アクロレイン シクロホスファミドの代謝と出血性膀胱炎の発症機序・予防対策

シクロホスファミドの代謝産物であるアクロレインは、尿路上皮を直接障害し出血性膀胱炎を引き起こす重要な毒性物質です。その発症メカニズムから予防法、心筋障害など他の副作用まで、医療従事者が知るべき知識とは?

アクロレイン シクロホスファミド代謝における毒性機序

アクロレインとシクロホスファミドの関係性
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シクロホスファミドの肝代謝

肝臓のチトクロームP450酵素系(主にCYP2B6)により活性代謝物に変換され、アクロレインが生成される

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アクロレインの高い反応性

不飽和アルデヒドで細胞毒性が極めて強く、過酸化水素の10倍以上の細胞毒性を示す

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尿路上皮への直接障害

腎臓から尿中に排泄され、膀胱粘膜を直接刺激することで出血性膀胱炎を誘発する

シクロホスファミドは、世界中で広く使用されているアルキル化剤であり、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、白血病、乳癌、肺癌、自己免疫疾患など多岐にわたる疾患に適応があります。この薬剤はプロドラッグであり、体内で代謝されることで初めて薬理活性を示します。
参考)https://www.anticancer-drug.net/alkylating_agents/cyclophosphamide.htm

シクロホスファミドは主に肝臓で代謝され、肝代謝酵素CYP2B6が中心的役割を果たします。また、CYP2C8、2C9、3A4、2A6も代謝に関与していることが報告されています。この代謝過程で生成される主な代謝物は4-ヒドロキシシクロホスファミド、アルドホスファミド、ホスファミドマスタード、そして問題となるアクロレインです。​
アクロレインは高反応性の不飽和アルデヒド(α,β-不飽和アルデヒド)であり、他のアルデヒドである4-ヒドロキシノネナールと比較して数百倍も反応性が高く、細胞毒性も極めて強いことが知られています。実験データでは、アクロレインの細胞毒性は過酸化水素の10倍以上であることが示されており、活性酸素種よりもはるかに強力な毒性物質です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3517031/

シクロホスファミドの代謝により生成されたアクロレインは、腎臓から尿中に排泄されます。この排泄過程において、アクロレインが膀胱内に滞留すると、膀胱粘膜に直接接触し、尿路上皮細胞を障害します。このメカニズムが出血性膀胱炎発症の主要な原因となっています。​

シクロホスファミド肝代謝経路の詳細

 

シクロホスファミドの肝臓における代謝は、チトクロームP450酵素系によって段階的に進行します。まず、シクロホスファミドはCYP2B6を中心とした酵素により4-ヒドロキシシクロホスファミドに変換されます。この4-ヒドロキシシクロホスファミドは不安定な化合物で、自発的にアルドホスファミドへと異性化します。
参考)シクロホスファミド水和物( エンドキサン) href="https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/cyclophosphamide-hydrate/" target="_blank">https://kobe-kishida-clinic.com/respiratory-system/respiratory-medicine/cyclophosphamide-hydrate/amp;#8211; …

アルドホスファミドはさらに分解され、ホスファミドマスタードとアクロレインの2つの代謝物に変換されます。ホスファミドマスタードはDNAアルキル化作用を持つ最終的な活性代謝物であり、抗腫瘍効果を発揮する主要物質です。一方、アクロレインは薬理活性を持たず、むしろ重大な副作用の原因となる毒性代謝物です。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00060682.pdf

4-ヒドロキシシクロホスファミドの血漿中濃度は、シクロホスファミドのアルキル化活性の良好なマーカーとなります。これは、ホスファミドマスタードが細胞膜を透過できないため、細胞内で生成された分のみが細胞毒性を発揮するためです。このため、4-ヒドロキシシクロホスファミドの測定は治療効果の予測や副作用リスクの評価に有用です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2361415/

シクロホスファミドの代謝には個体差があり、肝臓のチトクロームP450酵素活性の違いにより、活性代謝物やアクロレインの生成量が患者ごとに異なります。この個体差が副作用発現の差異につながるため、高用量投与時には特に注意が必要です。
参考)https://www.umin.ac.jp/fukusayou/adr141c.htm

アクロレイン毒性の分子メカニズム

アクロレインは極めて高い反応性を持つα,β-不飽和アルデヒドであり、その毒性は複数の分子メカニズムによって発現します。最も重要な作用は、細胞内のスルフヒドリル基(-SH基)を含む分子、特にグルタチオンとの反応です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4306719/

アクロレインはグルタチオン(GSH)に対して極めて高い親和性を示し、グルタチオン抱合反応により解毒されます。しかし、アクロレインの量が多い場合、細胞内グルタチオンを急速に枯渇させ、抗酸化防御システムを破綻させます。グルタチオンが枯渇すると、細胞は酸化ストレスに対する防御能を失い、さらにアクロレインによる直接的な細胞障害が増強されます。
参考)https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/portal/seika/2017/2931212044h.pdf

