投与で70.6%、月1回投与で77.7%となっています。このため、週1回投与の35mg製剤は、毎日投与の5mg製剤に比べて患者の服薬継続率が高いという利点があります。
ボナロンには錠剤に加えて経口ゼリー剤も存在します。ボナロン経口ゼリー35mgは、錠剤の服用が困難な患者に対する選択肢となります。ゼリー剤は噛まずに約180mLの水道水またはぬるま湯で服用しますが、従来のビスホスホネート製剤と同様の服用上の注意点が適用されます。
参考)https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/de77787a4df8c5871498c37ee9fa40b4.pdf
注射剤としては、月1回投与のボナロン注があります。経口剤の服用が困難な患者や、服用方法の遵守が難しい患者に対しては、注射剤の選択も検討されます。さらに、年1回投与のゾレドロン酸(リクラスト®)も選択肢となり、アドヒアランスの向上に寄与します。
参考)骨粗鬆症 - 06. 筋骨格系疾患と結合組織疾患 - MSD…
現実的には、月1回投与同士の使い分けを考え、場合によっては年1回の投与が選択肢に上がることになります。患者の生活スタイル、服薬管理能力、消化器系の既往歴などを総合的に評価し、最適な剤形を選択することが重要です。
医療経済的な観点から、ジェネリック医薬品の選択は重要な検討事項です。アレンドロン酸錠35mgのジェネリック医薬品は、先発品と生物学的に同等であることが確認されており、効果や安全性に差はありません。
参考)https://www.nichiiko.co.jp/medicine/file/71000/comparing
薬価差は年間で計算すると、先発品とジェネリック医薬品の差は約5,000円以上になることもあり、医療費抑制の観点からは無視できない金額です。特に長期投与が前提となる骨粗鬆症治療において、この差は患者負担や医療保険財政に影響を与えます。
ただし、製剤の選択においては、薬価だけでなく、患者の服薬アドヒアランス、消化器症状の発現リスク、剤形の選択肢(錠剤、ゼリー剤、注射剤)なども考慮する必要があります。フォサマックとボナロンの選択については、施設の採用状況や薬剤部の方針、患者の希望なども含めて総合的に判断することが求められます。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=52128
医療従事者としては、患者に対して適切な服用指導を行い、定期的な骨密度測定や副作用モニタリングを通じて、治療効果を最大化することが重要です。
骨粗鬆症治療薬アレンドロネート週1回投与製剤の薬理学特性と臨床効果についての詳細な学術情報(日本薬理学会)
ボナロン錠35mgの承認審査資料と同種同効品一覧表(PMDA)
ボナロン製剤の医薬品インタビューフォーム(帝人ファーマ)