メフェナム酸副作用:症状と対処・重篤リスク・医療従事者向けガイド

メフェナム酸の副作用について、消化器症状から重大な血液障害、肝機能障害まで、医療従事者が押さえるべきリスクと対処法を詳しく解説。副作用の早期発見と適切な対応ができていますか?

メフェナム酸副作用

メフェナム酸の主要な副作用
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消化器系副作用

下痢・軟便が最も頻度の高い副作用(0.1~1.5%未満)。胃腸障害、食欲不振、悪心、嘔吐、胃痛、腹痛なども発現する可能性があります。

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重大な副作用

溶血性貧血、無顆粒球症、骨髄形成不全、消化性潰瘍、急性腎障害、劇症肝炎などの重篤な副作用が頻度不明ながら報告されています。

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中枢神経系への影響

眠気、めまい、頭痛、倦怠感などの精神神経系症状が発現。まれに痙攣も報告されており、自動車運転時の注意が必要です。

メフェナム酸副作用の発現頻度と分類

 

メフェナム酸は非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)に分類される鎮痛・消炎・解熱剤で、プロスタグランジン生合成抑制作用を持ちます。商品名ポンタールとして、頭痛、歯痛、月経痛などの治療に広く使用されていますが、様々な副作用が報告されています。市販後調査を含めた総症例12,070例(散剤を含む)中、795例(6.59%)に副作用が認められました。最も頻度の高い副作用は消化器系で、下痢・軟便が0.1~1.5%未満、胃腸障害が0.90%と報告されています。過敏症として発疹(0.1~1.5%未満)、精神神経系として眠気、めまい、頭痛、倦怠感などが出現する可能性があります。

 

副作用は発現頻度によって3つのカテゴリーに分類されます。0.1~1.5%未満の頻度で発現するものとして、下痢・軟便、胃腸障害、食欲不振、悪心、嘔吐、胃痛、腹痛、胃部不快感、発疹、眠気、めまい、頭痛、倦怠感があります。0.1%未満の頻度では、発赤、そう痒、口渇、便秘、霧視などが報告されています。頻度不明の副作用には、蕁麻疹、固定薬疹、吐血、鼓腸、痙攣、浮腫、発熱などが含まれます。血液系の副作用として血小板減少性紫斑病、血小板機能低下(出血時間の延長)、血小板減少、好酸球増多が報告されており、肝臓関連では黄疸、AST上昇、ALT上昇、ALP上昇、肝障害が認められています。

 

メフェナム酸による重大な副作用のリスク

メフェナム酸には頻度不明ながら重篤な副作用が複数報告されており、医療従事者は常に注意深い観察が必要です。ショック、アナフィラキシーは胸内苦悶、冷汗、喉頭浮腫、呼吸困難、四肢しびれ感、低血圧、結膜充血などの症状を伴い、発現した場合には直ちに投与を中止する必要があります。血液系の重大な副作用として、自己免疫性溶血性貧血無顆粒球症、顆粒球減少、骨髄形成不全があり、特に高齢者では長期投与した場合に自己免疫性溶血性貧血が発現することが知られています。血液検査を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うことが重要です。

 

皮膚粘膜系では中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)が報告されており、発現時には直ちに投与を中止します。腎臓への影響として、急性腎障害、ネフローゼ症候群、間質性腎炎が発現することがあり、乏尿、血尿、尿蛋白、BUN上昇、血中クレアチニン上昇、高カリウム血症、低アルブミン血症などの検査所見が現れた場合には直ちに投与中止が必要です。消化器系の重篤な副作用として、消化性潰瘍大腸炎、吐血、下血、血便などの消化管出血が発現することがあります。本剤の直接作用およびプロスタグランジン生合成抑制により胃の血流量が減少するため、消化性潰瘍を悪化させるおそれがあります。

 

肝臓関連では劇症肝炎、AST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、γ-GTP等の著しい上昇を伴う肝機能障害、黄疸が発現することがあり、投与中止が必要です。さらに、心血管系の重篤な副作用として、心筋梗塞脳血管障害などの心血管系血栓塞栓性事象が報告されており、これらの副作用は生命に関わる可能性があるため、早期発見と迅速な対応が求められます。

 

メフェナム酸副作用の症状と初期徴候

消化器系副作用の中で最も注意すべき症状は下痢です。メフェナム酸は過去に本剤により下痢を起こした患者では、本剤に対し耐薬性を失い、下痢を再発することが多いため禁忌とされています。下痢・軟便は発現頻度が比較的高く、投与初期から出現する可能性があります。胃腸障害としては食欲不振、悪心、嘔吐、胃痛、腹痛、胃部不快感が認められ、これらは空腹時投与で悪化する傾向があるため、食後の服用が推奨されます。吐血や血便などの消化管出血の徴候が現れた場合は、直ちに投与を中止する必要があります。

 

精神神経系の副作用として、眠気、めまい、頭痛、倦怠感が比較的高頻度で出現します。特に眠気とめまいは自動車の運転や機械の操作に影響を与える可能性があるため、服用後はこれらの活動を避けるよう患者に指導することが重要です。まれに痙攣が発現することもあり、特に過量投与の場合には注意が必要です。過量投与では痙攣のほか、急性腎障害などが報告されており、症状は服用後30分~4時間ほどで現れますが、腎不全などは発症までに数日かかる場合があります。致死量は約2.5グラムとされています。

 