アクロレインは、タンパク質のスルフヒドリル基とも反応し、タンパク質の構造と機能を変化させます。細胞構成タンパク質のスルフヒドリル基が不活性化されると、中間代謝の破綻、細胞の成長や分裂の阻害、最終的には細胞死に至ります。呼吸器系では、鼻粘膜の受容体タンパク質のスルフヒドリル基への反応により、強い刺激性が発現します。
参考)https://www.mdpi.com/2218-273X/13/2/298/pdf?version=1675509758

DNA付加体の形成もアクロレインの重要な毒性メカニズムです。実際、シクロホスファミドを投与された患者の末梢血リンパ球では、アクロレインによるDNA付加体が検出されており、未投与患者では検出されないことが確認されています。このDNA損傷は、発がんリスクの増加と関連する可能性があります。
参考)https://www.env.go.jp/chemi/report/h16-01/pdf/chap01/02_2_1.pdf

さらに、アクロレインは脂質過酸化を促進し、細胞膜の損傷を引き起こします。ミトコンドリア機能を障害することも報告されており、これによりエネルギー産生が低下し、細胞死のカスケードが活性化されます。また、アクロレインは用量依存的にアポトーシスとネクローシスの両方を誘導することが、ヒト肺胞マクロファージを用いた試験で示されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000650072.pdf

環境省のアクロレインに関するリスク評価書では、アクロレインの生体内での代謝と毒性メカニズムについて詳細に解説されています。

シクロホスファミド投与による心筋障害とアクロレイン

シクロホスファミドの大量投与時には、出血性膀胱炎以外にも重篤な副作用として心筋障害が知られています。この心筋障害は致死性となることもあり、臨床上大きな問題となっています。
参考)KAKEN href="https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20K08232/" target="_blank">https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20K08232/amp;mdash; 研究課題をさがす

研究により、シクロホスファミド心筋障害の主因がアクロレインであることがin vitroおよびin vivoの実験系で明らかにされています。マウスを用いた実験では、シクロホスファミド代謝酵素でありアクロレイン産生を抑制する1型アルデヒド脱水素酵素(ALDH)遺伝子をノックダウンし、シクロホスファミドを大量投与すると、心筋障害が著明に出現することが確認されました。同時に、アクロレインの解毒代謝産物が減少することも観察されており、アクロレインが心筋障害の直接的原因であることを支持しています。​
心筋障害の発症には個体差があり、この差異はアクロレイン産生・代謝の個体差に起因すると考えられています。アルデヒド脱水素酵素の活性が低い患者では、アクロレインの蓄積が起こりやすく、心筋障害のリスクが高まる可能性があります。​
シクロホスファミドによる心筋障害の症状には、むくみ、胸痛、動作時の息切れ、動悸などがあります。これらの症状が出現した場合には、直ちに担当医に報告し、適切な対応を取る必要があります。大量投与時には心エコー検査などによる心機能モニタリングが推奨されます。
参考)https://junko.kanagawa-pho.jp/data/media/junko-kanagawa-pho/page/departments/pharmacy/rejimen/pha-regimen_doiu_i-2.pdf

日本の研究プロジェクトでは、アクロレイン除去によるシクロホスファミド心筋障害予防法の確立を目指した研究が行われています。

アクロレイン産生に関わる内因性経路

アクロレインはシクロホスファミドの代謝産物としてだけでなく、生体内で内因性にも産生されることが近年明らかになっています。最も重要な内因性産生経路の一つが、ポリアミンの酸化分解です。
参考)https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-17K11442/17K11442seika.pdf

ポリアミンは分子中にアミノ基を2つ以上含む低分子の塩基性物質で、ヒトの生体内にはプトレスシン、スペルミジン、スペルミンが主に存在します。これらのうち、特にスペルミンとスペルミジンが糖尿病網膜症の眼内で増加していることが報告されており、病態における意義が注目されています。​
血管接着タンパク質-1(VAP-1)は、血管内皮細胞に発現し、白血球接着分子として炎症に関与する一方、アミン酸化酵素としての活性も有しています。VAP-1がポリアミンの一種であるスペルミンを酸化すると、アクロレインが生成されることが明らかになりました。この反応では、アクロレインとともに過酸化水素も産生されますが、細胞毒性試験では、アクロレインの方が過酸化水素よりも10倍以上強い細胞毒性を示すことが確認されています。​
糖尿病網膜症患者の硝子体において、アクロレイン結合タンパク質とVAP-1が共に増加し、正の相関を示すことが見出されています。この発見は、糖尿病合併症などの酸化ストレス関連疾患において、内因性アクロレインが重要な役割を果たしている可能性を示唆しています。​
牛血清存在下でスペルミンを添加すると、乳がん由来FM3A細胞の増殖が阻害されます。この現象は牛血清中に存在するアミン酸化酵素により引き起こされますが、アルデヒド脱水素酵素を加えると細胞増殖が回復する一方、カタラーゼ(過酸化水素分解酵素)を加えても回復しないことから、細胞毒性の主因がアクロレインであることが実証されています。​

