カナグリフロジン インタビューフォーム:添付文書と薬剤師活用

カナグリフロジンのインタビューフォームは、添付文書を補完する重要な医薬品情報資料です。薬物動態や臨床成績など詳細な情報が記載されています。医療従事者はこの資料をどう活用すべきでしょうか?

カナグリフロジン インタビューフォームの活用

カナグリフロジン インタビューフォーム概要
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インタビューフォームとは

添付文書を補完する薬剤師向けの詳細な医薬品解説書。日本病院薬剤師会が製薬企業に作成を依頼する学術資料です。

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カナグリフロジンの特徴

SGLT2阻害薬として腎臓での糖再吸収を抑制し、尿中に糖を排泄することで血糖値を低下させる2型糖尿病治療薬です。

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詳細情報の重要性

薬物動態、臨床試験データ、安全性情報など、添付文書では記載しきれない情報が含まれており、適正使用に不可欠です。

カナグリフロジン インタビューフォームの定義と役割

 

医薬品インタビューフォーム(IF)は、医療用医薬品添付文書を補完する情報資材として位置づけられています。日本病院薬剤師会が策定した記載要領に基づき、製薬企業が作成する薬剤師等の医療従事者向けの総合的な医薬品解説書です。カナグリフロジンのインタビューフォームには、商品名「カナグル」として、添付文書の情報を裏付けるより詳細な情報が記載されています。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00009402.pdf

インタビューフォームは1988年に日本病院薬剤師会が医薬情報担当者(MR)への情報請求を効率化するために誕生した経緯があります。医療現場で必要な医薬品の品質管理情報、処方設計情報、調剤情報、適正使用情報、薬学的患者ケア情報などが集約されています。製薬企業はPDF形式の電子媒体で提供することが基本となっており、PMDAのウェブサイトから無料で閲覧できるため、薬剤師にとって手軽な学習教材としても活用できます。
参考)https://www.jshp.or.jp/activity/interview/20200427-2.pdf

添付文書との違いとして、インタビューフォームには記載スペースの制限がないため、警告や禁忌の詳細な理由、薬物動態や臨床成績の豊富な情報、販売名の名称由来、非臨床試験データ、製剤の安定性情報など、添付文書では知り得ない情報が含まれています。
参考)https://www.igaku-shoin.co.jp/misc/pdf/00705/00705_36.pdf

カナグリフロジンの薬理学的特性と添付文書情報

カナグリフロジン水和物は、田辺三菱製薬が創製した選択的ナトリウム-グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬です。SGLT2を選択的に阻害することで、腎臓の近位尿細管でのグルコース再吸収を抑制し、血中に過剰に存在するグルコースを尿糖として排泄する作用機序を持ちます。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00009932.pdf

効能又は効果として、2型糖尿病および2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)に適応があります。用法及び用量は、通常成人にカナグリフロジンとして100mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与します。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00071343.pdf

臨床試験では、HbA1cが約0.6~0.7%低下し、体重も約4%程度の減少が確認されており、血糖コントロールと体重減少の両面で効果が認められています。また、糸球体の圧力を下げる作用により腎機能低下を抑える効果も報告されています。
参考)カナグルってどんなお薬?効果・副作用・危険性などについて医師…

カナグリフロジン投与時の副作用と安全性情報

カナグリフロジンの主な副作用として、低血糖(4.8%)、尿路感染症(2.3%)、頻尿(1.8%)、性器真菌感染症(1%未満)、口渇(0.7%)、体位性めまい(0.4%)、脱水(0.1%)、ケトアシドーシス(0.1%)などが報告されています。
参考)https://oneclinic.jp/medical-column/diet/canaglu-effect/

低血糖は単独投与では起こりにくいとされていますが、スルホニル尿素薬インスリン製剤との併用時にリスクが高まります。冷汗、空腹感、手足の震え、意識低下などの症状が見られた場合は医師に相談が必要です。
参考)カナグル錠の効果や副作用とは?痩せるの?通販購入で安いのはオ…

浸透圧利尿作用により尿量が増加するため、脱水や体液量減少のリスクがあります。特に高齢者、腎機能障害患者、利尿薬併用患者では体液量減少を起こしやすく、適度な水分補給を指導することが重要です。尿中グルコース増加により、雑菌や真菌が繁殖しやすくなるため、尿路感染症や性器感染症の発現に注意が必要です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8031563/

PMDA医療用医薬品情報検索
カナグリフロジンの最新の添付文書、インタビューフォーム、医薬品リスク管理計画(RMP)などの公式情報を確認できます。

 

カナグリフロジン投与における注意点と禁忌事項

カナグリフロジンの投与にあたり、いくつかの重要な注意事項があります。eGFRが30mL/min/1.73m²未満の患者では腎保護作用が十分に得られない可能性があり、腎機能障害が悪化するおそれがあるため、新規に投与しないことが推奨されています。投与中にeGFRが30mL/min/1.73m²未満に低下した場合は、投与継続の必要性を慎重に判断する必要があります。
参考)https://www.pmda.go.jp/RMP/www/400315/c6aba5d8-19b9-452c-8788-7292e2e03cbc/400315_3969022F1029_01_004RMPm.pdf

臨床試験に組み入れられた患者の背景(原疾患、併用薬、腎機能等)を十分に理解した上で、慢性腎臓病に対するガイドラインにおける診断基準や重症度分類等を参考に、適応患者を選択することが求められます。​
海外の大規模臨床試験では、カナグリフロジン投与群でプラセボ群よりも下肢切断の発現頻度が有意に高かったとの報告があり、注意が必要です。また、カナグリフロジンは口腔内崩壊錠(OD錠)も発売されており、水なしで服用可能ですが、寝たままの状態では水なしで服用させないことが重要です。​

カナグリフロジン インタビューフォームの実務活用法

医療従事者がインタビューフォームを効果的に活用するためには、その構造と記載内容を理解することが重要です。インタビューフォームには「開発経緯」の項目があり、薬が開発された背景や使命、使いどころを学ぶことができます。カナグリフロジンの場合、従来の糖尿病治療薬とは異なるインスリン非依存的な作用機序を持つSGLT2阻害薬として開発された経緯が記載されています。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/special_feature/5105

薬物動態に関する項目では、カナグリフロジンの血中濃度推移、半減期、代謝経路、排泄経路などの詳細なデータが記載されています。日本人患者を対象とした薬物動態試験では、25、100、200、400mgの単回投与および14日間反復投与での安全性と忍容性が確認されています。また、服用中止後3日経過しても尿糖が排泄されることから、薬剤の持続的な作用が示唆されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4569680/

調剤時の実務情報として、カナグリフロジンはフィルムコーティング錠と口腔内崩壊錠の2剤形があり、それぞれの取り扱い方法や保管方法がインタビューフォームに詳細に記載されています。薬価情報や各種コードも記載されており、医薬品管理に活用できます。
参考)カナグル|田辺三菱製薬 医療関係者サイト Medical V…

患者指導においては、インタビューフォームの情報をもとに「くすりのしおり」などの患者向け資材を活用し、低血糖症状、脱水予防、感染症リスクなどについて具体的に説明することが重要です。
参考)くすりのしおり : 患者向け情報

田辺三菱製薬カナグル製品情報ページ
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