ポンタール ロキソニン 違い|作用機序 適応症 副作用で使い分け

ポンタールとロキソニンは同じNSAIDsですが、作用機序や適応症、副作用の発現率に違いがあります。どちらを選ぶべきか迷っていませんか?

ポンタール ロキソニン 違い

📋 ポンタールとロキソニンの主な違い
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有効成分

ポンタールはメフェナム酸、ロキソニンはロキソプロフェンナトリウムで、同じNSAIDsでも異なる系統です

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効果発現時間

ロキソニンは約15~30分で効果が現れ、ポンタールは約2時間で最高血中濃度に到達します

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適応症の特徴

ポンタールは歯痛や月経痛に特化し、ロキソニンは幅広い炎症性疾患に使用されます

ポンタール メフェナム酸の作用機序と特徴

 

ポンタールの有効成分であるメフェナム酸は、アントラニル酸系の非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)に分類されます。この薬剤はシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することでプロスタグランジンの生合成を抑制し、消炎・鎮痛・解熱作用を発揮します。
参考)医療用医薬品 : ポンタール (ポンタールカプセル250mg…

メフェナム酸は主にCYP2C9により代謝され、生体内で酸化を受けて代謝物I及び代謝物IIとなりますが、これらの代謝物には薬理作用が認められていません。血漿蛋白結合率は85~97%と高く、投与後約2時間で最高血中濃度に達します。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00003654.pdf

メフェナム酸はプロスタグランジン合成酵素に対して強い阻害作用を示し、イヌ脾臓でのI50値(50%阻害濃度)は0.71µM、ヒツジ精嚢では2.1µMと報告されています。また、胃粘膜における50%潰瘍形成用量(ED50値)は300mg/kgより大きく、比較的胃粘膜障害が少ないとされています。​

ロキソニン ロキソプロフェンの作用機序と特徴

ロキソニンの有効成分であるロキソプロフェンナトリウムは、プロピオン酸系のNSAIDsに分類されます。この薬剤の特徴は、経口投与されたときに胃粘膜刺激作用の弱い未変化体のまま消化管より吸収され、その後速やかにプロスタグランジン生合成抑制作用の強い活性代謝物trans-OH体(SRS配位)に変換されて作用することです。
参考)https://midori-hp.or.jp/pharmacy-blog/web20241113

ロキソプロフェンは服用後約30分で血中濃度が最高値に達し、活性代謝物trans-OH体は約50分で最高血中濃度に到達します。半減期はいずれも約1時間15分であり、効果発現時間は約15~30分と迅速です。効果持続時間は約4~6時間程度とされています。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068446.pdf

ロキソプロフェンはシクロオキシゲナーゼを作用点としたプロスタグランジン生合成抑制作用により、優れた鎮痛・抗炎症・解熱作用を有し、特に鎮痛作用が強力であることが臨床試験で確認されています。
参考)医療用医薬品 : ロキソニン (ロキソニン錠60mg 他)

ポンタール 適応症と臨床効果の違い

ポンタールは手術後および外傷後の炎症・腫脹の緩解、変形性関節症、腰痛症、症候性神経痛、他剤が無効な場合の頭痛、副鼻腔炎、月経痛、分娩後疼痛、歯痛に適応があります。特に歯痛に対しては88.9%(433/487例)、手術後の痛みに対しては88.1%(1,825/2,071例)と高い有効率が報告されています。
参考)ポンタール細粒98.5%の基本情報(副作用・効果効能・電子添…

月経痛(月経困難症)に対する適応は、ポンタールの重要な特徴の一つです。プロスタグランジンF2αおよびE2は子宮の過収縮を引き起こし、子宮筋の虚血・低酸素状態から月経痛が生じますが、メフェナム酸はこれらのプロスタグランジンの合成を抑制することで効果を発揮します。臨床試験では月経痛に対して81.3%(39/48例)の有効率が示されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8943241/

用法は通常、成人に対して1回500mgを頓用し、必要に応じて1日2回まで、1日最大1500mgを限度として使用します。空腹時の投与は避けることが望ましいとされています。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00067452.pdf

ロキソニン 適応症と効果発現時間の違い

ロキソニンは関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛、手術後・外傷後・抜歯後の消炎・鎮痛、急性上気道炎の解熱・鎮痛に適応があります。ポンタールと比較すると、関節リウマチや肩関節周囲炎など幅広い炎症性疾患に使用されることが特徴です。​
効果発現時間の迅速性はロキソニンの大きな利点です。服用後約15分で効果を感じる人が出始め、約30分で半数以上の人に効果が現れます。ボルタレンのインタビューフォームによると、鎮痛効果の発現時間は15~45分(平均26分)、持続時間は6~10時間(平均8時間前後)とされており、ロキソニンも同様の特性を持つことが推測されます。
参考)ロキソニンの効果は?何時間で切れる?|交通事故 - メディカ…

