タナトリル(一般名:イミダプリル塩酸塩)はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬に分類される高血圧治療薬です。本剤は経口投与後に体内で加水分解され、活性代謝物であるイミダプリラート(ジアシド体)に変換されるプロドラッグとして設計されています。イミダプリラートは血中および組織中のACE活性を選択的に阻害し、昇圧物質であるアンジオテンシンⅡの生成を効果的に抑制します。
参考)タナトリルの効果・副作用を医師が解説【高血圧の治療に】 - …
体内にはレニン・アンジオテンシン系(RAS)と呼ばれる血圧調節機構が存在し、アンジオテンシンⅠがACEによってアンジオテンシンⅡに変換されます。アンジオテンシンⅡは強力な血管収縮作用を持ち、血圧を上昇させる主要な因子です。タナトリルはこのACEの働きを阻害することで、アンジオテンシンⅡの産生を元から断ち、血管拡張を促進して血圧を下げる仕組みを持ちます。
参考)くすりのしおり : 患者向け情報
動物実験では、自然発症高血圧ラット(SHR)および2腎性高血圧ラットへのイミダプリル塩酸塩投与により、用量依存的な降圧作用が確認されています。興味深いことに、正常血圧ラットに対する降圧作用は極めて軽度であり、病的な高血圧状態に選択的に作用する特性が示されています。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00000561.pdf
タナトリルの大きな特徴は、単なる降圧効果にとどまらない腎保護作用を有することです。腎臓において、アンジオテンシンⅡは糸球体の輸出細動脈を収縮させ、糸球体内圧を上昇させることで腎機能の悪化を引き起こします。さらにアンジオテンシンⅡは、メサンギウム細胞の増殖や形質転換増殖因子(TGF-β)の産生を促進し、糸球体硬化を進展させる作用も持ちます。
参考)ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は腎臓・心臓保護効果がある…
タナトリルによるACE阻害は、この輸出細動脈の拡張を促し、糸球体内圧を低下させることで腎臓への負担を軽減します。この作用機序により、本剤は高血圧症や腎実質性高血圧症だけでなく、1型糖尿病に伴う糖尿病性腎症の治療薬としても承認されています。ただし、添付文書上の糖尿病性腎症に関する適応は「1型糖尿病に伴う糖尿病性腎症」に限定されており、2型糖尿病性腎症には適応がない点に注意が必要です。
参考)くすりのしおり : 患者向け情報
1型糖尿病性腎症患者を対象とした臨床試験では、イミダプリル塩酸塩投与群において尿中アルブミン排泄量が41%減少したのに対し、プラセボ群では72%増加し、両群間で統計学的に有意な差(p<0.001)が認められました。この結果は、タナトリルが腎機能の悪化を抑制するだけでなく、積極的に腎保護効果を発揮することを示唆しています。
参考)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/14987901036907
タナトリルは腎保護作用に加えて、心臓や血管系への保護効果も報告されています。アンジオテンシンⅡは動脈硬化の進展に関与する因子の一つであり、ACE阻害薬による治療は動脈硬化の抑制効果を持つことが示されています。虚血性心疾患や脳動脈硬化を有する患者において、ACE阻害薬は予後を改善する可能性があります。
メタ解析の結果、ACE阻害薬には「降圧とは独立した冠動脈イベント抑制効果」が認められており、心保護作用においてアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)よりも優位性があるとする報告もあります。欧米においてARBとACE阻害薬のシェアが1:3であることは、コストパフォーマンスや臓器保護作用の観点からACE阻害薬が高く評価されていることの表れといえます。
参考)第19回実践勉強会 
