デュピクセントの副作用対策と症状管理

デュピクセントの副作用は投与により重篤な過敏症反応から注射部位反応まで様々な症状が現れる可能性があります。医療従事者が知るべき副作用の種類、発現頻度、対処法を詳しく解説します。適切な副作用管理により安全な治療継続は可能でしょうか?

デュピクセント副作用症状と対処

デュピクセント副作用の特徴
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重篤な過敏症反応

アナフィラキシーショック、血圧低下、呼吸困難が0.1%未満で発現

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注射部位反応

最も頻度の高い副作用で5%以上に紅斑、腫脹、そう痒感

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眼症状

結膜炎、眼瞼炎、眼乾燥などが5%未満で発現

デュピクセント過敏症反応の症状と緊急対応

デュピクセントの最も重篤な副作用は過敏症反応であり、アナフィラキシーショック(0.1%未満)が報告されています。この重篤な副作用は投与直後だけでなく、時間が経過してから発現する場合もあるため、継続的な観察が必要です。
主な過敏症反応の症状

  • 血圧低下とふらつき感
  • 呼吸困難、呼吸時の「ゼーゼー」音
  • 意識消失や失神寸前の状態
  • めまい、嘔気、嘔吐
  • 皮膚のかゆみや潮紅
  • 関節痛、発熱
  • 血管性浮腫やくちびる・舌の腫れ

これらの症状が出現した場合は、速やかに投与を中止し、エピネフリンの投与、気道確保、酸素投与、輸液などの緊急処置を行う必要があります。患者には症状出現時は次回受診日を待たずに速やかに医療機関を受診するよう指導することが重要です。
医療従事者向けの対応として、デュピクセント投与前にアレルギー歴や過敏症反応の既往を十分に確認し、投与後は少なくとも30分間は経過観察を行うことが推奨されます。

 

デュピクセント注射部位反応の管理方法

注射部位反応はデュピクセントで最も頻繁に報告される副作用で、5%以上の患者に発現します。国際共同試験では、403例中29例(約7.2%)に注射部位反応が認められました。
注射部位反応の具体的症状

  • 注射部位紅斑(最も多い症状)
  • 腫脹や浮腫
  • そう痒感
  • 疼痛
  • 硬結
  • 内出血
  • 発疹
  • 皮膚炎

これらの症状は通常軽度から中等度で、数日以内に自然軽快することが多いですが、症状が悪化する場合や長期間持続する場合は医師に相談が必要です。
管理方法として、注射当日は注射部位への刺激を避け、冷湿布や抗ヒスタミン薬の局所適用により症状を軽減できます。患者指導では、注射部位を清潔に保ち、強く擦らないよう説明することが大切です。

 

注射技術の改善により副作用を軽減することも可能で、注射速度をゆっくりとし、注射部位のローテーション(上腕、腹部、太もも)を行うことで症状の軽減が期待できます。

 

デュピクセント眼症状と結膜炎への対応

デュピクセント投与により眼症状が5%未満の患者に発現し、特に結膜炎、アレルギー性結膜炎、眼瞼炎、眼乾燥が報告されています。これらの眼症状は治療継続の障害となる場合があるため、適切な管理が必要です。
主な眼症状の種類

  • 結膜炎(充血、かゆみ)
  • アレルギー性結膜炎
  • 眼瞼炎(まぶたの腫れ、赤み)
  • 眼乾燥症候群
  • 角膜炎(頻度不明)
  • 潰瘍性角膜炎(頻度不明)
  • 眼そう痒症

眼症状に対する対応として、人工涙液の点眼、抗アレルギー薬の点眼、ステロイド点眼薬(重症例)の使用が効果的です。症状が重篤な場合は眼科専門医への紹介も検討する必要があります。
医療従事者は、患者に眼症状の出現について事前に説明し、症状が現れた場合は速やかに相談するよう指導することが重要です。また、コンタクトレンズ使用者には症状出現時の使用中止を指導し、眼の清潔保持についても説明する必要があります。

 

デュピクセント好酸球増加症の監視ポイント

デュピクセント投与により血中好酸球数が一時的に増加することがあり(5%未満)、これに伴う症状の監視が重要です。好酸球増加症は投与開始から数週間以内に発現することが多く、定期的な血液検査による監視が必要です。
好酸球増加による症状

  • 発疹や全身のむくみ
  • 慢性好酸球性肺炎
  • 咳嗽、発熱、だるさ
  • 息切れ、呼吸困難
  • 血痰(血液混じりの痰)
  • 動悸、息苦しさ
  • 手足のしびれ、麻痺

特に慢性好酸球性肺炎は重篤な副作用として注意が必要で、投与継続の判断に影響します。症状が出現した場合は胸部X線検査やCT検査、呼吸機能検査を行い、必要に応じて投与中止を検討します。
監視のポイントとして、投与前および投与開始後4-8週間は定期的に血液検査(好酸球数、LDH、CRP)を実施し、1,500/μL以上の好酸球増加が持続する場合は症状の有無に関わらず注意深い観察が必要です。

 

患者には呼吸器症状や皮膚症状の変化について詳しく説明し、異常を感じた場合は速やかに受診するよう指導することが重要です。

 

デュピクセント感染症リスクとヘルペス感染対策

デュピクセントは免疫機能を一部抑制するため、感染症リスクの増加が懸念されます。特に単純ヘルペス感染(口腔ヘルペス)が5%未満で報告されており、寄生虫感染への抵抗力低下も指摘されています。
感染症関連の副作用

  • 口腔ヘルペス(口周り・唇の発疹)
  • 単純ヘルペス感染
  • 結膜炎(感染性含む)
  • 寄生虫感染のリスク増加

ヘルペス感染に対する対策として、抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル)の早期投与が効果的です。予防的な抗ウイルス薬投与は、ヘルペス感染の既往がある患者や免疫抑制状態の患者に検討されることがあります。

 

寄生虫感染については、投与前に糞便検査による寄生虫感染の確認を行い、感染が判明した場合は治癒するまでデュピクセントの投与を延期することが推奨されています。
医療従事者は患者に対し、口周りの異常な発疹や水疱、発熱を伴う症状について説明し、症状出現時は速やかに相談するよう指導する必要があります。また、海外渡航歴や生食品摂取についても問診で確認することが重要です。