バルビツール酸系静脈麻酔薬は、GABA_A受容体に作用して中枢神経系を抑制する薬剤群です。主要な薬剤として以下が挙げられます。
チオペンタールナトリウム 🔸
チアミラールナトリウム 🔸
これらの薬剤は主に鎮静薬として用いられ、鎮痛作用はありません。むしろ痛覚刺激に対して敏感になる傾向があるため、鎮痛薬との併用が必要です。また、ヒスタミン遊離作用があるため、気管支喘息患者への使用は避けるべきとされています。
バルビツール酸系薬剤の作用機序は、GABA_A受容体に結合してクロールチャネルを調節し、GABAがそのレセプターとの結合から離反するのを抑制することで鎮静作用を示すと考えられています。
ベンゾジアゼピン系静脈麻酔薬は、γ-アミノ酪酸(GABA)の特異的受容体であるGABA_A受容体に結合し、クロールチャネルを調節して主に鎮静作用を示します。
ミダゾラム(商品名:ドルミカム) 💊
レミマゾラム 💊
フルニトラゼパム 💊
ベンゾジアゼピン系薬剤の特徴として、基本的に鎮静薬・睡眠薬であり鎮痛作用がないことが挙げられます。大脳辺縁系、大脳皮質、小脳などに分布するGABA受容体を賦活することで、抗不安作用、抗痙攣作用、筋弛緩作用、鎮静作用、催眠作用を発揮します。
副作用として呼吸抑制、依存性、過鎮静、興奮、前行性健忘などがあり、特に長期使用では依存性や離脱症状に注意が必要です。作用はフルマゼニル(アネキセート)で拮抗することができます。
プロポフォールは現在、麻酔導入のために最も頻繁に投与される静脈麻酔薬となっています。バルビツール酸系に代わって主流となった短時間作用型のフェノール誘導体です。
プロポフォールの特徴 ⚡
薬理作用と作用機序 🧬
プロポフォールはGABA_A受容体に作用して薬理効果を発揮します。鎮静作用はありますが、鎮痛作用はないため、手術時には鎮痛薬との併用が必要です。
使用場面と利点 🏥
注意点と副作用 ⚠️
プロポフォールは状況依存の半減期の増加が最も小さく、長期の注入により持続注入としての使用により適している特徴があります。また、エピネフリン不整脈に対してハロセンと同程度の心筋感作用を示すことが研究で明らかになっており、循環器系への影響にも注意が必要です。
ケタミン塩酸塩(商品名:ケタラール)は、他の静脈麻酔薬とは異なる独特な薬理学的特徴を持つ解離性麻酔薬です。
独特な作用機序 🧠
ケタミンはGABA_A受容体を介さず、NMDA受容体の拮抗により薬理作用を発揮するユニークな静脈麻酔薬です。視床・新皮質を機能的ならびに電気生理学的に抑制する一方、辺縁系を活性化する薬理学的特徴を持ちます。
鎮静と鎮痛の両作用 💫
特殊な覚醒現象 🌙
麻酔から覚醒する際に以下の現象(emergence phenomena)が出現することがあります。
これらの現象は小児より成人に、男性より女性に多いとされています。
臨床での使用 🏥
長期使用時の影響 🔬
研究により、ケタミンを長時間使用するとノルアドレナリントランスポーター(NET)の発現量に影響を与えることが明らかになっています。これは静脈麻酔薬の長時間使用による薬理効果の変化に何らかの影響を与えていると考えられています。
ケタミンは成人に使用すると統合失調症と類似した行動が観察される場合があるため、使用時には十分な注意と監視が必要です。
静脈麻酔薬は強力な薬理作用を持つ反面、重要な副作用や使用上の注意点があります。医療従事者は適切な知識と監視体制のもとで使用する必要があります。
共通する主要な副作用 ⚠️
呼吸抑制 🫁
循環器系への影響 ❤️
薬剤別の特殊な注意点 📋
バルビツール酸系
ベンゾジアゼピン系
プロポフォール
長期使用時の影響 🔬
研究により、プロポフォールやケタミンの長期使用がノルアドレナリントランスポーター(NET)の機能や発現量に影響することが示されています。これは静脈麻酔薬の長時間使用による薬理効果の変化や、下行性疼痛抑制系への影響と関連している可能性があります。
安全な使用のためのポイント ✅
日本麻酔科学会による使用ガイドライン参考
静脈関連薬使用ガイドライン - 各薬剤の詳細な使用法と注意点
バランス麻酔として複数薬剤を併用する現在の麻酔管理では、薬物の相互作用についても十分な理解が必要です。実際の麻酔管理では、患者の状態、手術の種類、持続時間などを総合的に考慮して最適な薬剤選択と投与法を決定することが重要です。