タナトリルの心血管保護作用のメカニズムとしては、以下の複数の経路が考えられています。第一に、血圧低下による心臓への機械的負担の軽減です。第二に、アンジオテンシンⅡが持つ心筋細胞肥大促進作用や線維化促進作用の抑制です。第三に、血管内皮機能の改善による動脈硬化進展の抑制です。これらの多面的な作用により、タナトリルは単なる降圧薬としてだけでなく、心血管保護を目的とした包括的な治療薬として位置づけられます。
参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2002/P200200004/40031500_20500AMZ00544_250_2.pdf
タナトリルは他のACE阻害薬と比較して、いくつかの薬物動態学的な特徴を持ちます。プロドラッグとして設計されているため、消化管からの吸収が良好であり、体内で活性代謝物に変換される効率が高いことが特徴です。半減期(T1/2)は約8時間とされており、1日1回の投与で安定した降圧効果を維持できます。
参考)高血圧の薬(ARBとACE阻害薬)一覧
食事の影響を受けにくいという特性も臨床上の利点です。多くの降圧薬は食事のタイミングによって吸収率が変動しますが、イミダプリルは食前、食直後、食後のいずれでも効果に大きな差がないため、服薬アドヒアランスの向上に寄与します。飲み忘れ時も食事に関係なく服用可能であり、患者の生活パターンに柔軟に対応できる利点があります。
参考)https://www.pharm-hyogo-p.jp/renewal/kanjakyousitu/r5k54.pdf
尿中排泄率は24時間までで約25.5%であり、ラットでの試験では96時間までの尿中回収率が約70%と報告されています。腎機能障害を伴う患者では、代謝物の蓄積による副作用のリスクが高まるため、投与量の調整や慎重な経過観察が必要となります。
参考)https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/736.pdf
興味深い知見として、タナトリルの日本での承認用量は海外用量の約1/2に設定されています。これは日本人と欧米人との体格差や薬物代謝能の違いを反映した設定であり、日本人患者における有効性と安全性のバランスを最適化するための配慮といえます。
ACE阻害薬の使用において最も頻度の高い副作用の一つが空咳(乾性咳嗽)です。タナトリルにおいても、痰の絡まないコンコンという乾いた咳が特徴的な副作用として報告されています。ACE阻害薬全体では5~20%程度の患者に空咳が出現するとされていますが、興味深いことに、タナトリルは他のACE阻害薬と比較して空咳の発現頻度が低いという特性を持ちます。
参考)タナトリル錠5の基本情報(作用・副作用・飲み合わせ・添付文書…
空咳の発症メカニズムは、ACE阻害によるブラジキニンやサブスタンスPといった炎症性ペプチドの分解抑制が関与していると考えられています。これらのペプチドが気道粘膜を刺激することで、咳反射が誘発されます。空咳は通常、服薬開始から数週間から数ヶ月後に現れることが多く、命に関わる副作用ではありませんが、患者のQOLを著しく低下させる可能性があります。
他のACE阻害薬投与で咳が発現した症例において、タナトリルに変更した場合、半数以上で咳が消失したという報告があり、これはタナトリルの重要な臨床的優位性といえます。また、ACE阻害薬による空咳は継続服用により多くが消失・軽減するため、欧米では軽度の咳であれば中止せずに経過観察することが一般的です。
患者から空咳の訴えがあった場合、まず咳の性状(乾性か湿性か)、発現時期、程度を詳細に評価することが重要です。咳が患者の日常生活に著しい支障をきたしている場合は、医師に相談し、ARBへの変更や他の降圧薬への切り替えを検討する必要があります。一方で、このサブスタンスP分解抑制作用を逆手に取り、脳卒中後の誤嚥性肺炎の予防に用いる試みも行われており、副作用が新たな治療効果として利用される可能性も注目されています。