アクロレイン シクロホスファミド出血性膀胱炎の病態

シクロホスファミド出血性膀胱炎の発症頻度と臨床経過

シクロホスファミドによる出血性膀胱炎の発症頻度は、予防対策の有無により大きく異なります。シクロホスファミドが使用され始めた当初は、出血性膀胱炎の発症率は40~68%と極めて高率でした。しかし、代謝産物アクロレインの中和剤であるメスナ(Mesna:sodium 2-mercaptoethanesulfonate)を併用するようになってからは、発症頻度は2~5%程度まで劇的に減少しています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1n07-r03.pdf

シクロホスファミドの点滴静注では、投与翌日から数日以内に血尿を主体とした激しい膀胱炎様の症状で発症することが多い急性型が典型的です。一方、経口投与による出血性膀胱炎は晩期に発生することもあり、投与中止後も長期間持続する場合があります。実際、投与中止後10年たっても出血性膀胱炎を繰り返した症例も報告されています。
参考)https://general.tane.or.jp/wp-content/themes/general/assets/images/hospital/journal/02/07.pdf

メイヨークリニックのデータによると、シクロホスファミドを経口で90g以上、または静脈注射で18g以上投与すると出血性膀胱炎が発症しやすくなります。約20%の症例で輸血が必要となり、多くの患者では回復が得られますが、出血のコントロールが困難な例では膀胱摘出術が必要となることもあります。重症例では合併症により死亡するケースも報告されています。​
出血性膀胱炎の症状には、血尿(肉眼的血尿または顕微鏡的血尿)、頻尿、排尿時痛、下腹部痛などがあります。重症例では大量出血により膀胱タンポナーデを生じ、尿閉となることもあります。床敷きが赤く染まるほどの血尿が観察されることもあり、患者のQOLを著しく低下させる副作用です。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=2233

厚生労働省の出血性膀胱炎に関する資料では、シクロホスファミドによる出血性膀胱炎の詳細な発症頻度と臨床経過が記載されています。

シクロホスファミド出血性膀胱炎のメスナによる予防機序

メスナ(ウロミテキサン)は、シクロホスファミドおよびイホスファミドによる出血性膀胱炎を予防するために開発されたスルフヒドリル化合物です。メスナの作用機序は、尿中でアクロレインと直接結合し、無毒化することにあります。
参考)https://www.gifu-upharm.jp/di/mdoc/iform/2g/i3148832210.pdf

メスナは静脈内投与後、血中で速やかに酸化されてジスルフィド体となりますが、腎臓で再び還元されて活性型のメスナとなり、尿中に排泄されます。尿中でアクロレインと結合することで、アクロレインの膀胱粘膜への刺激作用を防ぎます。この特異的な薬物動態により、メスナは膀胱でのみ効果を発揮し、全身の抗腫瘍効果を妨げません。
参考)e-REC

メスナの投与スケジュールは、シクロホスファミドまたはイホスファミドの投与量に応じて調整されます。通常、シクロホスファミド投与の直前、投与4時間後、投与8時間後の計3回投与されることが多く、シクロホスファミド投与量の60~100%相当のメスナが使用されます。大量療法では特にメスナの併用が必須とされています。​
メスナ導入前後で出血性膀胱炎の発症率が劇的に減少したことは、アクロレインが出血性膀胱炎の主要原因物質であることの強力な証拠となっています。メスナの予防効果は、シクロホスファミド大量療法の安全性を大きく向上させ、造血幹細胞移植前処置などでの使用を可能にしました。​
国立がん研究センター中央病院の資料では、シクロホスファミド使用時の出血性膀胱炎予防対策について詳しく解説されています。

シクロホスファミド出血性膀胱炎の補助的予防対策

メスナ以外にも、シクロホスファミド投与時の出血性膀胱炎を予防するための補助的対策が重要です。これらの対策の基本原理は、アクロレインが膀胱に滞留し、粘膜と接触する時間を短縮することにあります。​
最も基本的かつ重要な対策は、十分な水分摂取と頻回の排尿です。シクロホスファミド投与中および投与後は、水分を多めに摂取し、たくさん尿を出すことが推奨されます。尿が膀胱内に長時間たまった状態でいると、膀胱粘膜がアクロレインにより刺激されるため、こまめな排尿が重要です。
参考)VDC-IE療法