手術後および外傷後の疼痛を発現した患者を対象とした二重盲検試験において、メフェナム酸1000mg/日を対照薬としてロキソプロフェンナトリウム180mg/日を3日間投与した結果、ロキソプロフェンナトリウムの有効性が確認されています。通常の用法は1回60mg、1日3回食後に経口投与し、頓用の場合は1回60~120mgとされます。​

ポンタール ロキソニン 副作用の違いと注意点

両剤ともNSAIDsとして胃腸障害のリスクがあります。NSAIDsによる胃粘膜障害には2つのメカニズムがあり、①COX-1阻害による胃粘膜保護作用を有するプロスタグランジン(PGE2とPGI2)の合成阻害、②酸性NSAIDsが胃粘膜を直接傷害することです。
参考)第73回 NSAIDsの胃腸障害はなぜ起こるの?

ポンタールの副作用としては、下痢・軟便(0.1~1.5%未満)が特徴的であり、血小板機能低下、発疹、胃腸障害、眠気、めまいなどが報告されています。メフェナム酸の胃粘膜における50%潰瘍形成用量(ED50値)は300mg/kgより大きく、比較的胃粘膜障害が少ないとされています。
参考)https://bijps.uobaghdad.edu.iq/index.php/bijps/article/download/952/781

ロキソニンは胃腸への負担があるとされ、空腹時の服用を避け、多めの水で服用することが推奨されます。しかし、プロスタグランジンの産生阻害による胃粘膜障害は薬理作用上避けられないため、食後服用や水分摂取だけでは完全には予防できません。NSAIDs潰瘍のリスクが高い患者(潰瘍歴がある人、高齢者、抗血小板薬抗凝固薬を併用している人など)には、プロトンポンプ阻害薬PPI)やレバミピドなどの胃粘膜保護薬の併用が推奨されます。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/special_feature/4411

妊娠中の使用については、両剤とも治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされており、特に妊娠末期には胎児の動脈管収縮のリスクがあるため注意が必要です。授乳中の女性に対しては、ポンタールは母乳への移行が報告されており授乳を中止させることが推奨されていますが、少量であるため授乑中でも問題ないとする見解もあります。ロキソニンも授乳の継続または中止を慎重に判断する必要があります。
参考)偏頭痛もちなので、ポンタール、カロナール、ロキソニン...

高齢者では副作用が現れやすいため、両剤とも少量から投与を開始し、患者の状態を観察しながら慎重に投与することが求められます。
参考)https://assets.di.m3.com/pdfs/00061329.pdf

ポンタール ロキソニン 使い分けと併用禁忌

ポンタールとロキソニンの使い分けは、患者の症状、効果発現時間の必要性、副作用のプロファイルに基づいて行われます。急性の強い痛みで迅速な効果が必要な場合にはロキソニンが適しており、歯痛や月経痛などの特定の疼痛にはポンタールが有効です。
参考)ポンタールとは?効果から強さまで医師が徹底解説

両剤を併用することは一般的ではありませんが、医師の判断により併用される場合もあります。例えば、扁桃腺摘出手術後にポンタールシロップを服用していても痛みが増す場合、ロキソニンを追加することが検討されることがあります。ただし、NSAIDsの併用は胃腸障害などの副作用リスクが増加するため、慎重な判断が必要です。
参考)NSAIDsは、一度使うと次は6時間空けてと聞くけれど、その…

ポンタールの併用禁忌としては、クマリン系抗凝血剤(ワルファリン)があり、抗凝血作用を増強する可能性があるため注意が必要です。また、第Xa因子阻害剤(エドキサバントシル酸塩水和物等)との併用も出血の危険性を増大させるおそれがあります。リチウム製剤との併用は血中リチウム濃度を上昇させ、リチウム中毒を起こす可能性があります。チアジド利尿剤やACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤などの降圧剤との併用は、それぞれの薬効を減弱させる可能性があるため注意が必要です。​
ロキソニンも同様に抗凝固薬や抗血小板薬との併用に注意が必要であり、胃薬(PPI、レバミピド等)の併用が推奨される場合があります。NSAIDsの服用間隔は4~6時間程度空けることが推奨されており、天井効果があるため量を増やしても副作用が増えるだけで効果は上がりません。
参考)ロキソニンとレバミピドの飲み合わせ|効果・副作用や併用可能な…

ポンタールの詳細な添付文書情報(KEGG MEDICUS)
ポンタールの効能・効果、用法及び用量、禁忌、相互作用、副作用などの詳細な医薬品情報が記載されています。

 

ロキソニンの詳細な添付文書情報(KEGG MEDICUS)
ロキソニンの薬理作用、臨床試験成績、薬物動態などの包括的な情報が掲載されています。

 

NSAIDsによる消化性潰瘍に関する医療関係者向け情報(厚生労働省)
NSAIDs潰瘍の発症機序、リスク因子、予防と治療についての権威性のある情報が提供されています。