タナトリルの薬理作用である降圧効果に関連した副作用として、めまい、ふらつき、立ちくらみ、低血圧などが報告されています。特に投与開始時や増量時には過度の血圧低下が起こりやすく、注意が必要です。高齢者や脱水状態の患者、利尿薬を併用している患者では、これらの副作用のリスクが高まります。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00048437.pdf
めまいやふらつきが出現した場合、患者には急激な体位変動を避け、立ち上がる際はゆっくりと動作することを指導する必要があります。特に夜間のトイレ時や起床時には転倒リスクが高まるため、十分な注意喚起が重要です。自動車の運転や高所作業など危険を伴う機械操作を行う患者には、これらの副作用が出現する可能性について事前に説明し、異常を感じた場合は作業を中止するよう指導します。
血圧低下症状が持続する場合や、収縮期血圧が90mmHg未満に低下するような場合は、減量や休薬を検討する必要があります。特に重症高血圧症や腎障害を伴う高血圧症の患者では、2.5mgから投与を開始することが望ましいとされています。低用量から開始し、患者の反応を見ながら慎重に増量することで、過度の血圧低下を回避できます。
動悸も循環器系の副作用として報告されています。これは血圧低下に対する代償性の交感神経活性化や心拍数増加によるものと考えられます。動悸が頻回に出現する場合や持続する場合は、心電図検査などの精査が必要となることがあります。
参考)医療用医薬品 : タナトリル (タナトリル錠10)
タナトリルには頻度は低いものの、重篤な副作用が報告されており、早期発見と適切な対応が患者の安全確保に不可欠です。最も注意すべき重大な副作用の一つが血管浮腫(アンギオエデマ)です。これは顔面、唇、舌、咽頭などが突然腫れる症状で、気道閉塞を引き起こし生命に関わる可能性があります。
血管浮腫の初期症状としては、顔面の腫れ、唇の腫脹、舌の違和感、喉の締め付け感、呼吸困難などが挙げられます。これらの症状が出現した場合は、直ちに服薬を中止し、緊急医療機関を受診する必要があることを患者に明確に伝えておくことが重要です。血管浮腫は投与開始後早期に出現することが多いため、特に初回投与後数日間は注意深い観察が必要です。
高カリウム血症も重大な副作用の一つです。ACE阻害薬はアルドステロンの分泌を抑制するため、腎臓でのカリウム排泄が減少し、血清カリウム値が上昇する可能性があります。高カリウム血症の症状には、手足や唇のしびれ、筋力低下、手足の麻痺、不整脈などがあります。特に腎機能障害を有する患者、カリウム保持性利尿薬を併用している患者、カリウム製剤やカリウム含有食品を多く摂取している患者では発症リスクが高まります。
参考)医療用医薬品 : イミダプリル塩酸塩 (イミダプリル塩酸塩錠…
急性腎不全や腎機能障害の増悪も注意すべき重大な副作用です。尿量の減少、むくみ、倦怠感、血清クレアチニンやBUN(血中尿素窒素)の上昇などが認められた場合は、腎機能障害を疑う必要があります。定期的な腎機能検査(血清クレアチニン、eGFR、尿検査など)により、早期発見と適切な対応が可能となります。
血液系の副作用として、血小板減少が報告されています。鼻血、歯茎からの出血、皮下出血(あざ)などの出血傾向が見られた場合は、血小板減少の可能性を考慮し、血液検査を実施する必要があります。
皮膚粘膜系の重篤な副作用として、紅皮症(剥脱性皮膚炎)、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、天疱瘡様症状などが報告されています。高熱(38度以上)、広範囲の皮膚発疹、水疱、皮膚の広い範囲が赤くなる、目の充血、唇のただれなどの症状が出現した場合は、直ちに投与を中止し、専門医による治療が必要です。
膵炎も頻度は不明ですが報告されている重大な副作用です。上腹部の激痛、背部痛、悪心、嘔吐などの症状が出現した場合、血中アミラーゼやリパーゼの上昇が認められれば、投与を中止し適切な処置を行う必要があります。