具体的な予防方法としては、以下の対策が推奨されます:​

  • 排尿回数を増やす
  • 留置カテーテルの使用
  • 膀胱持続灌流
  • 大量輸液
  • 利尿剤投与
  • 重炭酸ナトリウム(NaHCO3)投与による尿のアルカリ化

重炭酸ナトリウム投与は、尿をアルカリ化することでアクロレインの毒性を軽減する効果があります。また、大量輸液と利尿剤投与により、アクロレインの膀胱内濃度を低下させ、排泄を促進することができます。​
シクロホスファミドを外来で経口投与する場合には、患者への十分な指導が必要です。特に、水分を多めに摂取すること、就寝前の服用を避けること(夜間に膀胱内に尿が貯留するため)、血尿や排尿時痛などの症状が出現した場合には直ちに報告することなどを指導します。​
入院での大量投与時には、膀胱持続灌流が行われることもあります。これは、カテーテルを通じて膀胱内を生理食塩水などで持続的に洗浄する方法で、アクロレインを物理的に除去する効果があります。​

シクロホスファミド投与における個体差と副作用リスク

シクロホスファミドの代謝には顕著な個体差があり、この差異が副作用リスクの違いを生み出します。肝臓の肝静脈閉塞症(VOD)の発生と、シクロホスファミドおよびその活性代謝物の薬物動態との関連を調査した研究では、高用量シクロホスファミド投与時の活性代謝物への高曝露が、肝静脈閉塞症の発生と関連していることが示されました。​
シクロホスファミドの代謝に関与する主要酵素であるCYP2B6の活性には、遺伝的多型による個体差があります。CYP2B6の活性が高い患者では、活性代謝物やアクロレインの生成が増加し、副作用リスクが高まる可能性があります。逆に、活性が低い患者では抗腫瘍効果が不十分となる可能性もあります。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00053890.pdf

アルデヒド脱水素酵素(ALDH)の活性も、アクロレインによる副作用の発現に影響を与えます。ALDHはアクロレインを解毒する重要な酵素であり、この酵素活性が低い個体では、アクロレインの蓄積により心筋障害や出血性膀胱炎のリスクが増大します。​
薬物相互作用も個体ごとの副作用リスクに影響します。アロプリノールは肝ミクロソーム酵素を阻害することが報告されており、シクロホスファミドとの併用により血液障害などの副作用が増強される可能性があります。また、CYP2B6を誘導または阻害する他の薬剤との併用も、シクロホスファミドの代謝に影響を与える可能性があります。​
これらの個体差を考慮し、高用量シクロホスファミド投与時には、治療薬物モニタリング(TDM)を実施することが推奨される場合があります。4-ヒドロキシシクロホスファミドやホスファミドマスタードの血漿中濃度を測定することで、個々の患者における代謝状況を把握し、副作用リスクを予測することが可能となります。​

シクロホスファミド出血性膀胱炎の治療とマネジメント

出血性膀胱炎が発症した場合の治療は、重症度に応じて段階的に行われます。軽度の血尿の場合は、まず水分摂取を増やし、膀胱洗浄を頻回に行うことで症状の改善を図ります。​
中等度から重度の出血性膀胱炎に対しては、以下のような治療法が選択されます:​

  • 膀胱持続灌流:生理食塩水などによる持続的な膀胱洗浄
  • 輸血:貧血が進行した場合
  • 血小板輸血:血小板減少を伴う場合
  • 止血剤の投与:トラネキサム酸などの全身投与
  • 膀胱内止血剤注入:明礬(ミョウバン)溶液、ホルマリン溶液などの局所投与
  • 高圧酸素療法:難治例に対する試み

シクロホスファミドの投与は、出血性膀胱炎が発症した場合には直ちに中止することが原則です。しかし、抗がん治療の必要性と副作用のバランスを考慮し、症状が軽度であれば減量して継続することもあります。​
免疫チェックポイント阻害薬などによる免疫関連有害事象としての出血性膀胱炎では、他の臓器障害と同様にグレードに応じた休薬・ステロイド投与を検討すべきと考えられています。実際に休薬およびステロイドパルス療法により症状が改善した症例も報告されています。​
重症例で保存的治療に抵抗性の場合には、外科的介入が必要となることもあります。膀胱鏡下での凝固術、血管塞栓術、さらには膀胱摘出術まで考慮されることがあります。しかし、これらの侵襲的治療は最終手段であり、可能な限り保存的治療での管理が望ましいとされています。​
長期的なフォローアップも重要です。シクロホスファミド投与後、数年経過してから出血性膀胱炎が再発する例もあるため、定期的な尿検査と症状の確認が推奨されます。また、長期投与例では膀胱癌の発生リスクも報告されているため、注意深い経過観察が必要です。​
厚生労働省の医療関係者向け資料では、出血性膀胱炎の早期発見と早期対応のポイントが詳しく解説されています。