過敏症状としては発疹が最も一般的で、発赤、そう痒、蕁麻疹、固定薬疹などが出現する可能性があります。これらの皮膚症状が現れた場合、より重篤な皮膚粘膜症候群への進展を防ぐため、早期に投与を中止することが重要です。血液系の副作用の初期徴候として、鼻血、歯ぐきからの出血、あおあざができやすい、出血が止まりにくいなどの症状が現れた場合、血小板減少性紫斑病や血小板機能低下の可能性があり、血液検査による確認が必要です。肝機能障害の初期症状としては、倦怠感、発熱、黄疸、食思不振、嘔気、嘔吐、心窩部痛、右季肋部痛などがあり、これらの症状が出現した場合には速やかに肝機能検査を実施する必要があります。

 

メフェナム酸副作用への対処法と予防策

メフェナム酸の副作用に対する対処法は、副作用の種類と重症度によって異なります。軽度の消化器症状(胃痛、胃部不快感など)に対しては、空腹時投与を避け、食後に服用することで症状を軽減できます。下痢が出現した場合は直ちに投与を中止する必要があり、一度下痢を起こした患者には再投与を避けるべきです。著しい下痢や軟便が続く場合、脱水症状への対応として適切な水分補給が必要になります。眠気やめまいが出現した場合は、自動車の運転や危険を伴う機械の操作を避けるよう患者に指導し、症状が強い場合には減量または中止を検討します。

 

重大な副作用が疑われる場合には、迅速な対応が求められます。血液系の異常が疑われる場合は、定期的な血液検査(血球数、分画など)を実施し、自己免疫性溶血性貧血、無顆粒球症、顆粒球減少、骨髄形成不全などの早期発見に努めます。特に高齢者では長期投与時に自己免疫性溶血性貧血が発現しやすいため、注意深い観察が必要です。異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な血液学的治療を開始します。急性腎障害やネフローゼ症候群の予防には、投与前に腎機能を評価し、重篤な腎機能障害のある患者には禁忌とされています。投与中は定期的に尿検査(尿蛋白、血尿など)および血液検査(BUN、クレアチニン、電解質など)を実施し、異常が認められた場合は直ちに投与を中止します。

 

肝機能障害の予防と早期発見には、投与前の肝機能評価と投与中の定期的なモニタリングが重要です。AST、ALT、ALP、γ-GTP、ビリルビンなどの肝機能検査を定期的に実施し、著しい上昇や黄疸の出現が認められた場合には直ちに投与を中止します。重篤な肝機能障害のある患者には禁忌とされています。消化性潰瘍や消化管出血の予防には、消化性潰瘍の既往歴のある患者での慎重投与、定期的な便潜血検査、吐血や下血などの消化管出血の徴候に対する注意深い観察が必要です。特に非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与による消化性潰瘍のある患者では、ミソプロストールによる治療が行われている場合でも、慎重な経過観察が求められます。過量投与が疑われる場合には、活性炭の投与を施すなど症状に応じて適切な処置を行いますが、メフェナム酸は血漿蛋白結合率が高いため、血液透析は有用ではありません。

 

医療従事者が知るべきメフェナム酸の禁忌と慎重投与

メフェナム酸には多数の禁忌事項があり、医療従事者は処方前に必ず確認する必要があります。絶対禁忌として、消化性潰瘍のある患者(ただし例外規定あり)、重篤な血液の異常のある患者、重篤な肝機能障害のある患者、重篤な腎機能障害のある患者、重篤な心機能不全のある患者、本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者が挙げられます。アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)またはその既往歴のある患者では、気管支拡張作用を低下させ喘息発作を誘発するおそれがあるため禁忌です。重篤な高血圧症の患者では、腎のプロスタグランジン生合成抑制により、水・ナトリウムの貯留が起こり、浮腫や血圧上昇を起こすおそれがあります。

 

過去に本剤により下痢を起こした患者は、本剤に対し耐薬性を失い下痢を再発することが多いため禁忌とされています。妊娠末期の婦人も禁忌であり、これは動物実験で妊娠期間及び分娩時間が延長したとの報告があるためです。慎重投与が必要な患者として、消化性潰瘍の既往歴のある患者、血液の異常または既往歴のある患者、出血傾向のある患者、肝障害または既往歴のある患者、腎障害または既往歴のある患者があります。気管支喘息のある患者では喘息発作を誘発するおそれがあり、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病のある患者では無菌性髄膜炎や血球減少、腎障害、間質性肺炎があらわれやすいため慎重投与が必要です。

 

高齢者は一般に生理機能が低下しているため、肝・腎機能の低下により代謝・排泄が遅延し副作用が現れやすく、また消化性潰瘍の既往歴のある患者が多いことから、慎重投与が必要です。妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与し、特に妊娠末期は禁忌とされています。授乳中の女性では、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討します。小児に対する安全性は確立していないため(使用経験が少ない)、慎重な投与判断が求められます。また、15歳未満のインフルエンザ患者への投与は、インフルエンザ脳症を重症化させると考えられるため原則として禁止されています。これらの禁忌・慎重投与事項を遵守することで、重篤な副作用の発生リスクを最小限に抑えることができます。

 

KEGG MEDICUSのポンタールカプセル250mg添付文書情報(副作用の詳細な発現頻度と分類について記載)
PMDA重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬物性肝障害(メフェナム酸を含むNSAIDsによる肝障害の症状と対処法)
PMDA使用上の注意改訂情報(メフェナム酸の溶血性貧血・無顆粒球症に関する重要な改訂内容)