タナトリルでは、比較的軽度ではあるものの、日常診療で遭遇しやすい副作用も報告されています。頭痛は0.1~5%未満の頻度で出現する副作用です。多くの場合、投与継続により軽減することがありますが、持続する場合や程度が強い場合は、鎮痛薬の併用や他剤への変更を検討します。
消化器系の副作用として、悪心、嘔吐、胃部不快感、腹痛、下痢、食欲不振などが報告されています。これらの症状は通常軽度で一過性ですが、持続する場合や程度が強い場合は、服薬タイミングの変更(例:食後服用に統一)や制酸薬の併用などで対応可能なケースもあります。
呼吸器系では、前述の咳以外に、咽頭部異和感・不快感、痰、嗄声(声がれ)などが報告されています。これらはACE阻害作用による気道粘膜への影響と考えられ、多くは軽度ですが、患者のQOLに影響する場合は医師への相談が必要です。
肝機能への影響として、AST(GOT)、ALT(GPT)、ALP、LDH、γ-GTPの上昇、黄疸などが報告されています。定期的な肝機能検査により、異常値の早期発見と適切な対応が可能です。肝酵素の著明な上昇が認められた場合は、投与中止を検討する必要があります。
血液系では、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球の減少、好酸球増多などが0.1~5%未満の頻度で報告されています。これらの変化は通常軽度ですが、定期的な血液検査によるモニタリングが推奨されます。
精神神経系では、眠気が頻度不明ながら報告されています。眠気が出現した場合は、自動車の運転や機械操作に注意が必要であることを患者に伝えます。
タナトリルには絶対的な禁忌事項が設定されており、これらに該当する患者への投与は重篤な健康被害をもたらす可能性があります。まず、本剤の成分に対して過敏症の既往歴がある患者は禁忌です。過去にタナトリルや他のACE阻害薬でアレルギー反応や血管浮腫を経験した患者では、再投与により同様の反応が起こるリスクが極めて高いため、投与してはなりません。
妊婦または妊娠している可能性のある女性も禁忌です。ACE阻害薬は胎児への悪影響が報告されており、特に妊娠中期以降の使用では、胎児の腎機能障害、羊水過少、骨格異常、肺低形成などを引き起こす可能性があります。妊娠の可能性がある女性には、投与前に妊娠検査を実施し、治療中は適切な避妊法を指導する必要があります。
血管浮腫の既往歴がある患者も禁忌です。ACE阻害薬は血管浮腫のリスク因子であり、過去に血管浮腫を経験した患者では再発リスクが著しく高まります。血管浮腫は気道閉塞を引き起こし生命に関わるため、慎重な問診により既往歴を確認することが重要です。
デキストラン硫酸固定化セルロース、トリプトファン固定化ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートを用いた吸着器によるアフェレーシス(血液浄化療法)を施行中の患者には禁忌です。これらの治療とACE阻害薬の併用により、重篤なアナフィラキシー様反応が報告されているためです。
アクリロニトリルメタリルスルホン酸ナトリウム膜(AN69)を用いた血液透析施行中の患者も禁忌です。AN69膜とACE阻害薬の相互作用により、ブラジキニンの血中濃度が上昇し、アナフィラキシー様症状を引き起こす可能性があるためです。
アリスキレンフマル酸塩(ラジレス)を投与中の糖尿病患者には禁忌です。直接的レニン阻害薬とACE阻害薬の併用により、低血圧、高カリウム血症、腎機能障害のリスクが著しく増加することが臨床試験で示されています。
参考)イミダプリル塩酸塩(タナトリル)作用機序・特徴・服薬指導の要…
慎重投与が必要な患者群としては、まず腎機能障害を有する患者が挙げられます。タナトリルは腎臓から排泄される代謝物を持つため、腎機能が低下している患者では薬物の蓄積により副作用のリスクが高まります。重篤な腎障害を伴う患者では2.5mgから投与を開始することが推奨されています。
両側性腎動脈狭窄または片腎で腎動脈狭窄のある患者では、ACE阻害により腎血流が著しく低下し、急性腎不全を引き起こす可能性があるため、慎重な投与が必要です。高カリウム血症の患者やカリウム保持性利尿薬を併用している患者でも、高カリウム血症の増悪リスクがあるため注意が必要です。
タナトリルは多くの薬剤と相互作用を示す可能性があり、併用薬の適切な管理が安全な薬物治療に不可欠です。最も重要な併用注意薬は、カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン、トリアムテレンなど)とカリウム製剤です。これらとの併用により高カリウム血症のリスクが増加するため、定期的な血清カリウム値のモニタリングが必要です。
他のレニン・アンジオテンシン系(RAS)抑制薬、すなわちアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)や直接的レニン阻害薬との併用も注意が必要です。RAS阻害作用が相加的に増強され、腎機能障害、高カリウム血症、低血圧のリスクが高まります。特に糖尿病患者においてアリスキレンとの併用は禁忌とされています。
利尿薬との併用では、過度の血圧低下が生じる可能性があります。特に利尿薬により体液量が減少している状態でACE阻害薬を開始すると、初回投与時に著明な血圧低下(いわゆる「ファーストドーズ現象」)が起こることがあります。利尿薬を併用している患者では、タナトリルの開始用量を低めに設定し、慎重に増量することが推奨されます。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=48438
カリジノゲナーゼ製剤との併用にも注意が必要です。タナトリルのキニン分解抑制作用とカリジノゲナーゼ製剤のキニン産生作用により、血管平滑筋の弛緩が増強され、過度の血圧低下が引き起こされる可能性があります。
参考)医療用医薬品 : イミダプリル塩酸塩 (イミダプリル塩酸塩錠…
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)との併用も重要な注意点です。NSAIDsはプロスタグランジン合成を阻害することで、ACE阻害薬の降圧効果を減弱させる可能性があります。また、両者の併用により腎機能障害のリスクが増加することも報告されています。
リチウム製剤との併用では、リチウムの血中濃度が上昇し、リチウム中毒を引き起こす可能性があるため、血中リチウム濃度のモニタリングが必要です。
免疫抑制薬や糖質コルチコイドとの併用では、白血球減少のリスクが増加する可能性があります。アロプリノールやプロカインアミドとの併用でも、白血球減少や感染症のリスクが高まる可能性が指摘されています。
タナトリルの標準的な用法用量は、適応症によって異なります。高血圧症および腎実質性高血圧症に対しては、通常成人にイミダプリル塩酸塩として5~10mgを1日1回経口投与します。年齢や症状により適宜増減可能ですが、重症高血圧症、腎障害を伴う高血圧症、または腎実質性高血圧症の患者では、2.5mgから投与を開始することが望ましいとされています。
参考)タナトリル錠5の効能・副作用|ケアネット医療用医薬品検索
1型糖尿病に伴う糖尿病性腎症に対しては、通常成人にイミダプリル塩酸塩として5mgを1日1回経口投与します。ただし、重篤な腎障害を伴う患者では2.5mgから投与を開始することが推奨されています。この適応はタナトリル錠2.5mgと5mgのみに設定されており、10mg錠には適応がない点に注意が必要です。
タナトリルは1日1回投与で24時間の降圧効果が期待できるため、服薬アドヒアランスの向上に寄与します。服用時間帯については、食事の影響を受けにくいため、朝食後、夕食後など患者の生活パターンに合わせて設定可能です。ただし、めまいやふらつきが出現しやすい患者では、就寝前の投与を避け、日中の活動時間帯に服用することで転倒リスクを低減できます。
高齢者への投与では、一般に生理機能が低下しているため、低用量(2.5mg)から開始し、患者の状態を観察しながら慎重に増量することが推奨されます。高齢者では腎機能が低下していることが多く、薬物の排泄遅延により副作用が出現しやすいためです。
腎機能障害患者への投与調整も重要です。軽度から中等度の腎機能障害(eGFR 30~60 mL/min/1.73m²)では、通常用量から開始可能ですが、定期的な腎機能モニタリングが必要です。重度の腎機能障害(eGFR < 30 mL/min/1.73m²)では、2.5mgから開始し、慎重に投与します。透析患者では、透析によって薬物が除去される可能性があるため、透析後に投与するなどの工夫が必要です。
肝機能障害患者では、プロドラッグであるイミダプリル塩酸塩から活性代謝物イミダプリラートへの変換が遅延する可能性がありますが、一般的には用量調整は不要とされています。ただし、重度の肝機能障害患者では慎重な投与が必要です。
投与開始時および増量時には、血圧、腎機能(血清クレアチニン、eGFR、BUN)、血清カリウム値、肝機能(AST、ALT)などのモニタリングが推奨されます。投与開始後1~2週間で効果判定を行い、目標血圧に達していない場合は増量を検討します。
タナトリルは医療用医薬品であり、医師の処方箋が必要です。市販薬(OTC医薬品)としては販売されておらず、薬局やドラッグストアで購入することはできません。高血圧や糖尿病性腎症の治療には医師による診断と継続的な管理が不可欠であるため、必ず医療機関を受診し、適切な処方を受ける必要があります。
タナトリルの先発医薬品の薬価は、2.5mg錠が約20~25円、5mg錠が約31.3円、10mg錠が約55.8円程度です。ただし、薬価は改定により変動するため、最新の情報は公式の薬価基準を参照する必要があります。
参考)https://pha.medicalonline.jp/index/search?searchtarget=2amp;criteria=%EF%BF%BD%DB%B4%C4%B4%EF%BF%BDamp;search_btn=%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BD%EF%BF%BDamp;is_iryouyaku_=1amp;is_otc_=0amp;is_shouhin_mei_=1amp;is_ippan_mei_=1amp;is_kounou_kouka_=0amp;is_tekiou_sikkanmei_=1amp;from=form_optionamp;page=10
ジェネリック医薬品(後発医薬品)として、イミダプリル塩酸塩錠が複数の製薬会社から販売されています。ジェネリック医薬品は先発医薬品と同等の有効成分、効能・効果を持ちながら、薬価が低く設定されているため、医療費の削減に貢献します。「イミダプリル塩酸塩錠2.5mg」「イミダプリル塩酸塩錠5mg」「イミダプリル塩酸塩錠10mg」など、各規格でジェネリック医薬品が利用可能です。
参考)イミダプリル塩酸塩錠5mg「PH」との飲み合わせ情報[併用禁…
ジェネリック医薬品の選択については、医師や薬剤師と相談し、患者の経済状況や治療方針に応じて決定します。ジェネリック医薬品への変更を希望する場合は、医師の処方時または薬局での調剤時に申し出ることで対応可能です。
タナトリルを含むACE阻害薬は、長期間の継続服用が必要な治療薬であるため、医療費の負担は患者にとって重要な問題です。高血圧や糖尿病性腎症の治療では、定期的な外来受診と検査も必要となるため、医療費全体を考慮した治療計画が求められます。医療費負担の軽減策として、ジェネリック医薬品の活用、高額療養費制度の利用、医療費控除の申請などが検討できます。
タナトリルの効果・副作用を医師が解説【高血圧の治療に】 - うちからクリニック
タナトリルの基本的な効果、副作用、服用方法について、医師による詳しい解説が掲載されています。患者向けのわかりやすい情報として有用です。
医療用医薬品 : タナトリル - KEGG MEDICUS
タナトリルの添付文書情報、用法用量、薬効薬理などの詳細な医薬品情報が閲覧できます。医療従事者向けの正確な情報源です。
タナトリル添付文書(PDF) - JAPIC
タナトリルの公式添付文書がPDF形式で入手できます。効能効果、用法用量、副作用、相互作用などの全情報が記載されています。